札幌市社会教育委員会議 5年度議論〈上〉
(札幌市 2024-04-05付)

 札幌市社会教育委員会議(議長・出口寿久道科学大全学共通教育部教授)は、5年度協議テーマ「子どもの体験活動の推進」のもと、体験活動の「量」「質」の確保や「教育的価値の啓発」について議論を重ねた。3月28日、市教委に提出した議論の記録の概要を連載で紹介する。

協議テーマ「子どもの体験活動の推進」

【背景】

▼少子化や子どもの生活の多様化、家庭環境の変化等によって、子どもたちの体験活動の場や機会は減少傾向にある

▼新型コロナウイルス感染拡大によって、子どもの体験活動の減少に拍車がかかっている

【体験活動の定義】

▼体験活動の定義(平成19年中教審答申)

▽体験を通して何らかの学習が行われることを目的として、体験するものに対して意図的・計画的に提供される体験

▼具体的には(25年中教審答申)

▽生活・文化体験活動=放課後に行われる遊びやお手伝い、野遊び、スポーツ、部活動、地域や学校における年中行事等

▽自然体験活動=登山やキャンプ、ハイキング等といった野外活動、または星空観察や動植物観察といった自然・環境に係る学習活動等

▽社会体験活動=ボランティア活動や職場体験活動、インターンシップ等

【体験活動の効果】

▽子どもの頃の家庭や青少年教育施設等で自然体験活動を多く行った者ほど、自己肯定感、自律性、協調性や積極性といった非認知能力が高くなる傾向がみられる→体験活動による自己肯定感、自律性、協調性といった非認知能力の育成は重要

▽体験活動に参加する前後の子どもの意識等について調べた調査において、体験活動に参加したあとは、その前と比べて、物事に対する意欲の向上がみられた→変化の激しい多様な時代に生きる次世代の子どもたちの育成にもつながる

各委員の主な意見

▽対象とする子どもの範囲をどの辺りまで考えるのかが一つの大きな視点だ

▽地球温暖化もあるので、自然の中で学ぶことは体験とともに、現在地球が置かれている状況について学ぶことになると考えている

▽「第3次札幌市生涯学習推進構想」の中にある図書館の活用と結び付けて考えたい

▽例えば、本物に触れる体験活動という意味では、博物館や美術館に来る子どもたちを見ると、本物の彫刻に触れる、本物の絵画を見るという、学校で美術の教科書を見るのとは違う一つの大きな体験、感動を呼ぶ体験になっている。本物に触れる体験も併せて考えたい

▽林間学校の事業や、冬の自然体験施設での事業に参加できる子の家庭と、全く参加できない家庭の子も非常に多くいるだろうと、普段の関わりから見て思っている

▽事業に積極的に参加できる子のみならず、なかなか参加しにくい、例えば不登校であったり、ひとり親世帯で心身共に余裕がない、社会の中で孤立しがちな状況にいるような家庭や子に対するアプローチも含めた体験活動の推進と考えられたら良い

▽こども基本法の中に「自己に関する事項に関して意見を表明する機会の確保」とあり、子どもから意見を聞く場を持つという視点を持っていただきたい

▽子どもの貧困問題は、子ども自身の「得られるはずの体験の格差」問題でもある。「全ての子どもが体験できるような枠組み」をどう作っていくのかが議論のポイントだ

▽ただ行っただけ、1回きりの思い出にしないためにも、収穫から袋詰めまでの、育っていく過程や経済活動みたいなものを目の当たりにすることが、体験活動の効果としてあるのではないか

▽コロナ禍で、デジタル端末を1人1台持ってきて、いろいろなものを体験ではなくて画面上で疑似体験する機会が増えた。コロナ禍の3、4年間で徹底的に子どもたちの体験活動が減ったと感じている

▽コロナ禍の3年間、体験活動がほとんどできていない。学生と接してコミュニケーションを取れない学生が多いと感じている

▽地域学校協働活動などで、参加しやすい環境をどうつくっていくのか考え、つくっていくことも大事

▽子ども以前に大人に大事だと思う。大人が興味を持たないと、子どもたちの体験機会は提供されないという関係性があるからこそ、子どもたちだけでも参加できる環境をどのようにつくるかを議論したい

▽失敗をもとにつぎを考えるのはとても大事なこと

【協議事項】

①体験活動の「量」の確保

②体験活動の「質」の確保

③体験活動の教育的価値の啓発

 ―以上の3項目について、各会議で協議していく。

(札幌市 2024-04-05付)

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