元校長の“学校アップデート!” №13 小中一貫の持続可能な推進体制とは(札幌市 2024-08-28付)
パートナー校における「小中一貫した教育」が始まった時、平岸中学校区(平岸中・平岸西小・平岸高台小の3校)は、コーディネーターが各校を訪問し、実務担当者(教務主任等)と打ち合わせ(月1回程度)をしながら推進していました。しかし「小中一貫した教育」を推進する主体は、あくまでも学校なので、コーディネーターが校長を差し置いて強いリーダーシップを発揮して推進することはできず、全体計画や推進体制が築かれないまま時間だけが過ぎていく状態でした。
「小中一貫した教育」の推進を阻む最大の要因は、リーダーシップを取る校長が複数人いることです。「手こぎボート」に例えると「船長(校長)が複数人いて、オールを持っている人(実務担当者)がそれぞれの考えでこごうとしていたり指示を待っていたりして、手こきボートはその場をクルクル回って前に進まない」という状態に陥るのです。そこで、平岸中学校区の「小中一貫した教育」における校長および実務担当者の役割を、つぎのように捉えました。
平岸中学校の校長を「小中一貫した教育」の推進委員長とし、3人の校長による校長打ち合わせ会でビジョンや戦略・戦術等を検討する。小学校2校の校長先生が副推進委員長または事務局長となり、事務局長が推進委員長・副推進委員長と連絡を取り合って校長打ち合わせ会の企画・運営を担当する。
各校の教頭・教務主任が実務担当者になる。連絡・調整のみではなく、新たな教育課程をつくることが実務担当者の役割とするならば、管理職の教頭が実務担当者に入ると良い。なお、必要に応じて実務担当者の人数を増やしても良い。事務局長がいる学校が「幹事校」となり、具体的な取組を企画・運営する。
平岸西小が事務局長と幹事校を担当し、平岸中学校区における「小中一貫した教育」の目的をはっきりさせ、共通重点目標(中学校区全ての教職員にとって「育てたい子どもの姿」を端的に表したもの)を設定する取組を展開しました。
〔目的〕計画的・系統的な「9年間で子どもを育む教育課程」の編成や指導方法の工夫改善を図って、家庭・地域と一体となって目指す子ども像の具現に向けて共同で取り組み、小中9年間の学びと育ちに責任を持つ。
〔共通重点目標〕やさしさと思いやりにあふれ、「しなやかさ」と「たくましさ」をもち、自ら判断して主体的に行動する子ども、そして、職員の異動で教職員が入れ替わっても「積み上げを図ることができる仕組み」として持続可能な推進体制づくりに取り組みました。
〇全体会(5月)、授業交流会(年2回)、「小中一貫した教育の日(会同またはオンラ インで各学期1回)」を実施し、教職員の顔と顔がつながるようにする。前年度 のうちに実施日を設定し、次年度の年間計画に盛り込み、多くの教職員が参加 できる体制を整えるようにする。
〇「小中一貫した教育」の評価を実施する。評価の観点を設定し、全教職員によ る評価を取りまとめ、課題に対する改善を図る。
〇「9年間で子どもを育む教育課程」づくりに取り組む。9年間の学びの積み上げ を図る。違いを知り「つながり」をつくり出したり、9分の〇年生としての自 覚を促したりする。
北原徹也 (北海道特別活動研究会顧問、元札幌市立平岸西小学校長)
(札幌市 2024-08-28付)
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