札幌らしいCSの取組〈下〉 学校改善 自治的な活動に 学校運営協 生徒の思いくみ上げ
(札幌市 2024-06-19付)

星友館のCS
日常の授業風景。より良い教育の提供へCSの議論が進む

星友館中

 4月下旬に開かれた札幌市立星友館中学校(工藤真嗣校長)の第1回学校運営協議会。「授業時間確保のため、個別相談回数を減らしてほしい」「1人1台端末を活用した授業を増やしてほしい」。協議会に出席した生徒たちが、日々の授業を通して感じた率直な思いを口にした。

 同校の学校運営協議会(CS)は、札幌遠友塾自主夜間中学代表や学識経験者ら開校準備段階から携わったメンバーを中心に、学習サポーターなどを加えた委員10人で構成する。特徴的なのは、生徒幹事として3年生7人が、委員とは別に協議会に参加することにある。

 市教委が示したCSハンドブックをみると、委員の一例に保護者が挙がる。しかし、同校はPTAを設置していない。生徒たちの年齢層も10代から80代までと幅広く、既に自立している生徒が多いことが背景にある。工藤校長は、札幌らしいCSに位置付ける「子どもの声を学校運営に反映させる」観点を踏まえ、保護者ではなく生徒代表が議論に加わることで「外部委員と直接、意見を交わすことができる絶好の機会」と捉える。

 CSでは、一般的に地域行事や学校行事にどのように関わるかが議論の中心になりやすい。同校の協議では、授業の在り方や学級編制、コース編成への思いなど、学校運営に対する生徒のニーズがダイレクトに上がる。

 生徒の声を耳にした委員は「生徒がたくさんの要望を持っていることを初めて知った」「生徒の学校をより良くしていきたいという思いを知ることができた」「教職員と生徒がどこまで歩み寄っていけるかが大切」などと感想を述べた。

 一方で「生徒同士で話し合うことも必要」という指摘も。同校は、生徒個々の生活環境が大きく異なるため、生徒会を設置しておらず、日常的に生徒の意見を集約する場がない。工藤校長は、10月に予定されている第2回協議会を前に「生徒幹事が打ち合わせる場や、生徒の意見を取りまとめる機会を設けたい」と話す。

 意見を受け、委員のメンバーに学習サポーターを追加したり、希望に応じて個別相談を一部希望制にしたりするなど、早速改善に乗り出した案件もある。端末を活用した授業増など、中長期的なカリキュラムの見直しを要する内容もあるが「自治的な活動とCSをつなげる」という“札幌らしいCS”の成果が早くも表れ始めている。

 同校は、今後の入学希望者を巡る状況の変化を見据える。開校3年目を迎えた現在、在校生は114人。このうち3年生は85人で、多くの生徒が卒業する見込みだ。一方で、1年生は12人。次年度以降、新入生は毎年20人前後で推移する見通しだという。

 工藤校長は「小・中学校で不登校を経験した方が、高校進学を前に、集団生活に慣れるために入学を検討するケースが増えるのでは」とみる。生徒の進路選択が多様化する中「本校での学びを必要とする生徒により良い教育を提供するため、CSの仕組みを生かして市民ぐるみでつくる学校を体現したい」と力を込める。

(連載終わり)

(札幌市 2024-06-19付)

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