インサイドリポート 札幌月寒中 教育特化型生成AI活用札幌月寒中 教育特化型生成AI導入 経産省の実証事業を活用 個別最適な学びの深まり期待 働き方改革 教員の活用促進が鍵
(札幌市 2024-12-12付)

月寒中スクールAI(生徒)
道徳でスクールAIの活用を学ぶ生徒たち

 札幌市立月寒中学校(太田和幸校長)は本年度、経済産業省の実証事業を活用し、教育特化型生成AIプラットフォーム「スクールAI」を導入している。生徒の学びをサポートするシステムを生かした生成AIによる授業が始まる一方で、教職員間での効果的な活用を模索する動きが見える。教員の働き方改革につなげるためは、教職員自身が生成AIのメリットを実感することが第一歩だと言える。

 5日午後、1年生170人を対象とした道徳出前授業が開かれた。講師を務めた札幌国際大学の安井政樹准教授は「生成AIと人の心」をテーマに、AIを搭載した人型ロボットが会話する様子を紹介。「AIロボはネット上の情報を集めているに過ぎず、心がないから(聞かれたこと全てを)答えてしまう」と強調した。「道具は使う人の心次第で良くも悪くもなる」と述べ、生成AIとの関わり方を考える必要性を説いた。

 スクールAIは、教育特化型生成AIプラットフォームとして(株)みんがくがリリースした教育サービス。経産省「働き方改革支援補助金」実証事業に採択されており、市内では月寒中をはじめ4校で導入されている。

 特色は、チャットGPTなどと異なり、教育用に特化していることから年齢による児童生徒の活用に制限がなく、児童生徒の個性や実態に応じた個別最適な学びをサポートするようカスタマイズすることが可能な設計となっていることだ。

 例えば、ある生徒の特徴として「褒められると伸びる」などと設定すると、生徒の質問に対してスクールAIが肯定的なセリフを示しながら学習に対する「ヒント」を与えてくれる。決して答えを示さず、あくまで生徒自身が考えを深めるヒントにとどめた内容を提示する「サポートに徹する」仕組みになっている。

 また、個人情報の外部への流出などを防止するセキュリティー機能や、対話内容がAIに学習されない設計になっているなど、高い安全性を確保していることも特色の一つだ。

 同校では、2学期から1年生の理科や総合的な学習の時間で活用を開始。特に、総合では職業体験のスピーチを考案するサポートとして利用しているという。

 発表の仕方を相談したある生徒は「得られたヒントから、自分の考えを深めることができた」と話す。使用経験のあるチャットGPTなどと比べて「答えを得られない分、自分で考えることにつながる。(自分でスピーチを考えたという)達成感が得られる」と充実した表情を浮かべた。

◆校内研修重ねて有効性実感を

 授業での活用が始まった一方で、今後は教職員への活用の広がりに期待がかかる。同日行われた校内研修会。安井准教授がスクールAIやチャットGPTを使用しながら、通知表の所見作成や自己PR文の指導での活用例を示した。

 安井准教授が、生徒の特徴や取り組んだ出来事などを踏まえて、3パターンの文章生成を求めた。生成AIが即座に異なる文章を示すと、参加した教職員から驚きの声が上がった。

 教職員らは「自分で考えると、文章が固定化する傾向にあった。生成された文章を見て“こういう表現もあるのか”と気付くきっかけになった」「発出文書や指導案などのたたき台として、十分に使えることが分かった」などと話し、生成AIの有効性への理解を深めた。

 生成AIの活用を推進する野呂遼詩教諭は、生徒たちの授業や部活動での活用が広がる一方で「先生方にとっては“怖いイメージ”が残っている。研修を重ね、様々な面で活用が広がれば」と話す。

 太田校長は、学校における生成AI活用が「生徒にとって最先端の技術に触れる絶好のチャンス」と捉える一方で「そのためには、教師側が有効性を実感しなくてはならない」と強調する。セキュリティーや情報モラルへの懸念、ファクトチェックの必要性を示しつつ「まずは使ってみること。その上で働き方の質改善につながれば」と期待する。

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月寒中スクールAI(校内研)
校内研修で生成AIの有効性を確認した

(札幌市 2024-12-12付)

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