元校長の“学校アップデート! №19相互不干渉の体質を改善する(札幌市 2024-11-20付)
教員は年齢に関係なく子どもからも教職員からも「先生」と呼ばれ、互いに尊重し合っているため、学校内には「相互不干渉の体質」があります。「相互不干渉の体質」とは、他の先生が自分とは全く異なる考えで子どもに指導していたとしても、指摘して人間関係が悪くなることを恐れ、互いに干渉し合わないという体質のことです。この体質は、学校経営を阻害する要因の一つです。
それぞれの教員が3K(勘・経験・根性)で子どもへの指導に当たることになり、学校の教育目標の実現に向けた「学校として」の教育活動をつくりにくく、教員の同僚性を高めていくこともできません。
働き方改革によって教員の在校時間は減りました。勤務時間もそれぞれの教員の働き方に応じて柔軟に設定することができるようになり、教員が職員室で子どもの様子や教科等の指導について語り合ったり、会議で互いの考えを出し合ってさらにより良い教育活動をつくり出そうとしたりする時間も減りました。「相互不干渉の体質」を改善するためには、3Kの一つである「経験」にとらわれず、互いの良さを学び合い、違いを認め合いながらさらに指導力を高めていこうとする同僚性の高い教員集団を構築していくことが大切です。そのためには、教員が共通のテーマで対話する場を意図的に設定し、自分とは異なる他者の考えを認めたり、他者の考えの良さを学んだりする経験を積み上げていくことが必要です。
欧米人は話し合うことによって「コンセンサス(意見の一致=三つの円が重なった部分)」を求めますが、日本人は「思いの共有(それぞれの考えの違いを包み込む)」を図ります。つまり、何となく分かった状態で話し合いが終わる傾向があります。だから「総論賛成・各論反対」という事態が生まれます。学校経営において「思いの共有」でとどまることなく「コンセンサス」に近づけていくことが大切です。
年度当初に校長が学校経営方針を語るだけでは、校長のビジョンは「絵に描いた餅」または「思いの共有」の段階にとどまっています。「コンセンサス」に近づけていくためには、校長がビジョンをさらに具体的な言葉で語り続け、教員がそれに対してどのように取り組もうと考えるのかを話し合う(アウトプットする)ことが必要です。現職の時、つぎのように取り組んでいました。
○コロナ禍によって職員朝会から放課後の職員集会に移行したため、職員集会(週2回) を使って新たに設定した学校の教育目標『学び・思い・仲間がつながる楽しい学校』 と、大切にしたいキーワード『あこがれ』『思いやり』という言葉に込めた意味に ついて3分間以内で語り続ける。
あこがれ…下学年から上学年という意味だけではなく、同学年も含む
思いやり…厳しいと優しいの両方を含む(厳しいの反対は冷たい、優しいの反対は 甘いであり、厳しいと優しいは対立する概念ではない)
○職員集会終了後、ミニ研修会(2週間に1回・15分程度)を設定し、設定したテーマ(教 育目標の具現につながるテーマ)について低・中・高学年ブロックごとに発達段階 を踏まえて話し合う。
北原徹也 (北海道特別活動研究会顧問、元札幌市立平岸西小学校長)
(札幌市 2024-11-20付)
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