札教研事業 春の研究集会〈下〉(札幌市 2024-06-14付)
発寒中区
◆円滑な義務教育学校化へ 真駒内中校区 3年総合
真駒内中学校区では真駒内中(太田大輔校長)を会場に、パートナー校の教職員約70人の参加のもと実施した。総合的な学習の時間の2授業を公開し、生徒の姿から良かった点、改善点などを交流。円滑な義務教育学校化を目指し、9年間を見据えた小中連携の在り方について協議した。
真駒内中・真駒内桜山小学校・駒岡小学校の3校で構成するグランドデザインでは、めざす15歳の子ども像を「人として胸をはって生きる自分~優しく、正しく、賢く、たくましく」と設定。小中合同の研修会の充実や小中一貫した教科の連続性のための授業交流、児童会・生徒会の連携と子どもたちを主体とした取組の連続性の構築と活動の充実などに取り組んでいる。
研究発表には、3校の教職員合わせて約70人が参加。前半は、1年生と3年生の総合的な学習の時間の授業公開を行った。
このうち3年生は、修学旅行のまとめとして、2年生向けにプレゼンテーション発表会を開催した。班ごとにスライドを使いながら生徒自身の体験やおすすめの観光スポットなどを紹介。参加者は、2年生の修学旅行に向けた期待感が高まるよう聞き手を意識した説明に工夫を凝らす生徒の様子を見学した。
授業後は、札幌市教委の担当者から義務教育学校の説明を受け、共通理解を図った上で小中交流に移行。授業の振り返りでは「よかったところ」「もっとよくしたいところ」を書き込んだ付せんを活用し、生徒の姿からより良い授業展開について考えを深めた。
義務教育学校の設立に向けては、事前アンケートの結果も踏まえグループ交流を実施。異学年交流やカリキュラムといったテーマのもと、各校の学校文化や価値観の相互理解を図り、大事にしたいことや懸念材料などを共有した。
◆ICTで視野広げる 発寒中校区 発寒南小2・6年国語
発寒中学校区は、校区内の全学校を会場に授業を公開した。発寒南小学校(石川円校長)では、2年1組国語「かんさつ名人になろう」(並松真由子教諭、児童数30人)と6年2組国語「時計の時間と心の時間」(山本翔太教諭、児童数30人)を公開。ICTを活用し、他者の意見に触れて自分の視野を広くする授業などを展開した。
発寒中学校区のグランドデザインをみると、目指す子ども像「将来の自立に向かう子ども」のもと、協働的な取組や教職員の連携、家庭や地域との関わり深化に向けた取組などを推進。春の研究集会では、発寒中、発寒西小学校、発寒南小、西小学校で各2授業を公開したあと、ICT活用、不登校対応、小中引き継ぎ、特別支援教育などをテーマに分科会を開いた。
2年1組国語は、10時間扱いの5時間目。並松教諭は本時のテーマ「よりわかりやすいかんさつ文にするには、どうすればいいかな?」を児童と復唱し、ノートに自分の考えを書く時間を設けた。その後、クロームブックを使用してバラバラに並べ替えた観察文を見せ、児童たちに正しい順番に並べ替えさせた。
並松教諭は児童たちの回答に対して「みんなの答えで似ているところは?」「どうしてそう思ったの?」などと質問し、課題への理解をより深めた。
6年2組国語は、7時間扱いの5時間目。山本教諭は、筆者の主張や事例の挙げ方などについて、児童一人ひとりが考える時間を設けた。
個人の回答をモニターで共有し、グループに分かれて話し合うことで意見をまとめたあと、各グループで出た回答を再び共有。児童たちは他者の意見に触れ、各々の視野を広げた。
このあと、授業交流や、グランドデザイン、中学校区におけるあいさつ週間などについて共通交流。分科会では「不登校」「ICT」「学校行事」について意見を交わし、パートナー校の連携を深めた。
◆言葉がもたらしたものは 栄町中校区 中学3年国語
小中一貫した教育グランドデザイン(目指す子ども像)を掲げた東区の栄町中学校区では、栄町小学校、栄西小学校、栄小学校を含めたパートナー校4校でそれぞれ授業公開。4校によるオンライン全体交流では、「9年間を通した子どもの学びのつながり」「教職員の連携・協働」など推進の重点を共有した。
栄町中(桑原俊二校長)では理科と国語の2教科で公開授業を行い、うち吉田圭子教諭指導による3年1組(生徒数40人)は国語「作られた“物語”を超えて」の授業。
人類学・霊長類学者でもある山極寿一氏の論説文が題材。シルバーバックのドラミングが本来、仲間とのコミュニケーション手段であるにもかかわらず、人間側が「戦いの宣言」と誤解したことによって「ゴリラは好戦的で凶暴な動物だ」という「物語」が作り出されたという授業の流れから、吉田教諭は「言葉が人間にもたらしたものは何か」と板書し、接続詞「しかし」の使い方に留意しながら、教科書から「良いこと」「良くないこと」を探し出して線を引くよう指示。
その上で「言葉」が「知識を蓄積する」ことや「新しい技術や工夫をもたらすこと」など良い点を生徒から引き出す一方、「言葉」が脚色したり、誇張したりする力となり、それが「誤解に基づく常識になる」ことに気付かせた。
最後に吉田教諭は「作られた物語を超えるにはどうするか」と生徒に問いかけ、そのために自分たちがしなければならないことを、教科書を参考にし、プリントに箇条書きするよう指示。生徒たちは、一斉に箇条書きから文にする作業に取り組んだ。
公開授業後は、パートナー校4校によるオンライン全体交流を実施。長い歴史を有する札教研事業の中でオンラインによる交流は初めてという。あいさつした栄町中の桑原校長は「今後、導入が計画されているコミュニティ・スクールに向けた取組においても重要な一日になる」と述べ、さらなる活性化を期待した。
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