オホーツク小中校長会研究大会の提言概要
(関係団体 2015-09-09付)

 【網走発】第四十三回オホーツク管内小中学校長研究大会では、四分科会による研究協議が行われ、計七本のレポート提言のもと活発な議論が交わされた。ここでは、危機管理・連携協力をテーマとした第三分科会での提言概要を紹介する。

異校種間の円滑な接続へ―津別小・宮管玲校長

【研究課題】=幼保・小・中・高等との連携と円滑な接続のための組織づくりの推進と校長の在り方~学校段階が変わる際の幼児・児童生徒の不安や緊張、戸惑い等を解消するために

【発表者】=津別町立津別小・宮管玲校長

◆課題設定の要旨

 一人の人間の成長を考えた場合、保育所・幼稚園やこども園から小学校、小学校から中学校、中学校から高校などの学校間の移行には連続性があり、このような発達の段階に応じた継続的かつ体系的な教育の充実を図るためには、異校種間の円滑な連携・接続を図ることが重要である。

 ところが、これまで、異校種間連携の取組が不十分なままとどまってきたことによって、園児・児童生徒個々のもつ不確かな情報や、教師の考え方、児童生徒への接し方のギャップなどに起因している、進学時の不適応、不登校など、今日的な課題が生じている。

 異校種間連携は、このような課題を解決する上でも重要な鍵を握る。

 そのために各学校は、異校種間の活動について理解を深め、その理解を前提とした系統性のある指導計画を作成することが必要である。また、幼児・児童生徒一人ひとりの発達の状況を的確に把握し、それに対するきめ細やかな支援を行うためには、個々の情報をつぎの学校段階に確実に引き継いでいくことが重要である。

 本町においては、前々年度に活汲中が津別中に統合、本年度は本岐小と活汲小が津別小に統合となり、町内の小・中学校が一校ずつになった。本校の異校種間の連携の実践が単なる活動の前年度踏襲ではなく、子どもは「連続的に」学び、育ち、成長する者であるとの認識のもとに実践をとらえ直し、こども園、中学校と半歩ずつ歩み寄り、互いを理解し合い、学び合う新たな関係づくりを目指したい。

◆課題解決のための具体的取組

▼課題解決の計画

▽26年度・27年度=これまでの異校種間連携(縦のつながり)の取組を評価・整理し、改善策を実施する

▽28年度=家庭との連携や地域との連携(横のつながり)のための取組を町教委やPTAと検討し、実践に着手する

▼課題解決の視点

▽理解=幼児・児童自身の不安を解消し、理解を深める「連携」となっているか

▽計画=発達の段階に応じ、異校種間の系統性を意識した「連携」となっているか

▽個に応じた指導を異校種間で行うための「連携」となっているか

▼本校の「幼児・児童にとって円滑な接続」のための取組

▽幼稚園・保育所から小学校への連携=①体験入学・保護者説明会②合同学習③就学時健康診断④津別町特別支援連携協議会活動参観と幼児の情報引継⑤幼稚園教諭の小学校授業参観⑥支援が必要な家庭にかかわるケース会議

▽小学校から中学校への連携=①体験入学②特別支援学級合同体験学習③津別町特別支援連携協議会活動参観と児童の情報引継④小学校教職員への授業公開

◆校長の指導性

 幼児教育と小学校教育との円滑な接続のため、連携を図るようにすること、就学に向けて小学校との積極的な連携を図るよう配慮すること、小学校間、幼稚園や保育所、中学校や特別支援学校などとの間の連携や交流を図ることなど、校長の職務として、隣接する異校種と「連携」を図らなければならないと学習指導要領等には明示されている。

 一方で、「連携」とは、同じ目的をもつ者が互いに連絡をとり、協力し合って物事を行うことであり、教育の目的は「子どもの育ち」や「学び」を促進し、子どもたちの成長を支援することであるがゆえに、幼児教育に携わるもの、小学校教育に携わるもの、中学校教育に携わるもの、高校教育に携わるものが「連携」を取り合うことは理の当然である。

 手塩にかけた教え子たちの不安や緊張、困惑などを解消し、新しい学校段階に引き継ぐという「教師としての使命感・責任感」に火をともすことに、校長の指導性が求められている。

 もちろん、子どもをめぐる連携は、異校種間の「縦のつながり」だけでなく、「家庭との連携」や「地域との連携」という「横のつながり」の鍵となるのも校長であることは言うまでもない。

◆成果と課題

▼成果

▽個々の幼児の発達や性格等の情報は、授業・保育参観や要録・記録等の引継作業に加えて、小学校教諭による就学時健康診断や合同学習での一斉指導を通して、より具体的に認識され、小学校内の共通理解が図られる

▽幼児教育と小学校教育のギャップは当然と理解し、ギャップをゆるやかにする対策・校内体制を工夫することが有効である

▽幼稚園や保育所でのアプローチカリキュラム的な指導支援が有効である

▼課題

▽横の連携の必然性=生活習慣が身に付いていないことなどは、当然、「家庭との連携」となるが、親自身の生活、養育態度など、「福祉との連携」が必要なケースも確実に増加している

▽誰のための連携=大人にとって都合の良い連携ではなく、幼児・児童生徒のための円滑な接続のための連携でなければならない。

 その上で、指導者側の発達の段階に応じた系統性のある教科指導計画、総合的な学習の連続性の確保が課題である

学校間連携の推進に向け―西興部中・片原俊光校長

【研究課題】=異校種間相互の連携を生かした教育活動の推進と校長の在り方~村内三校の学校間連携推進に向けた組織づくりと校長の指導性

【発表者】=西興部村立西興部中・片原俊光校長

◆課題設定の趣旨

 急速に変化する社会情勢の中で、わが国においては、主要先進国でもまれにみる速さで少子高齢化が進行し、また、グローバル化の進展に伴う国際競争の激化が一層進んでいる。

 こうした厳しい時代を生きる子どもたちには、自らの人生を切り開く力や、多様な価値観を受容し共生していく力が求められる。このため、子どもたちの知識や技能、思考力、判断力、表現力を磨き、主体性をもって多様な人々と協働できる能力や可能性を引き出す教育の実現が急務となっている。

 このような状況の中で、これまで小学校、中学校といった校種の枠の中で固定的に語られてきた学校教育を見つめ直し、より柔軟で効果的なシステムに変革していこうとする機運が高まってきている。

 特に、小中連携・一貫教育にかかわっては、教育基本法、学校教育法の改正による義務教育の目的・目標規定の明確化を契機として、近年の教育内容の量的・質的充実への対応、児童生徒の発達の早期化への対応、いわゆる「中一ギャップ」への対応等、様々な背景によって取組が進められ、すでにその効果が示されている。

 二十六年十二月の中央教育審議会答申、または、道教委「小中連携・一貫教育取組事業」の成果を踏まえて、今後それぞれの地域の実情に沿った学校間連携のシステム構築が一層求められるであろう。

 本村においては、「学校教育振興協議会」という組織を中心に、小学校二校と中学校の村内三校間連携が円滑に図られてきた歴史がある。また、これをさらに発展させる目的で、新たな学校間連携組織の立ち上げが前年度から模索されている。

 本研究は、この組織の始動から実効性ある取組の構築に至るまでの校長の役割と指導性について、追究・究明することを目的としている。

◆課題解決のための具体的取組

▼研究計画

▽26年度(課題の把握と研究の方向性の明確化)=①本村の学校間連携の状況の整理と課題の洗い出し②学校間連携組織の立ち上げにかかわる校長の役割の追究

▽27年度(課題解決に向けた具体的取組)=①学校間連携に向けたビジョンの明示②先進校の取組や近隣市町村の学校間連携の状況等、参考となる資料の整理③取組に対する校長の指導助言の在り方の研究

▽28年度(取組の成果と課題の明確化)=①学校間連携組織の今後の在り方の検討②学校間連携の成果・課題の明確化および改善に向けた校長の指導性の追究

▼27年度の研究の進め方と具体的な内容

▽二十六年度に策定された学校間連携組織を始動させ、村内三校長で検討した連携のビジョンを明示する。また、この連携組織を通じて各校の全教職員にそのビジョンが周知されるよう働きかけを行う

▽今後の資料性のある指導助言に資するよう近隣市町村の中学校長を対象に質問紙調査を行い、「どのような学校間連携を行っているか」「成果と課題は何か」ということについての状況把握を行う

▽「発達段階に応じた生活・学習習慣づくり」を中心に二十七年度の学校間連携を推進することとし、村内三校の「生活のきまり」「学習のきまり」「家庭学習の手引き」等の一貫性を高め、各校および関係諸機関で共有する取組を行う。

 各校のミドルリーダー層による検討の機会を設定するが、その際における校長としての指導助言の在り方を追究する

◆校長の指導性

▼学校間連携に向けた組織づくりとビジョンの明示

▽必然性、必要性のないところから取組を進めることはできない。本村において、なぜ学校間連携をさらに発展させていく必要があるのか、十分に説明できる資料が必要である。校長としての指導性を発揮し、当初はトップダウンに近い形であっても、教職員に一定の共通認識をもたせることが重要となる

▽学校間連携を推進していくための組織の立ち上げと取組の方向性を、教職員に分かりやすい形で提示するところまでは校長に期待される役割である。校長は、法令や自校の教育課程との関連、子どもの発達段階との関連、地域性や関係諸機関との関連、必要な資源対教育的効果との関連等について総合的に判断し、ブレのないビジョンを示す必要がある

▼取組に対する指導助言

▽実際に学校間連携を発展させていくのは学校間連携組織であり、それを運営していくのは各校のミドルリーダー層である。

 主体的な組織運営が適切に行われているか、教職員は連携に向けた協働の意識をもっているか、子どもたちの変容につながる取組が行われているか等、適宜、指導助言を行うことが校長の大きな役割となる。

 その際、先進校の取組や近隣市町村の学校間連携の状況等、資料性のある指導助言を行うことが求められる

▽取組を通して、各校のミドルリーダー層を育てることや教職員の経営参画意識の高揚に結び付く指導助言に意を用いる必要がある

◆成果と課題

▼成果

▽学校間連携組織を立ち上げ、それを運営する各校のミドルリーダー層を介して教職員に学校間連携の発展に向けたビジョンを示すことができた

▽村内三校で一貫性のある「発達段階に応じた生活・学習習慣づくり」の取組に取りかかることができた。また、先進校の取組や近隣市町村の学校間連携の状況等、参考となる資料を整え、それらを生かして指導助言を行うことができた

▼課題

▽教職員の経営参画意識、協働して連携を推進する意識をさらに高めることが必要である

▽ミドルリーダー層を育て、学校間連携のコーディネート機能を含めた主体的な組織運営の力を高めていく必要がある

▽今後、学校間連携の評価指標を示す、または地域の特性をより一層生かす方向性を示すなど、取組の改善に向けた校長の指導性の在り方を追究する必要がある

(関係団体 2015-09-09付)

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