探究チャレンジ・ジャパン受賞校② 市立札幌旭丘高校
(道・道教委 2024-02-29付)

探究チャレンジ・ジャパン市立札幌旭丘
研究成果を報告する生徒

 市立札幌旭丘高校(相沢克明校長)は、観察、実験、見学、調査などを行い、課題の解決に必要な情報を集めている学校が選ばれる「札幌市長賞」に輝いた。同校は「ChatGPTの性能確認」をテーマに、ハルシネーション(事実に基づかない情報を生成する現象)の問題を取り上げた記事の情報の真偽や実態を調査。結果、チャットGPT―4・0はGPT―3・5に比べて、正確性の面で性能が大きく向上していることや、ハルシネーションが進行している実態などを明らかにした。

 発表概要はつぎのとおり。

【札幌市長賞】

◆探究テーマ「ChatGPTの性能確認」

▼発表要旨

AI技術の問題の一つにハルシネーションがある。これは将来、名誉毀損や情報漏えいを引き起こす可能性のある非常に大きな問題。今回私たちはChatGPTとPythonを用いて、ハルシネーションの進行具合や特徴を研究した。その結果、ハルシネーションが実際に進行しているデータや、特定の分野において、質問に対するAIの正答率の低下を示す興味深いデータを得ることができた。

▼背景と目的

 私たちは、急速に発達するAI技術に問題はないのかという疑問を持った。そうした中、「AIは事実にない情報をあたかも本当のことかのようにでっちあげることがある」というハルシネーションの問題を取り上げた記事を見つけ、その情報の真偽や実態を調査したいと思い研究に踏み切った。

▼方法

 ChatGPTのGPT―3・5とGPT―4・0を使い、それぞれにPythonを用いて四則演算をするように指示する。そして回答結果の正確性や、ミスの仕方などのデータを集め、GPT―3・5とGPT―4・0とでデータを比較して、ハルシネーションの進行や特徴を調査した。

▼結果

▽GPT―4・0はGPT―3・5に比べて、四則演算を正確性80%以上で回答できる桁数が2倍以上になっている

▽GPT―3・5では、分からない問題に対して4回に1回程度は「分からない」と回答したのに対し、GPT―4・0ではどんなに問題が難しくなろうとも絶対に「分からない」とは言わず、間違っても回答をする

▽割り算の回答における有効桁数と正確性を調べたところ、GPT―4・0はGPT―3・5に比べ有効桁数は多いものの、正答率は下がっていた

▼結論

▽GPT―4・0はGPT―3・5に比べて、正確性の面で性能が大きく向上している

▽ハルシネーション(でっちあげ)が進行している

▽GPT―4・0は能力以上のことを妥協できずに行うため、失敗が増えている

▼今後の課題

▽ChatGPTの回答がどのような情報をもとに作られているのかを調査し、間違った回答をする理由を突き止める

▽ChatGPTに計算に強いモジュールを入れた時の正確性や傾向を調べる

▼IT・データサイエンスの活用

 今回の研究では、質問の機構、質問を分かりやすい形に処理する機構、傾向を調べる機構を自動化した「Pythonのプログラム」で作成した。Pythonを活用することで、数万にもわたるデータ収集が可能になり、より誤差の少ない分析を手早く行うことができた

▼参考文献

▽ChatGPTの可能性と危険性ハルシネーション問題/児玉龍彦著

▽https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2303/30/news027.html

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(道・道教委 2024-02-29付)

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