札幌市小学校長会5年度研究成果 研究集録から 第9回
(札幌市 2024-08-05付)

「健やかな体」育成部④

 四つ目は「パートナー校と連携し、児童生徒理解を深める」取組である。小中一貫した教育における課題にもなっているが、LGBTsの児童への対応を通した、多様な児童生徒の理解がある。具体的には、パートナー校での合同研修、共通の声かけや対応等に取り組むことで、正しい理解や、より望ましい関わり方を目指した。また、小中一貫した教育を念頭に置くと、自分の年齢や体格等に見合った栄養のバランスを考える意識がより高まり、残飯が出ないような量を考えて、適切な分量の盛り付けを心がけるといったことにもつながっていくと考える。

 五つ目は「子どもが探究的に学ぶ場をつくる」ことである。5年生が日本ハムファイターズの選手に食べてもらいたいメニューを作る取組を行った。プロ野球選手にとっての食事の重要性をしっかりと議論した上で、その選手の出身地の食や思い出の給食、紹介したい札幌の給食、食べてもらいたい食材などを考えるといったものである。これらのメニューは、学校で実際に給食として出され、全児童がおいしく食べた。5年生は、達成感と満足感を持つとともに食事の重要性について考えを深め、自分自身の食生活を見直す貴重な機会となった。

 六つ目は「ビジョン」と「役割分担」である。H校では、職員一人ひとりが課題意識を持ち、その解決への方向性を全職員で共有できるようにするために、児童の実態をエビデンスに基づいた明確な改善策を示し共有するとともに「いつ・誰が・何をするのか」を明らかにすることで「見える」「分かる」取組となった。

 またI校では、職員の課題解決意識を高めるために、校長が児童の課題や解決方法等について職員全員へのアンケートを取り、分析結果を提示することで、一人ひとりが必要感を持ち、具体的な改善策について自分事として考え行動することができるようになった。H校、I校共に「校長が自ら動く、直接関わる、背中で語る」ことが全職員の心を強く突き動かし、健康指導の充実にもつながる成果を生む実践となった。

 七つ目は「PDCAサイクルで検証」することである。J校では「健やかな体」育成プログラム形骸化解消のため、学校運営方針発表時にプログラムの作成と運営に関して、具体的に「いつ、誰が、どうしていくのか」について校長が提案し、PDCAサイクルを可視化した。このことによって、職員の意識が向上し健康指導も充実した。この取組を通して、チーム学校として組織力を生かした学校運営にもつながった。

【研究のまとめ】

 提言に基づくグループ協議・全体交流を通して、各学校の様々な実践を紹介・交流することにつながり、自校での取組を進めるための大きなヒントになるとともに、教職員や保護者・地域への情報提供や啓発としても大いに役立つものとなった。また、どのように環境や場を整えていくべきか、本物に触れるための出前授業等の情報も交流することができた。

 校長が組織的なマネジメントを行い、職員の意識改革や意欲の高揚を図り、持続性・実効性あるシステムを構築し、知・徳・体をバランス良く育む教育を進めることで相乗効果が生まれ、成果として表れることが確認された。そのためにも、それぞれの目指すことや実践することが、全職員にとって「見える」「分かる」学校経営を推進していくことが重要と考える。

 そして、学校教育だけではなく、家庭や地域を巻き込んで、学校と同じ方向を向けるような取組をしていくことが今後の課題として挙がった。児童を地域に返す・生かすことを通し、地域の体育的行事で学校以外の運動機会を増やしていくこと等、コミュニティ・スクール(CS)を視野に入れながら、地域の行事等を通し、体力向上の有用な面を学校、家庭、地域が手を携え、意図的・計画的に図っていくことが重要である。

 また、担任・栄養教諭・養護教諭が連携して複数の教科等との関連を図りながら授業を創ること、地域との連携やパートナー校同士での共通した取組、ゲストティーチャーの活用や既存の教育内容とその効果についてあらためて見直してみることによって、健やかな子どもを育むことにつながることが明らかとなり、成果と言える。そのために必要な職員の意識向上や意欲喚起のためには、問題意識とその解決方法を共有し、役割分担を明確にすることが不可欠であり、校長が自ら動くことによって、より大きな効果も生まれた。このことは成果であるとともに持続すべき課題とも言える。

 関係団体等からの講演では、専門的な立場の方の話やプロの方の経験は、校長である私たちにとって学ぶべきことが大変多く、正しい情報や最新の情報を得ることができるため、大変有意義なものに違いない。「健やかな体」育成において学校経営を進めていく上での力強い指針・大きなヒントとなる。

 今後も「健やかな体」育成に向けて確かな理解を進めていきたい。さらに各学校の実践を交流し自校の取組に生かすことができればと考えている。各学校の置かれた環境や児童の実態、家庭や地域の状況に対応し、子どもの安全・安心と「健やかな体」育成をしていけるよう研究を続けていきたい。

(札幌市 2024-08-05付)

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