石狩管内6年度教育推進の重点 子どもの未来保障へ 学校組織強化し人材育成を
(道・道教委 2024-04-15付)

石狩教育局長田中賢一
石狩教育局・田中局長

 石狩教育局の田中賢一局長は、9日に開かれた管内小・中学校長会議で6年度教育推進の重点を説明した。本年度の重点のテーマを「子どもの未来保障」と設定。「対話」「ICT活用」「3層への確実な指導」を重視した授業改革などの取組を盛り込んだ資質・能力の確実な育成・定着、学校組織の強化・活性化による人材育成、学校と地域が連携・協働する持続可能な教育体制の実現を要請した。

 6年度管内教育推進の重点はつぎのとおり。

【1 策定】

 本年度のテーマは、前年度と同様に、全ての子どもに必要な資質・能力を確実に身に付けさせ、子ども自身が自己実現を図ることを支えるとともに、より良い未来社会を築く「社会の形成者」として育てることを目的として「子どもの未来保障」とした。

 管内教育推進の重点のつくりは、国の施策、道教委の教育行政執行方針等を受け、管内の教育に関する成果と課題を踏まえ3点に焦点化し、管内の各教育機関において協議して決定した。

 管内全ての市町村および全ての学校で展開し、管内の教育の充実・発展を目指す。

【2 管内教育推進の重点】

▼重点1

 重点1は「資質・能力の確実な育成・定着」である。

 全ての子どもに対して、教育課程を通して、今後、必要となる資質・能力を確実に育成し、定着を図ることである。

 趣旨は、予測困難と言われる今後の社会において、たくましく自己実現を図りながら、生き抜いていくための資質・能力を身に付けさせるということを表すとともに、学校の本質的な役割である「学校は何をするところか?」という問いに対し「学校は、全ての子どもに資質・能力を身に付けさせる機関である」という答えになっているものである。

 身に付けさせる資質・能力は、国が示す3本柱「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」である。

 取組は3点ある。

 取組1は「対話」を重視した授業改革である。

 教師が子どもに教える、という授業から、子ども自身が学び取る授業へ、質的転換を図ることを表す「授業改革」を進める。

 特に、子ども同士の「対話」を重視し、子どもが課題意識を高め、自分なりの考えを持ったあと、それぞれの考えの関連性を見いだす「価値交換」を行うことを授業に位置付け、子どもが、自らの考えの質的向上を認識し、学力の定着を図る。

 教育局としては、指導主事の学校訪問等を活用し、具体的に「対話を重視した授業の進め方」などの指導方法の充実を図り、各学校の教室の隅々まで授業改革が行き渡るよう支援する。

 各学校においては、全ての子どもが自らの考えを持ち、価値交換を行う授業を展開できるよう指導方法の充実を図る。

取組2は「ICT」を活用した授業改革である。

 子どもが課題意識を持ち、自らの考えを持ったあと、より多くの子どもと迅速に、それぞれの考えの関連性を見いだす「価値交換」の充実を図ることができるよう、ICT機器を活用し、学力の定着を図る。

 教育局としては、指導主事の学校訪問等を活用し、具体的にICTを活用した授業改革の好事例を紹介するとともに、子どもたちが迅速に多くの他者と価値交換ができる指導方法について支援する。

 各学校においては、全ての教師がICT機器を活用した授業改革を進めることができるよう、好事例などに基づき具体的な指導方法について研修を進める。

 取組3は、誰一人取り残さない「3層への確実な指導」による授業改革である。

 全ての子どもが、授業において、学びの実感を持ち、学習意欲を高めて、学力の定着を図る。例えば、「伸びしろ層」の子どもには、考えを持つきっかけを見いだし、他者との対話を意図的に促す教師の支援の充実を図り、「中間層」の子どもたちには、自分の考えに基づき「伸びしろ層」や「定着層」の子どもとの対話を意図的に促す教師の支援の充実を図り、「定着層」の子どもには「伸びしろ層」「中間層」の子どもたちに、考えの関係性を分かりやすく説明するよう教師の支援の充実を図るなど、全ての子どもが活躍できる授業改革を進め、学力の定着を図る。

 教育局としては、指導主事の学校訪問等を活用し、教師が全ての子どもの学習の状況を把握し、適切な指導ができるよう支援する。

 各学校においては、全ての教師が全ての子どもたちの学習状況に応じた適切な指導ができるよう、指導方法の工夫改善を図る。

 これらの取組を通して、学校の本質的な役割である、全ての子どもに確実に資質・能力を育成することを実現し、子どもの未来保障の根幹としての役割を果たす。

▼重点2

 重点2は「学校組織の強化・活性化↓人材育成」である。

 校長の学校経営方針に基づき、質の高い教育活動等を継続的に推進することができる学校組織体制の構築を図ることである。

 趣旨は、学校の教育目標の実現に向け、校長の学校経営方針に基づいて、学校における教職員個々の強みや特性を生かしながら、質の高い教育活動の展開や、危機管理上の迅速な判断の充実を図るために、校長の意思決定が適切に働く柔軟な学校組織を構築する学校組織マネジメントの充実を図るとともに、教職員の企画・立案に係る資質・能力の向上を図り、学校経営参画意識の向上を図ることを目指すことである。

 取組は2点ある。

 取組1は、学校組織マネジメントの充実を図る「動く組織づくり」である。

 校長の学校経営方針に基づき、校長の責任のもと、質の高い教育活動や管内の学校が目指す授業改革、教員の働き方改革など、学校全体で実施を目指す取組を進めるとともに、いじめの問題や不登校等、学校が抱える課題等に対して、正確かつ迅速に対応するために、校長の意思決定過程を明確にして、教育活動を進める。

 併せて、子どもの状況や組織の状況等、様々な要素を総合的に鑑み、子どもへの教育効果を最優先に考え、予定した教育活動等を、校長の責任のもと、迅速に変更できる「動く組織づくり」を目指す。

 教育局としては、義務教育指導監の学校経営訪問等を活用し、具体的な校長の意思決定の明確化を図り、教育活動等に関するPDCAマネジメントサイクルの充実について支援する。

 各学校においては、校長の意思決定過程の明確化や教育活動の企画・立案の方策の仕組みを整理し、教育効果の充実を図るための学校組織体制の構築・強化を図る。 

 取組2は、全ての教職員の学校経営参画意識の向上を図る「育てる組織づくり」である。

 校長の意思決定に基づき、教育活動等を実施するが、子どもの資質・能力の育成に向けた効果的な教育活動等の企画・立案については、学校経営方針に基づき、教職員個々の考えを重視し、教職員の学校経営参画意識の向上を図る。さらには、教育活動等の実施・検証・改善を通して、学校組織における教職員それぞれの役割・責任を自覚させ、学校組織体制の必要性や重要性を理解する人材の育成を図る。

 教育局としては、義務教育指導監の学校経営訪問等を活用し、教育活動等の企画・立案・実施・検証・改善の状況を確認し、全ての教職員が、学校経営に参画し、学校組織の必要性・重要性を理解することができる人材育成の具体的な方策について支援する。

 各学校においては、全ての教職員が、校長の学校経営方針に基づき教育活動等の企画・立案・実施・検証・改善を進めることができるよう、学校の教育活動等を企画・立案・決定する過程を確認・整理し、教職員が主体的に学校経営に参画することができる人材育成の仕組みを構築する。

▼重点3

 重点3は「地域と歩む持続可能な教育体制の実現」である。

 趣旨は、学校と地域が、育成する子ども像を共有し、子どもたちに社会で生きて働く資質・能力を育成することができるよう、学校と地域の役割や責任を確認するための学校と地域の連携・協働体制を構築することである。

 取組は2点ある。

 取組1は学校と地域による熟議の活性化である。

 学校は、地域の実情や要望を十分に把握し、地域の子どもの育成について、その目標等を地域と共有し、学校、地域それぞれが担うべき取組や、学校と地域が連携・協働して担う取組について、十分に確認するための熟議の活性化を図る。

 教育局としては、社会教育指導班等による学校訪問や資料提供等を活用し、学校の困り感や課題点を地域と共有するための具体的な熟議の仕方を支援するとともに、コミュニティ・スクールにおいて、地域の子どもの育成の仕方について、学校と地域が連携・協働を図る好事例を提供するなどして支援する。

 各学校においては、学校運営協議会等やPTA活動、地域との懇談等を活用し、学校の困り感を、地域住民に分かりやすく説明するとともに、その解決について建設的な熟議を進めることができるようにする。

 取組2は学校と地域の連携・協働体制の構築である。

 学校は、学校における役割と困り感について、分かりやすく地域に説明するとともに、地域が主体的にその解決等に参画し、地域全体で子どもの学びや成長を支える連携・協働体制を構築する。

 教育局として、義務教育指導班および社会教育指導班の学校訪問等を活用し、学校と地域の課題の共有の仕方や、具体的な連携・協働の仕方について、好事例等を通して支援する。

 各学校においては、学校運営協議会等の学校と地域の連携・協働体制をあらためて見直し、地域の子どもを育成する実質的な取組について、学校と地域が、それぞれの主体性を発揮して活動することができるようにする。

【3 おわりに】

▼評価

 管内教育推進の重点に係る評価については、11月下旬に実施する予定である。

 示した評価項目について、印象評価ではなく、客観的な評価となるよう、学校評価等に適宜位置付けて活用する。

▼おわりに

 「失われた30年」と言われる社会情勢を脱しつつある今日の社会であるが、少子高齢化や高度情報化社会の到来など、これまで以上に予測困難な未来社会を迎えることは明白である。こうした未来社会に、現在の子どもたちを送り出す私たちの責務は非常に重い。そのため、学校は教育活動を通して、全ての子どもに確実に資質・能力を育成し、地域は自分たちの地域の子どもは自分たちで育てる意識を持って子育てを進めるなど、学校と地域が、それぞれの役割と責務を自覚し、連携・協働して子どもを育てる必要に迫られている。

 教育局としては、石狩管内はもとより本道に住む子どもたちが、自己実現を図りつつ本道の未来を確実に支えることができる社会の形成者に育つことができるよう「子どもの未来保障」をテーマに、管内教育推進の重点に基づき、各市町村教委、学校、地域と連携・協働して、教育行政の充実を図ることにまい進する。

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石狩局教育推進の重点
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