日本語指導必要な外国人児童生徒への対応 散在地域の体制構築急務 函館市内 学生らATで協力
(道・道教委 2024-03-28付)

リポート外国にルーツを持つ子どもの支援
函館工業高の授業でアシスタントに入る大学生

 【函館発】日本語指導が必要な外国人児童生徒が年々増加する中、函館市内では道教育大学函館校の学生らがアシスタントティーチャー(AT)として外国にルーツを持つ子どもたちの言語習得に向けた支援を進めている。学生がシフト制で授業に加わり、日本語の専門用語をサポートするなど支援体制の構築が進む。一方で、外国人が散在する道内では各地域における支援体制充実が喫緊の課題となっている。

 昨年12月下旬、函館工業高校定時制の公共の授業。ネパール国籍のケーシー・サンデスさん(1年)は、大学生が作成した教材を用いて学習に励んでいた。安田耀志講師はサンデスさんを介して話題を広げるピボット形式の指導を展開。「サンデス、オランダは英語で何と言うか教えてあげて」「ネザーランドです」。様々な事情を抱える生徒が通う中、学級全体で学び合う授業が行われた。

 サンデスさんは、両親の仕事の関係で昨年4月にネパールから函館に移住した。入学以降、学生らのサポートもあり、順調に日本語を習得。現在は定期テストで漢字を書けるようになった。将来は、工業系の大学への進学を希望しており「もっといろいろな人と話ができるようになりたい」と声を弾ませる。

◆教材づくりなど学生が架け橋に

 住民基本台帳によると、市内の外国人人口はことし1月時点で1615人。平成27年の795人から約10年で2倍以上に増えた。市教委によると、両親の仕事の都合や留学生として来日したケースなど様々。日本語支援を必要としている児童生徒が一定数在籍しているという。

 受け入れ体制の構築に苦慮する学校現場の要望に応えようと、市内では令和2年度から函館日本語教育研究会(JTS)の日本語教員資格を持つ講師と、道教育大函館校で日本語教員養成プログラムを受講する学生が協力体制を構築。当該児童生徒が在籍する小・中学校で特別な教育課程に対する支援を開始した。

 本年度からは高校における特別の教育課程も始まり、10人の学生がシフト制で市内の定時制高校を訪問。これまで2校で計45回、国語科や公民科など日本語の専門用語が多い教科の授業に同席し、当該生徒が抱く困り感や気付きをグーグルクラスルームで学校と共有している。

 高校では入試で面接のみを課す定時制課程を希望する生徒が多く、外国人生徒の受け皿となる可能性が高い。函館工業高定時制では新年度、複数の外国人生徒が入学を希望。三原現教頭は「学年が上がるに従って工業専門科目の履修が増える」と話し、専門用語を指導する際の対応に頭を悩ませる。

 日本語教育を専門とする道教育大函館校の佐藤香織教授は、一部地域に外国人が集まる「集住地域」に対し、本道は広域に少数が居住する「散在地域」と指摘する。散在地域では「外国人が顕在化されにくく、孤立する傾向が懸念される」とし「外部支援者の確保は郡部の地域ほど難しいのが現状」と危惧する。

◆外部支援ない学校 手探り指導が必至

 現行の教育職員免許法では日本語指導に関する科目が必修化されておらず、外部人材の支援がない地域の学校では手探りで指導を行うしかないのが実情だ。

 昨年、同校の取組を視察した東京学芸大学の齋藤ひろみ教授は「外国人に易しい日本語を教員一人ひとりが体系的に指導できる体制を確立し、多文化共生力を高める必要がある」と訴える。

 道教委は新年度、日本語指導の体制構築に本腰を入れる。管内の状況に応じた情報交流会や、指導主事の専門性向上に向けた連絡協議会を開く予定。倉本博史教育長はある会合で「ラピダス社の千歳進出や、外国人技能実習制度による労働者とその家族の受け入れ体制が急務」と強調した。持続可能な受け入れ体制の構築に向けた、教育現場の意識醸成は急務だ。

(道・道教委 2024-03-28付)

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