道教育大附属札幌小・中ふじのめ学級の研究概要(下)
(学校 2015-11-30付)

 道教育大附属札幌小・中学校特別支援学級(ふじのめ学級)の二十七年度全道教育研究大会(二十日、同校)では、研究部長の本間尚史教諭が研究概要を発表した。

 研究概要はつぎのとおり。

▽年次計画、研究の目的、研究仮説について

 「考えや思い」、そして「社会で生きる〝ことば〟」をキーワードに研究し、具現化を図るための授業づくりの視点の検証を行いながら、より研究主題に迫る授業づくりを模索していくこととした。本年度、研究は二年次となる。

 授業づくりについては、「社会で生きる〝ことば〟につながる実態の把握→指導内容の選択、学習の設定→目指していく子どもたちの社会で生きる〝ことば〟の姿の設定、授業づくりの視点の設定」の流れによって進めていく。

 実態把握では、「社会で生きる〝ことば〟」につながる子どもたちの生き生きとした姿の実態、これをもとに指導内容の選択、学習活動を設定。授業の中での支援のポイントとしては、「対象とのかかわりを深める支援」「考えや思いをつなげる支援」の二つの視点から迫った。

 このような観点をもとに、授業を通して目指す子どもたちの「社会で生きる〝ことば〟」について考えていった。

 まず、子どもたちの実態把握について説明する。この実態把握では、今の子どもたちの姿にある、目の前の学習対象とより良くかかわっている姿や、友達や仲間とともに事象にかかわりながら表現している姿を見取っていく。

 より良く事象とかかわっている姿を振り返ると、このような姿があった。

・事象そのものの良さや面白さ、魅力に浸っている

・それまでの自分の経験を生かしながら目の前の事象に向かっている

・教師や友達、仲間の活動をみて、それをもとに目の前の事象をあらためて見直して、その事象がもつ良さや魅力をとらえている

・教師や友達、仲間とのやりとりを通じてその事象のもつ良さや魅力を確かめたり発見したりしながらとらえている

 また、友達や仲間とともに事象にかかわりながら表現している姿についても、このような姿を見取ることができた。

・友達の動きが見えるときや「一緒にできそう」と思えるとき、友達と同じ場で表現しようとしている

・教材、学習課題を目の前にして感じたことを伝え合うとき、友達が感じたことを聞いて笑顔になり、「同じ」「ちょっと違う」など、自分の思いと比べながら考えを伝えたりする

・ある共通の話題で話をしているとき、自分の経験やそのときに感じたこと、面白かった出来事を自ら相手に伝えている

・目の前の課題に対する友達の意見、考えを聞いたとき、自分の考えや思いとすり合わせしながら、新たな考えを見いだして相手に伝えようとしている

 これらの姿を見取り、実態に応じた指導内容の選択、学習活動の設定に生かしていく。

▽研究の視点

 私たちは社会で生きる〝ことば〟が膨らむ授業づくりを進める上で、これから述べる二つの視点を設定し、実践を進めることとした。

 視点①は、子どもたちと対象とのかかわりを深める支援。小学校図画工作科の実践では、三色の毛糸を思いつくまま完成にとらわれずに、巻き付けたり絡めたりしていく活動を通して、いろいろな表現にふれたり、その面白さを存分に味わえる学習に取り組んだ。

 シンプルな取組方法で「様々な形」がみえてくる活動や、「いろいろなことができそうだ」と感じられる活動を支援として設定した。

 毛糸同士が絡み合っている部分が見え始めてくると、面白さを感じて意図的に毛糸同士を絡めてみようとしたり、もっと面白い形をつくってみようと工夫したりするなど、自分の力で様々な表現が生まれることの面白さを感じて、自らの発想したことをどんどん表現し続ける姿がみられた。

 視点②は、子どもたちが表現した「考えや思い」をつなげるための支援であり、この支援により「社会で生きる〝ことば〟」につながっていく。

 中学校保健体育科の実践では、様々な運動に仲間と取り組むことを通して、「表したい動き」に向かって力の入れ具合や動かし方を調整していく学習に取り組んだ。

 ペアの仲間の腕を持って揺らすなど、相手に直接的に働きかける活動や、仲間と課題に繰り返し取り組み、仲間と表したい動きの意図を出し合いながら取り組むことができる活動を支援として設定した。

 仲間とペアになり、表したい動きの意図を出し合いながら活動を進める中で動きに必要な力加減や動かし方のポイントに目を向けて仲間に伝えたり、相手の意図に目を向けながら自分の動きを調整したりする姿がみられた。この実践を通して、仲間と運動したことで気づいたことを取組に進んで生かそうとする姿を引き出すことができた。

▽今後に向けて

 本年度設定した視点によって、「社会で生きる〝ことば〟」を通して、友達や社会の中で「考えや思い」を表現し続けながら、「ひと・もの・こと」といった対象と豊かにかかわり合いながら活動する子どもたちの姿を引き出すことができた。

 また、今の「自分」が生きている社会が、より「広がっていくだろう」と感じながら、これから生きる、より広い社会へと踏み出そうとする姿も見取ることができた。本年度、友達とのかかわり合いの中で、新たな世界を見いだす楽しさ、面白さを知った子どもたちは、先がはっきりしなくてもその面白さに向かって自ら踏み出そうとすることができると私たちは考えている。

 また、子どもたちの「経験を通して培ってきた力」を生かしながら、「ひと・もの・こと」と豊かにかかわり合う姿も見取ることができた。

 この力は、単に体験した記憶を生かすといったものではなく、何度も試行錯誤しながら対象とかかわり続けようとする姿、より良いものがないかと対象をとらえ直そうとする姿などといった、より良いものを目指そうとしている中で子どもたちが育んできた力と考える。

 この力は今後、「今の自分」から一歩、二歩先の自分により向かおうとするときに大切な力になると考えている。

(学校 2015-11-30付)

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