道教育大附属札幌小・中ふじのめ学級の研究概要(上)(学校 2015-11-27付)
道教育大附属札幌小・中学校特別支援学級(ふじのめ学級)の二十七年度全道教育研究大会(二十日、同校)では、研究部長の本間尚史教諭が研究概要を発表した。
研究概要はつぎのとおり。
▽昨年度の研究から
私たちは、昨年度より研究主題を「自分らしさを志向し続ける子どもを目指して」とし、研究を進めてきており、本年度、二年次である。まず、この研究主題にかかわるこれまでの経緯を説明する。
昨年度、研究を始めるに当たって、日々の子どもたちの姿から、今後、子どもたちに身に付けてもらいたい力について整理した。
このような子どもたちの姿を目指し、力を発揮している子どもたちの姿を見直していった。力を発揮している子どもたちは、対象に対し、「できる!」「やれる!」といった気持ちをもちながら課題に取り組んだり、試行錯誤を重ねたりしているなどといった姿をみせていた。そして、やり遂げたことに、満足感や充実感を得て、さらに対象にかかわっていく姿があった。
また、「できた」「分かった」だけではなく、「かかわっている自分」そのものに喜びや楽しさを見いだしながら対象とかかわっている姿もあった。このような姿は、「自分の力で向かおうとしている」「切り拓こうとしている」といった、「今の自分」から一歩、二歩先の自分に向かおうとしている気持ちをもとに、対象にかかわっている姿であるととらえている。
子どもたちの主体的な姿には、このような気持ちをもち「今の自分」を大切にしながら、さらに一歩、二歩先の自分に向かっていく姿がある。これを「自分らしさを志向している姿」と考え、昨年度より研究を進めてきている。
新たな自分に向かうことで、「ひと・もの・こと」とのかかわりをより広げたり、深めたりすることにつながり、そして、「ひと・もの・こと」とのかかわりを豊かにして、新たな価値を見いだしながら学び続けることができると考える。
「自分らしさ」を志向し続けるからこそ、「ひと・もの・こと」とのかかわり合いを豊かにし、「豊かな生活」につながる「学び」を築き上げることができるだろうと考えている。
以上のような理由から、昨年度より研究主題を「自分らしさを志向し続ける子どもを目指して」と設定し、研究を進めてきている。
▽研究副主題の設定の理由 本年度の副主題に入る前に、昨年度の研究、「豊かな〝ことば〟がつながる授業づくり」について振り返る。
昨年度の実践の中では、「自分に引き付けて学ぶ」「なってみる」に通じる姿を見取ることができた。この「なってみたり」「引き付けて学ぶ」ことは、「自分の力で向かおう」「切り拓こう」という主体的な気持ちをもとに、子どもたちの「ひと・もの・こと」とのかかわり合いを豊かにしていくためには大切であることが分かった。
このような子どもたちの気持ちを高めていくことで自分の「考えや思い」を存分に発揮しながら活動に向かい続ける姿を引き出すことができた。
子どもたちからは、「なってみる」「引き付けて学ぶ」ことを通して対象を自分事としながら、「自分の力で向かおう」「切り拓こう」といった主体的な気持ちを高めて、自分の「考えや思い」を存分に発揮し続けていく姿を引き出すことができた。
また、そのような子どもたちは、自らの情動から生まれてくる「考えや思い」の総称であることばを用いて、対象とのかかわりを広げたり、「豊かな〝ことば〟」自体を変容させていく過程で、対象をとらえ直したり、新たなとらえを見いだしたりしている姿を引き出すことができた。
私たちは、このようなことばを豊かなものであるととらえ、昨年度の研究では「豊かな〝ことば〟」を視点とした授業づくりを追求することとした。
本年度の研究副主題を設定するにあたって、私たちは、すべての場面で子どもたちの「自分の力で向かおう」「切り拓こう」という主体的な姿につながっていたかについて考えていった。その結果、自分自身の取組になかなか向き合いきれない「児童J」の姿がみえてきた。
卒業お祝い会に向けた器楽演奏の練習の児童J。鍵盤ハーモニカの演奏は、得意な活動ではないが、弾くことが困難というわけではない。お祝いしたい気持ちがあったが、自分だけで練習しているときには、取組自体に向かえないなどの姿があった。
一方、友達と一緒に活動に向かい続ける姿もみられた。
ボール運動の活動では、扱う技術の難しさがあっても、最後まで取り組み続けたり、技術の面の難しさを気にせずに、友達と生き生きとゲームに取り組んだりする姿がみられた。
この二つの場面の姿から、自分自身に向き合いすぎてしまう子どもが、周囲の人とかかわりながら、自分の力を発揮し続けていくことで、「自分の力で向かおう」という気持ちを高め、様々な場面で主体的に対象にかかわろうとする姿につながるのではないかと考えた。
このような児童Jの姿と、昨年度の成果である子どもたちの姿から、「自分の力で向かおう」「切り拓こう」とする子どもたちの姿には、「①自分事としてとらえたり、粘り強くかかわり続けたりしながら、自分の力を発揮していく姿」があると私たちは考えた。
これは昨年度の研究の中で私たちが目を向けてきた子どもたちの姿であり、子どもたちが対象を自分事としながら、「自分の力で向かおう」「切り拓こう」といった主体的な気持ちを高めていた姿である。
もう一つは、先に挙げた児童Jの姿から見いだした「②周囲の人とかかわり合いながら、どのような場面でも、自分の力を発揮していく姿」である。友達と生き生きと活動し対象とかかわり続けている姿である。
本年度の研究では、①の姿を引き続き大切にしつつ、②に挙げたような、他者との関係性の中で力を発揮している子どもたちの姿をとらえ直し、実践を進めていくこととした。
このような子どもたちの姿を考えたとき、中学校国語科の実践から「様々な情景をとらえようと、自分の考えや思いを表現する姿」「仲間の表現から考えや思いをとらえたり、自分と仲間の考えや思いを比べたりすることで、自分や仲間の考えを生かしながら、さらに情景を読み取り、表現しようとする姿」がみえてきた。
この授業では、「聞こえた音は?」「感じたにおいは?」などといった発問などで観点を絞りながら情景のへのイメージを膨らませる活動を設定した。
その結果、子どもたちは情景のイメージを広げ、次々と浮かべた情景を発表したり、仲間ととらえ方に異なった部分があることにも気づき、より知りたいという思いを高めたり、仲間の読み方からとらえたものを読み方の工夫に生かそうとする姿がみられた。
この中学生から、情景への想像を膨らませようと自分の考えや思いを次々と表現する姿を見取った。そこには子どもたちが詩への情景への想像を膨らませようと何度も読み深め、自分が想像した情景を次々と発表する姿があった。
観点を絞り込みながらイメージを膨らませることができる活動の設定、昨年度大事にしてきた「引き付けて学ぶ」姿に通じるものもみられ、そのことで自分の記憶、経験や知識と結び付け、自分の菜の花畑についての情景を膨らませながら発表する姿につながったと考えられる。
このような姿は、子どもたちが「対象とより深くかかわろうと考えや思いを表現する姿」ととらえられる。
また、自分と仲間のとらえ方の違いに気づき、仲間の情景をより知りたいという思いを高めたり、仲間の読み方からとらえたものを生かそうとしたりする姿も見取った。このような子どもたちは、対象を自分事としながら存分にかかわり続けていくうちに、仲間と自分の考えや思いが重なったり、つながったりすることで、新たな考えや思いに気づき、対象とのかかわりを広げたり、深めたりすることができる活動の大切さがみえてきた。
このような姿は、「互いの思いや考えを生かし、さらに対象にかかわろうとする姿」ととらえられる。仲間と自分の考えや思いが重なったり、つながったりしたときには、昨年度とは違った〝ことば〟があるのではないかと考えた。
国語の授業の中では、仲間とのかかわり合いの中で、想像した詩の情景についての「考えや思い」を表現していった。その中で、仲間が表す情景についての「考えや思い」の表現を感じたりとらえたりすることで、学習対象とのかかわりを豊かにし、自らが想像する情景も膨らんでいった。
その場の中でつながったり、かみ合ったり、分かり合えるものになったりしながら、その場をつくる〝ことば〟へと変わっていった。この〝ことば〟を私たちは「社会で生きる〝ことば〟」と考えることとした。このような子どもたちの姿は、ほかの学習場面でもみられる姿である。
子どもたちは、友達の考えをとらえたり、自分の考えや思いをよりよいものへと変えたりしながら、対象へ豊かにかかわり続けていく。その過程の中で、さらにつぎの「社会で生きる〝ことば〟」が生まれていくような授業を、私たちは大切にしたいと考え、そのような授業を「社会で生きる〝ことば〟が膨らむ」授業と私たちは考えることとした。
子どもたちが、自らの「考えや思い」を表出し合い、「社会で生きる〝ことば〟」を実感しながら、「自分の力で向かおうとしている」「切り拓こうとしている」という気持ちを高め、豊かに「ひと・もの・こと」とかかわり続ける姿といった「自分らしさを志向し続ける姿」の具現化を目指したいと考える。
そこで本年度の研究副主題を「社会で生きる〝ことば〟が膨らむ授業づくり」として、研究を進めることとした。
(学校 2015-11-27付)
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