道高教組中央委 主権者教育推進の先頭に 國田委員長あいさつ概要(関係団体 2015-11-06付)
道高教組第二百三十一回中央委員会・第三回支部代表者会議(十月三十一日・十一月一日、札幌市内北海道高校教職員センター)における國田昌男中央執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。
皆さんに意識して議論していただきたいことを二点述べる。
第一は、憲法、主権者教育に関して。
ことし六月、公職選挙法等の一部を改正する法律が成立、公布され、投票年齢が十八歳に引き下げられることになった。私たちは、このことを歓迎するとともに、より一層、というより、いまあらためて主権者教育についてとらえ直す必要に迫られている。
九月末に総務省・文部科学省が『補助教材』を公表し、ことし十二月中には、すべての高校生に配布される予定である。同時に、『活用のための指導資料』も高校教員に配布し、「有権者教育」を推進して、来夏に予定される参院選挙での投票率向上を企図している。
また、文科省は、高校生のデモや集会への参加といった政治活動を一切禁じてきた、いわゆる「六九通達」を見直し、学校外なら原則認める新通知を発出した。
しかしながら、『補助教材』も「新通知」も、どちらも「有権者教育」という「型」に押し込めようとしていないか注意する必要がある。
教育基本法では、「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」とされており、その具体化を期しての十八歳選挙権の実現でなければならないはず。ところが、実際は、文科省の「六九通達」以降、「行政も学校も教員も政治的中立性を意識するあまり、学校における政治的教養の陶冶という優先的課題を事実上封印してしまい」、結果、「政治的教養の貧困な有権者が大量に生み出され」、「〝民主主義の危機〟と喧伝される今日の状況をもたらした」のではないか。
この反省に立てば、教育基本法一四条第二項「特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育その他政治的活動」の禁止が前面に出すぎないことが必要であり、「実際的な課題、問題を題材にして多面的に考察させる方法」、「いわゆる論争的問題の教育については、知識習得に傾斜しすぎた日本の初等中等教育を是正するための突破口となる方法論であり」、「学校教育のみならず社会全体で意識し追求すべき方法」である。
「生徒を信じ、生徒自身にしっかりと政治・社会・経済などの現実問題を考究させる姿勢と度量」、それを大人、とりわけ、教員がもつべきである。選挙権年齢の引き下げは、高校生に対する主権者教育の契機となるだけでなく、遅ればせながら国民一般に対する教育の好機ともなり得る。高校生だけでなく、大人にも主権者教育が必要なのであり、とりわけ、教員の政治的教養の質的向上こそが高校生に対する主権者教育の正否を握るといっても過言ではないと思う。
こうした流れを逆行させようとしているのが道教委「クリアファイル調査」である。自らに課される「政治的中立」を逆手に、本来、自由に行われるべき主権者教育を萎縮させ、思想良心の自由、表現の自由ばかりか、組合活動の自由まで侵そうとする調査は不当、不法であり、政権批判ととらえられる一切の言動を許さないという、偏狭な中央集権思想も感じられる。このような調査は直ちに中止すべきであるし、猛烈な反省が求められる。
安保関連法制が強行可決された。このことによって、戦後七十年培ってきた立憲主義・民主主義・平和主義という価値基準が大きく転換することになった。しかし、前回総選挙で一七%の有権者の支持で多数の議席を得た政府が、国民の六割が先の国会での成立を非とし、国民の八割が政府の説明を不足として異を唱えている中での強行はクーデターとしか言いようがない。これを是とするか否かは今後の国民の動向にかかっている。
法案が成立したあとも、市民が自覚的、自発的に声を上げる行動は続いており、法案廃案を求めて広がっていった、かつてない新しい運動は、いまも連綿と続いている。とりわけ、若者たちが素晴らしい役割を発揮していることは大きな希望である。
憲法を守り生かす運動、その上にわき起こった新たな運動、その礎として私たちが果たしてきた役割に確信をもつべき。同時に、教職員としての私たちにしかでき得ない運動、子どもたちを主権者として成長させる環境を整える取組を旺盛に行うこと、この視点をもって、「参加と共同の学校づくり」を進めていくことが求められる。
第二は、この運動を多くの方々と行おうということ。
まずは、学校内での学習、これは、欠かせないばかりか急務である。文科省・総務省の『補助教材』は補助教材でしかない。これに振り回されることなく、十八歳選挙権の実現を「参加と共同の学校づくり」の契機にすることが必要である。そのための『討議資料』をつくったので、ぜひ、ここから読み合わせていただきたいと思う。
同時に、「六九通達」見直しに際して文科省に全国高P連が出した意見書も読んでいただきたい。これほど前向きに十八歳選挙権の実現をとらえている団体は私の知る限りない。主権者教育の担い手について、学校教育だけの課題とせず、学校以外の社会が実質的責任を負うべきで、その際に、単位PTAとPTA連合会も果たすべき役割があるとまで述べている。その中で、大人も含めた政治的教養の質的向上が図られ、このことが主権者教育の成否を決するとまで言い切っている。
十八歳選挙権を主権者教育実現の契機とするには、学校も含まれる地域の成熟はもちろん、国民一人ひとりが年齢に関係なく主権者であることを自覚する社会、主権者として認め合う社会づくりを進めていくことが求められる。
この運動の先頭に道高教組が立つこと、それこそが時代の要請であり、立憲主義・民主主義・平和主義を自らの手に取り戻すことにつながると考える。
この太く大きな運動をいかに進めていくか、その仲間づくりとして、高教組組合員の拡大をどのように進めていくか、ぜひ、皆さんの真摯な議論によって方針を確認していただきたいと思う。
(関係団体 2015-11-06付)
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