3定道議会予算特別委員会(1日)
(道議会 2024-10-07付)

◆担当教員育成へ指導資料を作成 通級指導の充実

 1日に開かれた第3回定例道議会予算特別委員会では、通級指導の充実が取り上げられた。

 道教委は本年度から「効果的かつ効率的な巡回指導の実施に向けたモデル構築事業」を開始。特別支援教育の経験豊富な教員をリーダー教員として各管内で指定し、巡回指導によって通級指導教室の設置拡充や通級指導に関わる教員の専門性向上を図っている。

 針ヶ谷一義学校教育局特別支援教育担当局長は、事業対象校の教員・保護者から「学級担任が支援方法を相談でき、個々に応じた支援の充実が図られるようになった」「通級指導の効果が周知され、通級指導を受けさせたいという保護者等のニーズの増加につながった」「他校通級に比べ児童生徒を送迎する負担がなくなった」などの意見が寄せられていると答弁。

 山本純史学校教育監は、事業の取組をまとめた指導資料等を作成し、通級指導を適切に担当できる教員の効果的な育成や地域の実情に応じた形態での通級指導教室の設置拡充について市町村教委に働きかけていくとし「国に対し引き続き通級指導の拡充に向けた教員配置を要望するなどして、本道における通級指導のさらなる充実に努めていく」と述べた。

 檜垣尚子委員(自民党・道民会議)の質問に対する答弁。

◆現地改修案で検討 文化的価値継承へ 近美整備の方針

 近代美術館のリニューアル化が取り上げられた。

 文化財・博物館課の佐藤昌彦道立近代美術館担当課長は、休館期間は2年間を想定していたが、躯体コンクリートや内装材、接着剤から発生する有害ガスを減衰させる「枯らし期間」を短縮し、休館期間が1年近く短縮となる可能性があるといった建設事業者の助言を得たと答弁。

 中島俊明教育長は、現地改修、現地新築、移転新築の三つの整備案を比較・調査した結果、文化財への登録の可能性が指摘され、建築物として一定の評価を受けている現在の近代美術館の建物を活用する方向で検討する考えを示した。

 「歴史的価値を有する建築物としてつぎの世代に適切に引き継いでいくとともに、目指す姿に掲げたビジョン等を実現することによって、これからの時代にふさわしい新しい美術館として地域社会や人々の生活がより創造性に満ちた豊かなものになるよう検討を進め、年内をめどに構想を取りまとめていく」と述べた。

 檜垣委員の質問に対する答弁。

◆保護者負担軽減へ財政措置拡充要望 医ケア児支援

 医療的ケア児への支援が取り上げられた。

 医療的ケアを必要とする生徒が修学旅行に参加する場合、生徒の健康状態の把握等を行う看護師の同行、医療的ケアの実施、医療機器の適切な使用や管理、生徒が安全に旅行できる適切な移動手段の確保など不測の事態への対応への備えが必要となる。

 山城宏一学校教育局指導担当局長は、道外の複数の県において、看護師の派遣費用を負担するなどの支援を講じている事例があるとし「医療的ケアを必要とする生徒が修学旅行等に参加する場合、通常の旅行費用のほか、障がいの状態等によって別途必要となる経費について、国に対して制度の充実や財政措置を拡充するよう要請してきており、今後も適切に対応していく」と答弁した。

 山本学校教育監は「医療的ケアを行う看護師の配置に対する財政措置の拡充などを国に要望するとともに、看護師や教職員への引き継ぎなどに関する研修を年度当初に実施するなど、保護者負担の軽減に努めながら、生徒が安全・安心な環境で教育を受けることができるよう支援体制の充実に取り組んでいく」と述べた。

 宮崎アカネ委員(民主・道民連合)の質問に対する答弁。

◆情報発信工夫し一層の任用促進 障がい者雇用

 道教委の障がい者雇用が取り上げられた。

 道教委によると、6月1日現在における道内の障がい者雇用の比率は教員が1・54%、事務局職員や学校事務職員など教員以外が10・70%、道教委全体で2・55%となっている。

 中島教育長は、スクール・サポート・スタッフを含め、学校における積極的な雇用を市町村教育委員会などに働きかけていることを伝え「今後、職場環境の面での配慮や、学校や市町村教育委員会、就労支援機関への任用事例の情報提供のほか、募集の際には障がいのある方も対象であることを分かりやすく発信するなど、学校現場をはじめとしてより多くの障がいのある方がその意欲と能力を発揮できるよう、雇用の一層の促進に取り組んでいく」と述べた。

 平出陽子委員(民主・道民連合)の質問に対する答弁。

◆応急手当て手順等 あらためて指導を 水泳の事故防止へ

 水泳授業の安全確保が取り上げられた。

 高知市内で7月、小学校男子がプールで死亡する水泳事故が発生。小学校より水深が深い中学校のプールで授業を行っていたほか、教員3人が指導・監視を行っていたが、沈む児童を発見できなかった体制も指摘されている。

 国安隆健康・体育課長は、水泳の実技はその特性上事故等が発生する危険性が大きいことから、監視の位置やポイントなどの十分な確認対象学年や体格、力などに応じた無理のない水位設定、AEDの設置場所の確実な把握、児童生徒の状況に応じたちゅうちょのないAEDの使用などの留意事項を毎年度、水泳シーズン前に周知していると答弁。

 山本学校教育監は、安全管理の徹底や、心肺蘇生や応急手当てについての研修の定期的な実施、ためらうことなくAEDを使用することなど事故発生時に備えた学校体制の確立をあらためて通知したとし「今後各学校に対し、心肺蘇生等に関する校内研修の確実な実施に加え、AEDの点検など適切な管理や、全教職員の応急手当ての手順と技能の習得についてあらためて指導するなど、学校における安全対策の一層の充実に向けた取組を進めていく」と述べた。

 鶴羽芳代子委員(自民党・道民会議)の質問に対する答弁。

◆サポーターバンク拡大へ協力を要請 部活動指導人材確保へ企業に

 部活動の指導人材の確保が取り上げられた。

 長居成好部活動改革推進課長は、8月末現在、学校、保護者、地域住民や関係団体向けの説明会を開催した市町村数が昨年12月時点と比較して34市町村増の115市町村、教育委員会、スポーツ・文化芸術団体、学校、保護者などで構成する協議会の設置率が39市町村増の138市町村、休日の部活動を学校から地元の総合型地域スポーツクラブや少年団等の地域クラブに移行した自治体が23市町村増の71市町村に増加したと答弁。

 道教委の「部活動地域クラブ活動サポーターバンク」では、9月末現在で延べ695人が登録し、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど11種目で実際に指導を行っていることを伝え「今後はサポーターバンクのさらなる活用に向け、市町村教委や学校へ積極的に働きかけを行うほか、地域にとってより活用しやすい仕組みとなるよう、全道に2888社ある家庭教育サポート企業や同スポーツ協会にも協力をお願いし、サポーターバンクの登録者や活用実績の拡大に向けて取り組んでいく」と述べた。

 鶴羽委員の質問に対する答弁。

◆年内にセミナー 合意形成を支援 部活動の広域連携

 部活動の地域移行に向けた広域連携が取り上げられた。

 伊藤伸一学校教育局長は、自治体単独では運営団体、実施主体の整備等が困難な場合、生徒の移動手段を確保するなどしながら近隣の市町村と連携することが有効であるとし、8月末現在で道内43市町村が連携に向けた検討を行っているほか、沼田町、深川市、妹背牛町、秩父別町、雨竜町、北竜町の1市5町で広域連携に向けた協議会において、自治体間の合意形成に向けた支援を行っていると答弁。「今後は地域間の協議に教育局のサポートチームが積極的に参画するとともに、市町村教育委員会やスポーツ関係団体等を対象に、広域連携に移行するためのノウハウに関するセミナーを、年内をめどに開催するなどして、近隣市町村の連携促進に向け取り組んでいく」と述べた。

 鶴羽委員の質問に対する答弁。

◆小・中学校の実践 校種を越えて展開 ICTの授業活用

 ICTを活用した授業改善が取り上げられた。

 北川慎太郎ICT推進教育推進課長は、一部の道立高校で授業でのICT活用が進んでいないケースがあり、中学校の学習活動との相違が生じるなどの課題が見られているとし、情報活用能力を小学校から高校までの12年間を見通して育成するため、小中高の管理職や教職員などを構成員として開催する協議会でICTの効果的な活用に向けた議論を行っていると答弁。「こうした取組によって、先進的なICT教育を推進する中学校と地元の高校との事業交流や、ICTを効果的に活用した事業を中学校と高校が共同で開発するなどの実践につながっている」と述べた。

 山本学校教育監は、今後、全校種の教員が参加する国指定事業の成果報告会やICT活用全道協議会においてICTを効果的に活用した授業改善に関する協議を行うとし「小・中学校の優れた実践を校種を越えて高校へも展開し、生徒の学びの質を高める個別最適な学びと協働的な学びを一体的に進め、高校教育の一層の充実に努めていく」と述べた。

 水口典一委員(北海道結志会)の質問に対する答弁。

◆探究学習拡充へJICAと連携 高校生の国際交流

 高校生の国際交流が取り上げられた。

 髙田安利高校教育課長は、本年度はカナダ・アルバータ州に19人、米国ハワイ州に5人、ニュージーランドに5人の生徒を派遣し、それぞれ同数の留学生を受け入れる予定となっていると答弁。また、11高校がICTを活用した海外の学校とのオンライン交流事業を八つの国・地域と行い、相互に地域や学校紹介など交流を深めていると答弁した。

 中島教育長は、引き続き探究学習の機会を拡充する中、国際的な交流活動の推進や外国語教育の充実を図っていくとし「日本への愛着や誇りを持ちつつ、グローバルな視野で活躍する資質・能力を育成していくため、今後もJICA(国際協力機構)と各学校における多文化共生社会や開発途上国の課題解決等をテーマとする探究学習の機会の拡充を支援するなど、JICA北海道とのさらなる連携強化を図っていく」と述べた。

 寺島信寿委員(公明党)の質問に対する答弁。

◆金融機関と連携し自主的活動を推進 金融教育

 金融教育が取り上げられた。

 山本学校教育監は、金融機関の職員などを講師に招くなどして生徒がライフプランや資産形成について主体的に考える学習活動に取り組んでいる学校の事例に触れ「今後、家庭科の教員がオンラインで参加する各教科等教育課程研究協議会において具体的な事例を協議するなど、金融機関等と連携した実践的・体験的な学習活動をさらに進め、生徒が自主的・合理的に社会の一員として行動する自立した消費者となるよう、金融教育の一層の充実に努めていく」と述べた。

 寺島委員の質問に対する答弁。

(道議会 2024-10-07付)

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