札幌市小学校長会5年度研究成果 研究集録から 第2回「学ぶ力」育成部・下(札幌市 2024-07-19付)
【2年間の取組】
▼「学ぶ力」育成の本質的な意義と価値
▽「学ぶ力」を確かに育成することによって、子どもたちが獲得する力
・力強く課題を克服し、ウェルビーイングの向上を図りながら生きる力
・自ら学び続け、変わり続けて、自分の人生を主体的に築く力
・自分らしくしなやかに生きる力
▽教職員の願いと校長の関わり
校長は、教職員個々の願いを生かし、自身の教育理念と経営理念に基づいて意図的かつ継続的に関わることで、教職員の「心を動かす」ことができる。そうすることが、教職員の主体的な動きを活性化する。
▽主体性と同僚性を喚起し、チームの機能を高める
「心を動かす」ためには、授業改善に向けた教職員のポジティブな感情や認識に働きかける関わりや、教職員の自律的な心の動きに働きかける関わりが重要である。それら「心を動かす」校長の関わりによって、教職員の主体性と同僚性が喚起される。主体性と同僚性は互いに影響を及ぼし合い、学校全体がチームとして機能する。
このように、教育理念や経営理念に基づいたビジョン、目的や到達目標、自分の学校の課題とその要因を明らかにし、教職員の「心を動かす」ことが「学ぶ力」を確かに育む学校づくりにつながると考え、各グループで提言・協議を重ねてきた。
▼経営組織の観点から
▽日常実践と校内研究の乖離を解決するための校長の関わり(主体性)
・「学ぶ力」育成の中心となる分掌と学年や学級・ブロックをつなぐ具体的な手だてを通して、授業づくりの充実を図る組織づくりを行う
日常の実践や取組、課題を学年ごとに部会で報告・共有し、部会で話し合ったことを学年・ブロック研修へ還元するサイクルを確立する。それを継続するよう校長が学年・学級だけではなく、各部へも積極的に関わり、助言や指導を行うことが大切である。
・「学ぶ力」育成プログラムに納得と共感を生む
「学ぶ力」育成プログラムを目標や日常実践と結び付けることで、教職員の授業改善の動きに主体的に参画しようとする自律的な心に働きかけることができる。
▽必要感の弱さ、組織を動かす具体的手だて不足を解決するための校長の関わり(同僚性)
・教職員の思いを表出させ、学び合える教職員集団づくりを進める
・学校運営のキーマンとなる教職員の向社会的な欲求や自己実現の欲求に校長が働きかけ、心を動かす
校長が教職員の主体性や同僚性を高める手だてを講じることによって「教職員が一体となって取り組む経営組織」が構築でき「学ぶ力」育成につながっていく。
▼教育課程の観点から
▽学ぶ力の捉えの曖昧さ、未来に生きる力を育む目的意識・役割意識の弱さを解決するための校長の関わり(主体性)
・カリキュラム・デザイナーを育てる
「カリキュラム・デザイナー」とは、個々が持っている知識やこれまでの経験など、様々な力を発揮して、子どもたちにどんな学ぶ力をどのような手だてで育てるのかを考え、カリキュラムを創り出していく教職員一人ひとりのことである。
・教科等横断的な学習、総合的な学習の時間の見直しを図る
カリキュラムの充実を図ることで、子どもたちが教科ごとに獲得した学びを積み重ねたり、有機的に結び付けたり、多面的なものの見方ができるようになる。そして生活経験と結び付けて考え、様々な問題解決に活用し、さらに新しい学びを生み出す原動力となる。
▽協働し想像する経験の不足を解決する校長の関わり(同僚性)
・同僚性が必要となる状況を促していく
授業づくりの条件を設定したり札教研実践の学びを共有したりする校長の関わりが、教職員の授業改善に向けたポジティブな感情を引き出し、カリキュラム・マネジメントに対する参画意識を高める。
教職員が協働で教育課程を創造していくことが、「学ぶ力」育成に向けた取組の実効性を高めると考える。
▼意識改革の観点から
▽教職員間の感性のずれと意識の差を解決するための校長の関わり(主体性)
・授業の助言力を磨く
納得と共感を生む助言で教職員の「心を動かす」ことによって、授業改善の意欲を引き出す。
・他校と研修のシェアをする
9年間を通した子どもの学びや育ちを検証する意識、課題探究的な学習や自治的な活動の連続性を考える意識を醸成する。
▽時間、人員の不足、相互の希薄な関係性を解決するための校長の関わり(同僚性)
・学年組織で人を育てる
学年経営案に「学ぶ力」の育成を位置付け、それを軸に学年で目指す子どもの姿や課題などを共有する。また、校長が多様な取組を積極的に紹介し、評価し、価値付けることで「学年担任」の意識を高めていく。
・環境を整える
個人で取り組むところと、学年で取り組むところのめりはりを生むことが、同僚性の高まりにつながる。
【研究のまとめ】
自校の課題と要因を的確に捉え、経営組織・教育課程・意識改革という視点から校長がその指導性を発揮し、教職員の「心を動かす」校長の関わりが重要である。それが教職員の主体性・同僚性の向上を促し、チームとしての協働を生む。こうして「学ぶ力」の育成に向けた取組の実効性が高まるのである。
(札幌市 2024-07-19付)
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