札教研事業 春の研究集会〈上〉 札幌市教委 小中一貫教育推進へ授業公開等
(札幌市 2024-06-13付)

札教研・山鼻
山鼻中校区

 札幌市教委は11日、札幌市教育研究推進事業(札教研事業)春の研究集会を開催した。新たに「小中一貫した教育の推進を図る場」と位置付け、パートナー校を基本とした97部会で授業公開や研究協議を実施した。本紙は6会場を取材。各会場の様子を2回にわたって紹介する。

◆発言つなぎ考え広げる 山鼻中校区 山鼻南小6年道徳

 山鼻中学校区は、山鼻南小学校(小田英人校長)を会場に実施。6年生道徳など2授業を公開したほか、不登校をはじめとする喫緊の課題への対応について交流し、児童生徒支援の在り方について共通理解を図った。

 中学校区では、目指す子ども像を「社会をつくる一員として、自己の生き方を模索し、目標に向けて主体的に取り組むことができる子ども」と設定し、連携した取組を推進している。

 今回は、児童生徒観について共通理解を深めようと、保護者対応、生徒指導など「児童生徒支援」をテーマに位置付け、協議などを行った。

 公開授業のうち、6年1組道徳「ロレンゾの友達」(松永梢汰教諭、児童数27人)では「自分ならどうするか」と考えさせる場面や、児童同士の発言をつないで考えを広げていくことなどを意識し、内容項目「友情、信頼」について考えさせることを目指した。

 教材には、アンドレ、サバイユ、ニコライの3人が登場。友人のロレンゾが罪を犯したとの噂を聞き、ロレンゾに対しどのような対応を取るべきかを話し合う場面から始まっている。3人の考えを振り返った上で「自分ならどうするか」との考えに立って、多様な考えを交流させる場面を位置付けた。

 つぎに、ロレンゾが無実の罪だったことが分かり、複雑な表情を浮かべる3人の挿絵に注目し「なぜ3人は話し合ったことをロレンゾに言わなかったのだろう」と発問。グループで意見を交流させ「ロレンゾの無実を信じられなかったことが恥ずかしい」「友情を壊したくない」など、友情の在り方について目を向けさせた。

 研究討議に移り、公開授業の感想などを話題に日頃の学級経営、授業づくりで大切にしていることなどを話し合った。また、保護者対応、不登校・集団不適応への対応などの喫緊の課題についてグループで交流し、児童生徒支援の在り方について共通理解を図った。

◆見通し持てる導入へ 星置中校区 星置東小6年社会

 星置中学校区では、星置東小学校(今北しのぶ校長)を会場に、授業公開やテーマ別部会を開催した。校区内3校の教員約60人が参加。パートナー校の実践を交流し、より良い連携の在り方を研鑚した。

 星置中、星置東小、手稲北小学校の3校で構成する中学校区のグランドデザインでは、9年間を見通した系統性・連続性のある教育の実施に向けて①課題探究的な学習②発達の段階に応じた継続的な子ども理解―の2点を設定している。

 春の研究集会に当たっては、星置東小、手稲北小、星置中の順で授業公開を計画。パートナー校それぞれの良さや、児童生徒の実態、教職員の相互理解を深めることを目指す。

 星置東小には、星置中の豊村和史校長、手稲北小の長堀裕信校長をはじめ、教員約60人が参集。1~6年生、特別支援学級の計21授業を参観した。

 6年4組社会「国づくりへの歩み」(町村康武教諭、児童数34人)は、7時間扱いの1時間目。「見通し」「行動」「振り返り」を循環させるAARサイクルの「見通し」を持てる単元の導入を公開した〓写真〓。

 町村教諭は、縄文時代、弥生時代、古墳時代の暮らしの様子を示し「国とは何だろう」と問いかけた。

 児童たちの国に対する興味・関心を引き出し、集団規模の拡大や支配者の出現など、大和朝廷成立に至るまでのプロセスを価値付ける学習を展開。今後、児童たちの学びたいこと、調べたいことに基づいた学習計画を決める。

 授業後には、テーマ別部会を開催。教員のアンケートに基づき「授業づくり・教材研究」「ICT・SNSモラル指導」「給食指導・安全指導」「働き方改革」「不登校・特別支援」「校外活動・総合的な学習」の6グループで交流し、相互理解を深めた。

 今北校長は「職員間の交流を深める良い機会。パートナー校同士の円滑な連携につながれば」と期待した。

◆頭をフル回転させる授業 新川西中校区 新川小6年理科

 新川西中学校区では、新川小学校(今野芳光校長)で全学級授業公開と全体会を開催した。授業公開のうち、6年3組理科の単元「動物のからだのはたらき」(坂本真紀教諭、児童数37人)では、あらかじめ計画したそれぞれの実験に取り組む児童の様子を紹介。主体的に問題解決する態度の育成に向けて「児童が頭をフル回転させる授業」を展開した。

 同校では、第5・6学年で専科教諭による理科の授業を実施。現在の6年生は前年度から専科での理科を学んでいる。今回公開した単元は9時間扱いで、1、2時間目では調べ学習を通して児童それぞれが単元に関する課題を設定。児童は「動物はどのような体のつくりだから疲れるのか」など、それぞれの疑問解決に向けて、取り組む実験をあらかじめ計画しており、実験は3~7時間目の5時間で実施する予定となっている。

 この日は実験の3回目に当たる5時間目の授業。坂本教諭は「何を知りたいか」「何をするか」「結果はどうだったか」を明らかにするよう意識付けした上で実験に取り組ませた。児童は、袋と石灰水を使って呼気に含まれる二酸化炭素を確認したり、顕微鏡でメダカの血液を観察したりした。実験の最中、坂本教諭は実験の補助をしたり、実験結果を得るためのポイントなどを指導したりした。

 授業を参観した今野校長は「これまでの積み上げがあるので、子どもたちはやるべきことを考えて行動できている」と説明。通常、実験の授業では、教諭の指導を聞きながら全員が同じ作業を行うスタイルが一般的だが、「この授業ではやらされている感がなく、子どもたちが頭をフル回転させる授業になっている」と話した。

 全体会には、新川西中、新川小、新光小学校のほか、近隣校の新川高校が参加。「小中(高)一貫した教育グランドデザイン」について確認したほか、教科・校務別にグループ協議し、目指す子ども像の実現に向けて交流を深めた。

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札教研(星置東小)
星置中校区
札教研事業・新川小
新川西中校区

(札幌市 2024-06-13付)

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