文科省委託 函館盲児童対象に 波や潮の香りを体感 渡島局など サップ体験会
(道・道教委 2024-07-08付)

渡島教育局サップ体験
サップを楽しむ函館盲の児童たち

 【函館発】道教委が文部科学省から委託を受け実施する「障がい者の生涯学習支援体制構築モデル事業」の一環で、渡島教育局と管内の自治体、社会教育団体は2日、北斗市内の七重浜海水浴場で函館盲学校(井上敬校長)の児童を対象としたスタンドアップパドルボート(サップ)の体験会を実施した。視覚障がいのある児童が安心して水に親しむことのできる環境づくりを整備。児童は波に揺られる感覚を満喫した。

 文科省が全国の特別支援学校および都道府県・市区町村を対象に学校卒業後の障がい者に向けた生涯学習支援のニーズを調査した「5年度生涯学習を通じた共生社会の実現に関する研究調査」によると、障がい者を主な対象とした講座等を実施した施設は全体の3%、一般市民を対象にした講座等に障がい者が参加した施設は9%にとどまっており、障がい者の学校卒業後の学びの場の整備拡充が課題となっている。

 共生社会の実現に向けた支援体制の確立を目指そうと、道教委は5年度から3ヵ年計画で多様な実施主体と連携した学習プログラムの構築事業を全14管内で実施。本年度は胆振、日高、渡島、上川、十勝の5管内が乗馬体験や多様なスポーツイベントなど地域の特色に応じたプログラムを関係機関と連携しながら企画・検討している。

 うち渡島局では地域の自然や人材を生かし、視覚障がいや聴覚障がい者が水に親しむことのできるサップ体験を計3回企画した。

 イベントの皮切りとなった2日は函館盲小学部の児童8人が参加。知内町教委やサップの指導者資格を持つ社会教育団体・アトゥイスポーツプロモーションなどが実施主体として支援に携わった。

 児童はライフジャケットを着用し、一人ひとりボードに乗ってサップを体験。肢体不自由のある児童に対しては水陸共用の車いすを設置したほか、各ボードに3、4人の職員がつき、安全・安心な環境で取り組むことができるよう配慮した。

 児童は1時間ほど海に入り、職員から「水は怖くない?」と質問を受けたり「上手だね」と会話を楽しんだりしながら取り組んだ。中村柚蒼さん(3年)は「サップは初めて。ボードに立ててうれしかった」と笑顔。取組を見守った井上校長は「体験を通して波や潮の香りを感じられるとともに、普段関わることがない大人たちとの交流は児童にとって刺激的。体験に向けた事前の学習会もあったため、安心して取り組むことができた」と話した。

 今後は聴覚障がい者スキー協会員に対する体験を経て、最終回は障がいの有無にかかわらず全ての人がサップに取り組める体験会を実施する。

 社会教育団体の職員は「視覚障がいのある子どもを対象とした体験は初めてで、合理的配慮の在り方を深く考えるいい機会になった。今後、多様な障がいのある人が参加できるプログラムの開発を考えたい」と振り返った。

(道・道教委 2024-07-08付)

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