札幌市教委・山根教育長が訓示 再発防止へ組織風土に定着を 個人情報取り扱い「危機的」(札幌市 2024-07-19付)
札幌市教委の山根直樹教育長は17日、市内のちえりあで開かれた学校経営研修で訓示した。市立中学校で立て続けに発生した個人情報の不適切な取り扱いに言及し「極めて危機的」と強調。再発防止に向けて、情報管理の徹底をあらためて要請した上で、教職員の意識醸成のため「各園・各学校の組織風土にしっかり定着させる必要がある」と訴えた。
本年度に入り、市立中学校における個人情報の不適切な取り扱いが立て続けに発覚。事態を重く見た市教委は、この日予定されていた管理職を対象とした学校経営研修において、いま一度、個人情報の取り扱いの徹底を呼びかける機会とした。
訓示後、記者団の取材に応じた山根教育長は、一連の問題に対し陳謝した上で①個人情報の取り扱いが不適切であった②記述に関する不適切な内容が含まれていた③児童生徒に対する情報リテラシーの教育―などに注力する必要性が浮き彫りになったことを強調。「学校現場全体に浸透し切っていなかった」として、あらためて情報管理のルールに関する周知徹底を図る考えを示した。
◆山根教育長の訓示概要
各園・各学校とも学期末を迎えるが、管理職の皆さんにおかれては、1学期の間、日々の教育活動に対し、真摯に取り組んでいただくとともに、家庭や地域との連携においても尽力をいただきながら、教育活動の充実に努めていただき、心よりお礼を申し上げる。
ご承知のとおり、過日、児童生徒の個人情報が他者の目に触れる、あるいは広く世の中に漏えいするという、あってはならない事故が発生した。
学校教育は、児童生徒や保護者、地域の方々など、周囲の信頼の上に成り立っているものである。そういった意味において、このような事案が続いた現下の状況は、極めて危機的であるとの認識は、皆さんも同じ思いであると思う。
秘匿性の高い個人情報の管理を徹底することはもちろんのこと、文書作成に当たっては、園・学校の内部文書であっても、子どもや保護者の立場に立った教育的愛情に基づく表現を用いることが重要であり、そのことは、札幌市が教育の基盤として位置付け、大切にしてきた「人間尊重の教育」につながるものである。
ご承知のように、当該事案を受け、先日、教育委員会から、個人情報の適正な取り扱いを教職員に周知徹底し、情報管理や点検体制の確認や見直しを図るよう通知をさせていただいたところである。各園・各学校においては、再発防止に向けて、あらためて、情報管理の徹底をお願いしたい。
しかしながら、全ての教職員がこの通知を目にしたとしても、このような事故を根絶することは容易ではないと、私は考えている。
子ども一人ひとりを大切にする思いに立って情報を取り扱うよう教職員の意識を高め、そのような意識を各園・各学校の組織風土にしっかり定着させることが必要である。
そのためには、管理職自らが高い意識を持ち、強いリーダーシップを発揮し、全ての教職員に対し発信していくことが重要である。教育委員会としても、皆さんと共に、しっかりと取り組んでいきたい。
私は、平成26年度から30年度までの5年間、生涯学習部長、教育次長として教育委員会に在籍していた。
この間、各園・各学校の教職員の皆さんが、子どもたちの学びや育ちに寄り添いながら、熱い心を持って学校運営に当たる姿勢を目の当たりにし、私自身も大いに共感し、やりがいと喜びを感じながら業務に当たっていた。
子ども未来局に異動した直後に起こったのが、皆さんも記憶されていることと思うが、2歳の女の子の虐待死の事案である。当時、尊い命を失ったことを受け、各方面の方々から多くの意見をいただいた。
組織体制の見直し、組織風土の改革、人材育成に至るまで、児童相談所や区役所の家庭児童相談室など、関係する多くの職員と課題認識と危機感を共有し、まさしく悪戦苦闘しながら様々な対策を講じてきた。
前年度に公表された中学1年生が自ら命を絶った「いじめ重大事態」の件については、同様のことを決して繰り返さないという各園・各学校の皆さんの思いに対し、大変共感するところである。
重大事態を受けて、この4月に改定された「札幌市いじめの防止等のための基本的な方針」に掲げられた取組一つ一つに対しては、皆さんと同様、私自身も覚悟を持って、しっかりと取組に当たりたいと考えているところである。
市の教育は、子どもたちの学力や体力、いじめや不登校、教職員の負担軽減など、様々な課題があるが、皆さんと共に、正面から向き合う覚悟である。
市においては、ことし4月、今後10年間の教育に関する施策を総合的・体系的に進めていくための「第2期札幌市教育振興基本計画」を策定し、これからの未来を担う札幌の子どもたちが、自他の良さや可能性を認め合いながらたくましく成長し、自分らしく将来を切り拓いていけるための取組を示したところである。
とりわけ、本年度の新しい取組として「心の健康観察」アプリを導入し、子ども一人ひとりの心と体の変化を把握することで、子どもの困りに寄り添っていただいているところである。
併せて、全市の中学校から、代表の子どもが一堂に会する「さっぽろっ子サミット」をこの秋に開催し、子ども同士が交流し合う取組を予定している。
新たな取組を進めていくに当たっては、子ども一人ひとりを大切にした学校づくりのため、管理職の皆さんには、今後も引き続き家庭や地域と一体となった学校運営に取り組んでいただきたいと考えている。
管理職の皆さんは、本日の研修を通して、子どもの笑顔があふれ、保護者・地域の方々から信頼される園・学校づくりについて、今後のビジョンをいま一度考える時間としていただければ幸いである。
私ども教育委員会は、各園・各学校と手を取り合いながら、子ども一人ひとりの声を生かした教育施策を推進し、札幌市の学校教育の充実に尽力していく所存である。
皆さんにも、共に前進していただくことをお願い申し上げ、私からのあいさつとする。
(札幌市 2024-07-19付)
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