解決支える「すべ」活用 函館市柏野小が4授業を公開
(関係団体 2015-09-29付)

北理研柏野小4年生授業
北理研大会で柏野小4年生授業公開

 第六十二回道小学校理科教育研究大会函館大会(九月十八日)では、函館市立柏野小学校が、研究主題に基づく四つの授業を公開した。

 三年生「風やゴムのはたらき」(村田智美教諭)では、風やゴムで物が動く様子を比較しながら調べ、風やゴムの働きについての見方や考え方を養う授業を展開。四年生「もののあたたまり方」(吉田麻夕子教諭)では、金属や水、空気を温め、温まり方を物の性質と関係づけながら調べ、見いだした問題を興味・関心をもって追究することを通じ、金属や水、空気の性質についての見方や考え方を養う授業が行われた。

 五学年「もののとけ方」(野呂勇己教諭)では、ものを水に溶かし、水温や水量による溶ける限度の違いや、溶けた物の取り出し方などを調べ、物の溶け方と規則性についての見方や考え方を養う授業を公開。六年生「電気の利用」(山形圭亮教諭、八重樫大輔教諭)では、電気が光や音、動力、熱などに変換でき、音や熱を電気に変換できることなど、電気の性質や働きについての見方や考え方を養う授業を公開した。

 うち、四年生「もののあたたまり方」は十一時間扱いの八~九時間目。前時までに、実験等を通じて実験用ガスコンロ等、実験器具の名称と取扱方法を習得するとともに、金属の温まり方や水の温まり方を学習した。

 本時の目標は、水の冷え方について、水の温まり方と関係付けて考察し、表現することと、水は冷やされた部分が移動して下から順に冷えることを理解すること。

 吉田教諭は冒頭、「冷やされた水は下から冷えると思うか」と児童たちに発問。道南支部が研究を進めている問題解決の九つの過程と、問題解決を支える「すべ」を活用した授業を展開していった。

 中では、「予想」の課程において、児童たちが水の温まり方と関係付けて水の冷え方を予想することを「思考のすべ」に、自分たちと異なる仲間の予想を理解しようとすることを「自他を理解するすべ」としたほか、「観察・実験の方法」「結果の予想」「観察・実験」の各課程では、予想を確かめるための実験方法を考えることを「思考のすべ」、協力し実験すること、役割分担を確認することを「自他を理解するすべ」として授業を進めていった。

 児童たちは、三人一組のグループをつくり、ポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶液をビーカーに入れ、一度温めたあと、冷却剤などを用いて冷えていく経過を観察した。冷却剤をビーカーの底に置いたり、あるいはビーカー上部に冷却剤を吊るし入れたりしながら、冷えていく水を観察。事前の予想と比べながら、水の動き、水の色の変化を見守った=写真=。

 グループごとの実験が終了に差しかかると、吉田教諭は「実験の結果と予想を比べて、どのようなことが言えるか」と発問。「考察」の課程に入り、水の色、動きを見て、関係づけて結論を導き出すことを「思考のすべ」、自分と異なる仲間の考察を理解しようとすることを「自他を理解するすべ」とし、グループごとの「考察」が交流する場を設けながら、冷却剤を置く位置など、異なる条件と結果を比較できるよう授業を進めた。

 グループごとの実験が終了に差しかかると、吉田教諭は「実験の結果と予想を比べて、どのようなことが言えるか」と発問。「考察」の課程に入り、水の色、動きを見て、関係づけて結論を導き出すことを「思考のすべ」、自分と異なる仲間の考察を理解しようとすることを「自他を理解するすべ」とし、グループ毎の「考察」が交流する場を設けながら、冷却剤を置く位置など、異なる条件と結果を比較できるよう授業を進めた。

 今回の公開授業の特徴の一つは、「可逆性」に視点を当てたこと。前回の授業で児童たちは、温められた水は、上に動いて上から温まることを習得したが、実験後にポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶液が、もとの色に戻り、水が冷えていったことを知っている。その際、児童たちに「水はどのように冷えるのだろうか」という視点を与えて、次回の授業につなげていた。

 また、吉田教諭は本単元に至るまで、授業において様々な比較をする場面を設定し続け、本単元でも水の温まり方を、先に学んできた金属の温まり方と比較し、子どもたちが「同じ」「違う」「関係づける」といった「思考のすべ」を使えるよう、授業の場面に応じて比較することを積極的に取り入れている。

 一方で、児童たちが「自他を理解するすべ」を授業の中で使い、身に付けられるような工夫や支援も行っている。「予想」の過程などでは、児童たちが互いの予想を一目で見ることができる掲示を行い、互いの予想の微妙な違いを考えながら、考察する場面における交流ができるよう心がけた。

 さらに、観察・実験の場面では、吉田教諭は意図的に似たような性格の児童同士をグループにするようにした。積極的な児童同士を組ませることで、実験での役割分担を譲り合い、協力し合う活動を促し、また、消極的な児童同士をグループにすることで、自信をもって自ら役割を果たそうとする姿もみられると考えた。

 授業「もののあたたまり方」では今後、児童たちが空気の温まり方について予想し、実験し、考察することになっている。吉田教諭は「思考のすべ」や「自他を理解するすべ」を意識させるとともに、これまで児童たちが習得してきた金属や水の性質と比較させながら授業を進めていく予定だ。

(関係団体 2015-09-29付)

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