道高校長協会普通部会 苫小牧大会 時代拓く普通科教育を 藤島苫南校長が研究発表
( 2024-09-20付)


道高校長協会普通部会苫小牧大会

 【苫小牧発】道高校長協会普通部会(相馬利幸部会長)は6日、苫小牧市民会館で道普通科高校長研究協議会第39回苫小牧大会を開催した。研究主題は「北海道の新たな時代を拓く普通科教育の創造」。研究協議では、苫小牧南高校の藤島尚子校長が「普通科学校の普通な改革」と題して研究発表に立ち、変化や提案を後押しするため戦略を立てて実践してきた事例の数々を具体的に紹介した。

 大会には全道から164人が参加した。総合型地域スポーツクラブNPO法人おにスポの磯田大治代表が「変化する部活動 地域に託されたジュニアスポーツの現状」と題し講演。全国普通科高校長会の佐藤到事務局長が全国情勢報告を行った。

 研究協議Ⅰでは、根室高校の松田素寛校長が「根室高校の特色化・魅力化」について紙上発表。苫小牧南高の藤島校長が「普通科学校の普通な改革」と題し研究発表を行った。

 研究協議Ⅱでは、普通部会調査研究委員会の最終報告「北海道の新たな時代を拓く普通科教育の創造 未来を担う人材を育む普通科教育の実現」を市立函館高校の花松均校長が行った。

 藤島校長の研究発表の概要はつぎのとおり。

 苫小牧南高は85%が40代以上とベテラン段階の教職員が多く、落ち着いた学校である。数年前に、制服を変える等の学校改革はいったん結着がつき、私が着任した時、これ以上の変化の必要性を感じていないのか、または方法を模索しているのか、提案しても通りづらく、学校が動きづらいという印象を持った。

 学校環境も落ち着いており、変わる必要がないとの考えかもしれないが、このままでは時代の変化に対応できないと思った。世の中も学習指導要領も変わっているのである。

 教職員の意識改革をどう進めれば良いのかと考え、様々な本を読みあさるなど、とにかく情報を集めた。生成AIに男性校長と女性校長の違いは?と聞くと男性は決断力があり、女性は共感力があるというのが世間のイメージらしい。自然体でいてもイメージと外れないようだと思い、優しく、共感力を発揮し、さらに決断力を垣間見せたらとイメージ戦略を練った。

 とにかく学校を動かしたい。変化を嫌う人を動かさなければいけない。まず小さな変化を見せ、変わる、動く実感を持ってもらおうと考えた。

 はじめに先生方の話をじっくりと聞いた。先生方だってきっとやりたいものを持っていない訳ではない。コミュニケーションを深め、先生方が持っているやりたいことや改善点を聞き出し、それを全部かなえた。

 変化は小さなことから始めた。職員トイレや更衣室に「生徒使用禁止」という張り紙が貼ってあったのだが「来客・職員専用」に変えた。たったこれだけのことでも受ける感じは随分違う。

 教室のプレートも統一した。英語に力を入れている学校なので英語表記も取り入れた。そうやってまずは見えるところを少しずつ変えていった。次々変えていくと「学校って動くのでは?」という雰囲気になってくる。自分のアイデア、意見が実現する実感を持ってもらった。

 職員室の要は教頭先生だが、校長から教頭、教頭から先生方というように伝えてもらういわゆる“メッセンジャー”にしないことを心がけた。教頭と一緒に当事者にも聞いてもらうように努めた。

 ICTの活用についても「苦手だから」「できないから」と尻込みする先生が多かったので「お試し期間」をつくり、慣れてもらった。慣れてしまえば意外と便利なので、自然とICTを活用するようになっていった。

 探究を進めるため3年間のグランドデザインをつくったが、これはそう簡単にいかないのでコアチームをつくり、現在取り組み中である。難しいのはどこまで校長が介入していいか。校長ができることは組織づくりであり、内容など全てに校長が首を突っ込むのも違うし加減を図っているところ。

 ある調査によると、40~50代の女性は他の年代や同年代の男性に比べて、新しいことを取り入れない傾向があるそうだ。それはなぜか。男性は30代の頃から期待され分掌部長や主任などの役を任せられるが、女性がそういう役を与えられることは少ない。そうやってずっと過ごしてきた人が40~50代になって今さら新しいチーフになってくれと言われてもそれは無理である。

 どうか女性の先生にも20~30代の頃からどんどんチーフなどの役割を与えて、期待してほしい。

 私は「女性は受付をやってね」というような扱いを受けて違和感を持ったという経験がある。多様性の時代の変化の中で、女性管理職を増やすためにも、若いうちから男性同様に女性にも機会を与え、期待して育ててほしい。

 職員室をどうやって動かすか。心を解きほぐしながら、この人はどういう役割を任せたら張り切ってやってくれるだろうかと考えた。好きなこと、嫌なこと、得意、不得意を見極め、その人に合ったミッションを見つけるのが校長の役割である。

 また校長が通知等しっかりした根拠に基づいて話していても、意外と「校長は単に気分で言っているに過ぎない」と思われているものだ。きちんとした根拠があってやっているということを伝えるべきである。全校集会の校長講話でも、生徒に話しながらも今の教育の流れや校長として大事にしていることなどを同時に先生方にも聞いてもらおうと思って話している。

 学校は現有勢力でいかに子どもたちを幸せにできるか。世の中が激しく変わっているのだから「世の中が変わっているんですよ」と絶えず伝えていくことが校長の役目である。

 日々の生活を“普通”に送れるのは実はすごいことだと思う。校長として、危機管理意識を持ちながら、日々、感謝の気持ちでこれからも手を替え品を替え頑張っていきたい。

( 2024-09-20付)