胆振管内6年度教育推進の重点 子を主語にする学校を 校内外の協働深化へ取組推進
(道・道教委 2024-04-30付)

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胆振管内教育推進の重点

 【室蘭発】胆振教育局の髙橋宏明局長は4月中旬、管内小・中義務教育学校長会議で6年度管内教育推進の重点を説明した。推進テーマは「一人一人の子どもを主語にする学校づくり~学校内外の協働の深化を図る学校経営」。重点では「資質・能力の向上」など6点を設定した。子ども一人ひとりの可能性を引き出すことのできる学校づくりを実現するため、効果的な取組を組織的に進め、管内教育の一層の充実に努めていく。

 教育推進の重点の概要はつぎのとおり。

【はじめに】

 本年度の推進テーマは「一人一人の子どもを主語にする学校づくり~学校内外の協働の深化を図る学校経営」に変更した。不確実で予測が困難、厳しい挑戦の時代を迎える中で、これからの社会を担う子どもたちが、豊かな人生を切り拓き、社会を創造する主役となる「一人一人」として成長できるよう、持続可能な社会の創り手として必要な資質・能力を育成・活用・発揮できる教育活動、一人ひとりの可能性を引き出す、一人ひとりの特性・環境等に応じた学びを学校内はもとより、学校間や学校と家庭・地域とのつながり・かかわり、連携・協働を深めながら進めていくことが期待される。

 前年度のテーマ「子どもの可能性を最大限に引き出す学校づくり~学びのつながりを支える学校経営」の考え方を継承しつつ、学びの主人公である子どもの視点に立ち、子ども一人ひとりを大切にした学校づくりを、学校内外のつながり・協働を一層深め、実現・充実させていくことを目指していく。

 重点は前年度に引き続き六つとしている。各重点には二つまたは三つの「柱」と達成に向けた「具体の取組」を示している。

【重点1 資質・能力の向上】

 各市町・校区・学校では、目指す子どもの姿、育成を目指す資質・能力を明確に、実現・育成に向けた取組が進めている。これからの社会を担う子どもたちには、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等の資質・能力を確実に育成し、様々な場面・機会で身に付けた資質・能力を活用・発揮させていくことが求められている。前年度の重点1「学力・体力の向上」、重点2「豊かな心の育成」を進める上での基盤として、新たな重点の項目として設定したもの。

 一つ目の「柱」は、個別最適な学びの実現に向けた取組が進められている中、社会的自立のために必要な学びを、子どもが自己調整し最も良い形で組み合わせ、自分自身でマネジメントしながら学習を進めていくことが重要であることから、教師が指導の工夫改善を通じて効果的な指導方法を確立・共有し、さらに子どもの状況に応じて応用・発展させ、それらを共有・活用していくことを繰り返していくことが必要と考え「子どもが自己調整しながら学びを進め、自立した学習者となるための指導方法の確立・共有・活用」とした。

 二つ目の「柱」は、学校において体力向上に向けた授業改善や、運動機会の確保に向けた様々な取組を推進しているが、取組の効果を一層高めるためには、学校はもとより家庭や地域において、子どもたちが自ら運動・スポーツに取り組もうとする気持ちを高め、意欲的に取り組んでいく習慣を確立することが必要と考え「運動やスポーツに意欲的に取り組む態度の醸成」とした。

 三つ目の「柱」は、様々な教育活動を通じて、子ども一人ひとりが自分の良さや可能性を認識し、それらを伸長・発揮していくことができるよう指導の工夫が進められているところだが、自分を含め誰も代わる人がいない、かけがえのない存在であるという「自己存在感」、人の役に立った、人から感謝された、人から認められたことで自分を肯定的に受け入れる「自己有用感」が、他者との関わりの中で互いを大切な存在として尊重しながら、集団や社会の中で自分を適切にコントロールし、自信を持って自己実現に向けた取組を進めていくのに不可欠であると考え「自己存在感や自己有用感を高める取組の充実」とした。

 「具体の取組」としては、育成を目指す資質・能力の明確化、ICTの適切な活用による個別最適・協働的な学びの充実、体力向上の目標設定と運動機会の確保、子どもの発達を支える生徒指導、不登校児童生徒への多様で適切な支援等を示しており、これらの取組によって目指す資質・能力の確実な育成と、その活用・発揮・伸長を図る。

障がいある子の学び場保障

【重点2 特別支援教育の充実】

 誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向け、子どもたちが抱える困難が多様化・複雑化する中で、一人ひとりの特性等に応じた教育、多様な教育ニーズへ対応することが求められている。担当者だけではなく、全教職員が特別支援教育に関する基本的な資質・能力を身に付け、特別な配慮や支援を必要とする子どもとその保護者への対応を進めていくことが必要と考え、新たな重点の項目として設定したもの。

 一つ目の「柱」は、特別な教育的支援を必要とする子どもたちは増加しており、一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な指導や支援が進められているところだが、障がいのある児童生徒が変化の激しい社会の中で、主体的に判断しながら課題を解決していくには、適切な就学先の決定、小・中・高校・特別支援学校における多様な学びの場の充実が必要と考え「障がいのある子どもの学びの場の保障」とした。

 二つ目の「柱」は「個別の教育支援計画」等を作成・活用した一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援が組織的・継続的に行われ、学校種を越えた情報共有や引き継ぎも進められているところだが、児童生徒が将来、地域で豊かに生活することができるよう、学校段階から卒業後の社会参加に至るまでを見通した、地域で切れ目のない一貫した指導や支援を受けること、そのための保健・福祉・医療・労働等の関係機関との連携が一層必要と考え「切れ目のない一貫した指導や支援体制の確立」とした。

 三つ目の「柱」は、発達障がいを含む特別な教育的支援が必要な児童生徒の指導や支援に関する基礎的な知識や技能の習得に向けた研修が各市町・学校で行われているところだが、特別な配慮や支援を必要とする子どもへの対応は、学習指導や生徒指導を個別最適に行うために不可欠なものであり、障がいの重度・重複化、多様化への対応、児童生徒の困難さに応じた指導・支援を適切に行える専門性を、特別支援教育を担当する教員はもとより、管理職を含めた全ての教員が身に付け、学校全体として向上を図ることが一層必要と考え「管理職を含む全ての教員の特別支援教育に関する専門性の確保・向上」とした。

 「具体の取組」としては、通級による指導など多様な学びの場での一人ひとりの状態に応じた指導・支援、連続性のある学びの場と指導体制の整備、教育支援計画等を活用した関係機関との連携、全教職員対象の研修とチームによる支援等を示しており、これらの取組により、一人ひとりの特性・状態に応じた指導・支援の充実を図る。

【重点3 生活・学習習慣の確立】

 一つ目の「柱」は、各学校において、各種調査結果から明らかになった家庭でのメディアに触れる時間の多さ、学習・読書の時間の少なさなどの改善に向けた取組が進められているところだが、生活・学習習慣の確立に向けて、子どもが自ら家庭での過ごし方、時間の使い方を計画・実行し、望ましい生活・学習習慣を身に付けていくには、学校の取組だけではなく、家庭との連携を深め子どもと保護者の意識の向上を図ることが不可欠と考え「家庭と連携した生活・学習習慣の確立に向けた取組の推進」とした。

 二つ目の「柱」は、デジタル社会の進展に伴い電子メディアの活用が日常的になる中、学校においては情報モラルを含めた情報活用能力の育成に向けた取組が進められているところだが、子どもたちが家庭においても、学校で身に付けた正しい使用・活用方法を実践していくことが必要と考え「望ましい電子メディアの利活用に向けた啓発活動の推進」とした。

 「具体の取組」としては、使用目的に応じた電子メディアの利活用、家庭・PTAと連携した取組、自己調整による家庭学習の取組、生活リズム改善の取組等を示しており、これらの取組により、子どもたちが主体的に生活・学習の改善・向上に取り組んでいく態度・姿勢の習得を図る。

【重点4 地域との連携・協働】

 一つ目の「柱」は、いぶり五大遺産や各市町・地域の地域素材を活用したふるさと教育・地域学習が進められ、その成果が報告会やホームページ等で広く発信されているところだが、それぞれの地域での学びが持続・発展され、学びの効果をより高めていくため、地域の世代間で学び合う「縦の学び」、広域で学ぶ他の地域の同世代から学ぶ「横の学び」の場・機会を設けることが必要と考え「いぶり五大遺産などの地域素材を活用した”地学協働”の推進および情報発信」とした。

 二つ目の「柱」は、地域と連携・協働したふるさと教育・地域学習によって、ふるさと・地域の良さ・特色の理解、地域の一員としての意識、ふるさと・地域への興味・関心は深まっているところだが、地域を支えている人との触れ合いにより、想いや願い、苦労や努力、喜びややりがいについても知ることで、地域を支える・守ることの大切さや難しさ、意義・責任についても理解し、将来はふるさとはもとより、自分の生活する地域を支えていくために考え、行動することにつなげることが大切と考え「まちづくりにかかわる人材を育てるふるさと教育の推進」とした。

 「具体の取組」としては、地学協働推進体制の確立、学習成果の情報発信、地域の一員としての意識の醸成、地域人材等を活用した学習、地域の課題解決に向けた行動の実践・発信等を示しており、これらの取組により、子どもたちが地域の人との触れ合いを通して、地域を担い、支える人としての成長を図る。

【重点5 教員の人材育成】

 一つ目の「柱」は、変化の激しい時代において、学校教育の取り巻く環境の変化を前向きに受け止め、主体性を発揮しながら、学び続ける教職員の育成に向けたOJT、OFFJTが計画的に進められているところだが、これからの学校を創る人材、持続可能な学校教育の担い手の育成とともに、個人の力はもとより、組織・チームの力を高めていくことが必要と考え「学校の総合力を高めるための中・長期的かつ計画的な人材の育成」とした。

 二つ目の「柱」は、教職員個々の経験や個性・特性に応じ、教員育成指標を活用した指導助言や研修受講の奨励等が進められているところだが、教職員が教職生涯を通じて学び続け、資質向上を図っていくには、それぞれに役割・責任を持たせ、やりがい・充実感・意義を実感することができるよう、配置への配慮、不断のサポートが必要と考え「北海道における教員育成指標を活用した取組の推進」とした。

 三つ目の「柱」は、教職員の服務規律の徹底に向け、様々な取組が進められているところだが、管内では重大事態が複数件発生していることから、保護者・地域に信頼される教職員・学校となるよう、当事者意識を持って、不祥事の未然防止に向けた取組を進めていくことが不可欠と考え「信頼される学校づくりに向けた不祥事根絶の取組の推進」とした。

 「具体の取組」としては、校務分掌・校内配置の工夫によるミドルリーダー・管理職候補者の育成、キャリアプランを踏まえた指導助言と研修受講奨励、教員の個別最適・協働的な学びの促進、服務規律の徹底・倫理感の醸成に向けた心に響く研修等を示しており、これらの取組により、計画的・組織的・効果的な教員の資質向上を図る。

【重点6 働き方改革の推進】

 一つ目の「柱」は、教育活動を効果的に行うため、コアチーム等を活用して学校全体で対話し、業務改善の取組が進められているところだが、教職員一人ひとりが自らの働き方、業務の進め方を見直し、最適な取組を進めていくことで、取組の推進による変化を実感し、さらに改革を推進していくことが必要と考え「教育活動の質の向上を実感できる学校における働き方改革の推進」とした。

 二つ目の「柱」は、アクション・プラン第2期で示された「個の気付き、チームの対話、地域との協働」に向けた取組が進められてきたところだが、第3期では「改革を自分事に、自走するチーム、地域との協働」を重視した取組が求められ、その実現に向け「北海道アクション・プランに基づく学校、市町教育委員会と連携した取組の推進」とした。

 「具体の取組」としては、Road等を活用した組織的な取組、ICTを活用した校務の効率化、真に必要な教育活動につながる教育課程の編成・実施、教頭の業務改善や支援、部活動の地域移行の検討・推進等を示しており、これらの取組により、教員一人ひとりが「変わってきた」と実感できる働き方改革を推進し、より良い学びの実現につなげていく。

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胆振教育局長・髙橋宏明
髙橋宏明局長

(道・道教委 2024-04-30付)

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