せたな町教委 心理的安全性の向上へ 風通しの良い職場づくりを スクールアドバイザーが面談
(市町村 2024-09-06付)

スクールアドバイザーによる教職員のメンタルヘルス対策
教職員の相談に応じる笹原SA。長い教員経験から得た知見を面談に生かしている

 【函館発】心理の専門家として、子どもの悩みや心の相談に応じるスクールアドバイザー(SA)。子どもの相談だけではなく、家庭や学校の問題にも目配せする頼もしい存在だ。その信頼性を生かし、せたな町教委では、4年度から町内小・中学校の全教職員に対するメンタルヘルスケア面談を導入している。公認心理師の資格を持つ笹原昌子SAが職場環境や仕事のやりがいなどを聞き、心理的安全性の向上や教職員の心身の健康保持をサポート。学校組織の活性化に重要な役割を果たしている。

 取組はコロナ禍で交流が減った教員の疎外感を防止しようと、小板橋司教育長が4年度の教育行政執行方針で「風通しの良い職場づくり」を位置付けたことがきっかけ。対象は一般教諭、事務職員、養護教諭、栄養教諭、再任用教員、学習支援員の全教職員。希望があれば教頭も面談することが可能で、町教委に常勤し、教育支援センター陽だまりと町内6小・中学校を訪問する笹原SAが各校で相談に応じている。

 面談は1学期が終わった7~8月にかけて行い、相談内容は守秘義務を徹底。教職員の悩みなどを整理した上で、各校の校長に還元される。

 町内の小・中学校では本年度、人事異動で例年より多くの新採用教員が配置されたため、若手職員などを対象に2学期の10~11月に2回目の相談機会を設定。1人当たり約20分の面談で①体調②職場環境③児童生徒保護者対応④仕事のやりがい⑤ストレスに感じていること⑥ライフサイクル―の6観点を中心に聞き取っている。

 町内のある小学校長は還元された聞き取り内容を期首面談に生かしている。事前内容を踏まえて接することで、コミュニケーションのアプローチ方法を変えることができ、ボトムアップ型の学校経営につなげているという。

 管内で長年、中学校の教員を務めた笹原SAは傾聴力の高さから周囲の信頼も厚い。町教委の古畑英規事務局長は「教職員から“笹原先生であれば何でも話せる”“意見が言いやすくなった”という声を聞くようになった」と話す。一般教員と関わる機会が少ない町教委側も情報共有が図られ、「一人ひとりの“人となり”がよく分かるようになり、声をかけやすい」とコミュニケーションの円滑化に成果を感じている。

 ことしは7月に約80人の面談を終えた。町教委が学校現場に発出した情報資料によると「子どもたちとの関わり・成長にやりがいを感じている」「言いたいことが言える、相談できる環境にある」などの前向きな意見が多い一方、保護者対応への苦慮や慢性的な疲労感、言動に傷ついたなどの困り感を抱えている教員が一定数いることが分かった。学校現場に慣れていない新採用職員だけではなく、多様な職務や年代の教職員が集う学校現場では、それぞれが悩みや孤立感を抱えていることがあらためて浮き彫りになった。

 笹原SAは「養護教諭や栄養教諭、事務職員などは担任を務める教員とはまた違う立場。子どもと直接関わる機会が少ない中で“どうすれば先生や子どものためになるか”を考えている」と語る。家族の介護や子育てなど、それぞれのライフステージで悩みを抱えている教職員も多く「年代によって心身に与える影響は変わる。責任感の強い教員が意外と悩みを抱えていたりもする」と幅広いサポートの重要性を口にする。

 文部科学省が昨年公表した4年度人事行政状況調査では、教職員の病気休職数が6539人に達し、2年連続で過去最多を更新するなど教職員のメンタルヘルス対策の必要性が増している。笹原SAは「教職員には相談できる相手に話をすることで今の自分に気付いてもらいたい。管理職には子どもを取り巻く環境が多様化・複雑化し、即戦力が求められる時代だからこそ“失敗しても大丈夫”という雰囲気をつくり上げてほしい」と話している。

(市町村 2024-09-06付)

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