帯広市教育研究所 6年度夏季研修講座 
(市町村 2024-09-11付)


おいしさは視覚から まずは手軽な食育を

 【帯広発】帯広市教育研究所は7月下旬から8月上旬にかけて、市内各所で夏季教員研修講座を開いた。令和の日本型学校教育における今後の方向性や今日的な課題に関わる研修など、教職員の資質向上を図る全12講座を展開。多種多様な講座を設け、多くの教職員に学びの機会を提供した。

 旭川市立大学短期大学部の豊島琴恵教授は「食と健康~正しい食事で子ども未来を拓く」をテーマに食育研修を行った。

 子どもたちの健全な発育には「食べる意欲」「かむ意欲」を育てることが大切だと提言。市内の保育所で実施した「そしゃく力アッププロジェクト」における健口体操や提供するおやつの工夫から、かむ力が向上したり、残菜率が激減したりするなどの効果が生じた実践例を共有した。

 また、栄養バランスも整っており、そしゃくするよう工夫を施した手軽で実践しやすい「健康的な生活を送るためのやさしい時短料理」のレシピを紹介。このうち、干し野菜の豆乳スープと食物繊維たっぷりサラダを調理・試食した。

 このほか、豊島教授は食育に重要な観点として視覚を強調。「まずは赤・緑・黄・白・黒の5色を意識したメニュー構成を意識。自分に合った続けられることから余裕を持って取り組んでほしい」と呼びかけた。

 研修に参加した参加者からは「偏食だったり朝食を抜いて登校する子だったりいろいろな子どもたちの顔が浮かんだ。子どもたちが自立していく時に、生きる食育を伝えなければいけないとあらためて感じた」と感想の声が上がった。

 札幌弁護士会・スクールロイヤーを務める森洋二弁護士は「弁護士から見た学校における諸課題への対応」と題し講演。森弁護士が対応した事例を挙げ、学校内で生じたトラブルについて弁護士的見解から対応策を紹介した。

 校内でトラブルが生じ、被害者生徒の保護者から加害者児童と保護者の謝罪を求められた場合を事例として提示。この時の対応への注意点として「はじめに被害者側に過度な期待を持たせず、多角的な対応を心がけてほしい」と呼びかけた。

 「学校としてできる対応は行うが、その対応がすぐに実を結ぶかは不明だ」という前提のもと、被害者・加害者、保護者が納得できるような謝罪する方向とは別の目標を掲げ、アプローチをすることで具体的な計画の立案につながり、被害者の保護者に対し明確な現状を伝えることができ、不信感の解消につながると説いた。

 また、被害者家庭・加害者家庭における学校の立場として、双方の間を結ぶ伝書鳩のような役割を担うことは、トラブルが長期間に及ぶ危険性が高いと注意を促した。

 このほか、家族構成を考慮したアプローチの在り方として、共働き家庭の増加に伴い、日常の細かな児童生徒の様子について教職員の方が把握している状況も増えてきているため、学校側がリードすることで、円滑なトラブル解決につながる可能性が高いと紹介した。

 一方で、家庭における協力が最重要であるとした上で「協力的に対応してもらえるよう学校がサポートする姿勢を示してトラブルの解決に努めてほしい」と伝えた。

  筑波大学附属小学校の齋藤直人教諭は「技術の習得を支える安全な水泳授業のポイント」と題し、実技を交えた研修を実施した。

 実技研修で齋藤教諭は、膝を抱え込んで背中を上にした状態で水に浮く「だるま浮き」が水中での活動に苦手意識がある子どもに対し、水に慣れるきっかけとして効果的であると紹介。だるま浮きの指導のポイントをはじめ、安全性を確立した適切な指導方法を実践的に伝えた。

 座学では、授業回数の確保に向けた授業計画例や低学年・中学年・高学年の発達段階に応じて習得させたい技能などを提示した。

 齋藤教諭は、一連の研修を通して水中という非日常における活動で重要な指導ポイントを説き、安全な環境における指導体制の確立とともに、児童生徒が技能を着実に習得する水泳授業について実践的に紹介した。

 ㈱ダイイチの若園清代表取締役社長は「普段の食生活を通して、地域を笑顔に~ダイイチの経営方針に学ぶ、新しいことに挑戦していく原動力」と題し講演。

 昭和33年の設立から「消費者の毎日の食生活を豊かにするためのお手伝いをする」を理念に、消費者の暮らしに欠かすことのできない店づくりに尽力。地域密着型の食品スーパーマーケットとして、全道に23店舗を展開し、歴史を刻みつつ多くのチャレンジを重ねてきたことを伝えた。

 チャレンジの一環として昨秋には、札幌市内のココノススキノ内にすすきの店をオープン。今秋には、ラピダスによって急激な発展が期待される千歳市に大規模店の出店を予定しており「できない理由を探すより、今ある環境で精いっぱい工夫して挑戦を続けていきたい」と挑戦への原動力を明かした。

 このほか、同社の働き方改革として福利厚生の改善などに取り組んでいることを説明するとともに、東日本大震災が発生した当時を振り返り「スーパーが地域のライフラインであることをあらためて実感した。それは従業員も同様で、地域の食生活を支えているというやりがいを感じる契機となった」と話し、やりがいのある職場づくりの重要性を訴えた。

 また、参加者からの「大きな組織を運営していく上で大切にしていることや言葉かけは?」という問いに対して、若園社長は「大きな組織と捉えるのではなく23店舗の集合体としてみている。一人ひとりの集合体であり、1円1円の売り上げの積み重ねがあることを忘れないようにしている」と返答した。

 研修に参加した参加者からは「企業も会社も人づくりという点で同じだと感じた」「地域に根差す方針は学校教育においても見習いたいと感じた」など感想の声が上がった。

この記事の他の写真


校内トラブル 多角的対応を

技術の習得伝える 安全な水泳授業へ

食で地域を笑顔に 心構えと気構えは

(市町村 2024-09-11付)

その他の記事( 市町村)

北見市教委 全国学力等調査結果 中学校数学データ活用 0.5P全国超 小中連携し学力向上へ取組

 【網走発】北見市教委は、6年度全国学力・学習状況調査の結果を公表した。中学校の数学における「データの活用」については全国平均を0・5ポイント上回った。市教委では結果を受け、明らかになった課...

(2024-09-13)  全て読む

京極町教委 全国学力等調査結果 小学校算数図形などで成果 中学国語 書くことなども

 【小樽発】京極町教委は、6年度全国学力・学習状況調査の結果を公表した。小学校国語で「話すこと・聞くこと」「読むこと」、小学校算数で「図形」「変化と関係」、中学校国語で「言葉の特徴や使い方」...

(2024-09-13)  全て読む

七飯町教委と練成会グループ 大沼岳陽で初の模擬訓練 災害など想定し授業配信

 【函館発】七飯町教委はことし2月、不登校児童生徒の学習支援や緊急時の授業配信等を連携事項とし、道内で学習塾を展開する練成会グループと連携協定を結んだ。災害時や感染症の流行等に対応するための...

(2024-09-12)  全て読む

浜頓別町教委 2台目端末実証事業 スマホ 各小・中に5台貸与 動画等をタブレットで編集

浜頓別町が学校に2台目の端末整備  【稚内発】浜頓別町教委は町独自で、児童生徒が使用する2台目の端末整備に向けた実証事業に取り組んでいる。7月から浜頓別小学校と浜頓別中学校にスマートフォンを5台ずつ貸与。学習で撮影した動画や...

(2024-09-12)  全て読む

浜頓別町 総合学習で地学協働 ふるさとの魅力を体感 クッチャロ湖でSUP体験

浜頓別SUP体験  【稚内発】浜頓別町は、小・中学校の総合的な学習の時間で地学協働の取組を推進している。本年度は、小学校3年生から中学校3年生までの児童生徒を対象に、町内のクッチャロ湖でSUP体験を開始。これ...

(2024-09-12)  全て読む

定員拡充、学科転換へ ニセコ高新寄宿舎8年9月供用開始へ 木造2階 約70人収容可

 【小樽発】ニセコ町は、ニセコ高校新寄宿舎建設の基本設計をまとめた。木造2階1792・68平方㍍で、収容人数は約70人。個人の寝室とリビング、水回り等を集約したユニットゾーンを9ヵ所設けると...

(2024-09-11)  全て読む

函館市教委 6年度全国学力等調査 日常的にICT活用推進 「いじめ許されない」意識醸成

表2  【函館発】函館市教委は6年度全国学力・学習状況調査の結果を公表した。児童生徒質問紙調査では、日常的にICT機器の授業活用が進む現状や「いじめは許されない」という意識が醸成されている様子が結...

(2024-09-09)  全て読む

八雲町教委 八雲スタイル学習会 読解力向上を視点に 落部小5年算数「図形の角」公開

 【函館発】八雲町教委は、小中学生の基礎的・汎用的読解力を育成する授業改善「八雲スタイル」を小中共通実践事項に掲げている。8月29日、落部小学校で第2回八雲スタイル学習会を開催。町内教職員2...

(2024-09-09)  全て読む

小樽市教委 6年度全国学力等調査 小学校国語 書くこと全国1.5P超 端末活用 小28・6P上回る

表2  【小樽発】小樽市教委は、6年度全国学力・学習状況調査結果を発表した。平均正答率は小学校国語が全国と同程度となったが、小学校算数、中学校国語および数学で全国平均を下回った。小学校国語は「情報...

(2024-09-06)  全て読む

せたな町教委 心理的安全性の向上へ 風通しの良い職場づくりを スクールアドバイザーが面談

スクールアドバイザーによる教職員のメンタルヘルス対策  【函館発】心理の専門家として、子どもの悩みや心の相談に応じるスクールアドバイザー(SA)。子どもの相談だけではなく、家庭や学校の問題にも目配せする頼もしい存在だ。その信頼性を生かし、せたな...

(2024-09-06)  全て読む