オホーツク局臨時小学校長会議 学習習慣確立を一層大事に 大妻女子大教授・樺山氏が講演
(道・道教委 2015-12-10付)

臨時校長会議横山氏
オホーツク管内臨時小学校長会議―横山氏講演

 オホーツク教育局が七日に開催した臨時オホーツク管内公立小学校長会議では、大妻女子大学家政学部の樺山敏郎准教授が「全国学力・学習状況調査結果を活用した授業改善の方策」と題して講演した。ここでは、十年近く文部科学省に在籍していた樺山准教授の講演概要を紹介する。

 組織として協働体制を整えることが必要であるということは当然のことだが、「一人の一歩よりみんなの一歩」という言葉がある。北海道全体から考えると、オホーツクの一歩が北海道の一歩になると考えられる。文科省にいた立場からすると、北海道の一歩が全国の一歩につながるという感覚で仕事していた。

 そういったことを踏まえ、なぜ、学校・教員は学習指導や研修体制を改善しなければならないのか。後ろ向きの教員から校長先生方がそう質問されたら、何と答えるか。そこにどんな説得力をもっているか。

 全国学力・学習状況調査(以下、全国調査)は毎年、五十億円ほどかけて実施している。いろいろな方々から、「それだけの価値があるのか」と質問されるなど、費用対効果が常に求められている。なぜ、学力調査をやり続ける必然性があるのかということを、文科省の職員は一生懸命、理論武装して全国の方々にその価値を主張している。

 全国調査というのは、一つの成果をみることができる手段だと思っている。できれば全部の教科でやりたいが、予算の関係上、いわゆる基盤教科といわれる国語と算数と数学、プラス理科で行っている。本当は社会もやりたい、英語は数年後に実施される。

 学力はある意味、トータルで考えなければならないが、予算の都合上、こうなっている。こうした中、義務教育の機会均等という言葉がある。北海道のオホーツクの子どもたちから、沖縄県まで同じように具体的な物差しでみたとき、学習指導要領の指導事項が本当に定着しているかなどを、私たちは丁寧に取り上げながら、その状況を読み取ろうとしている。

 成績は目に見えやすいもの。自由主義・資本主義の競争社会においては、順位は常につきまとう。しかし、ゼロ点の子を十点でも上げようとすることが教育ではないかと思う。

 目に見えるという面において、子どもたちが特にできなかったところ、何でできないのか、などというところを校長先生自身でつぶさに見ていただきたい。

 教頭や学力担当に「分析してください」と言うような校長先生では、組織として動かない気がする。なぜできてないのかを、ともに考えるような組織であってもらいたい。

 全国調査は、五年生の担任だけの責任ではない。一年生や二年生の問題も意図的に出している。五年生の担任になりたくない方が多いと聞いているが、そういうときに校長先生は「そんなの関係ない」と話してもらいたい。「みんなでやっていくんだ、一人の責任にはしない」という気持ちをもっていただきたい。

 高校入試という出口があるので、中学校はこの意識が強い。小学校はやはり手口があいまいなので、「ここまでクリアして中学校に送るのだ」という意識が、小学校は薄いような気がしてならない。

 成長というのは目に見えにくいものだが、児童質問紙調査や学校質問紙調査などをみるとそれが如実に表れる。学力の高い都道府県は、無回答率が少ない。自分の能力を最大限に発揮してチャレンジしようという前向きな姿勢を子どもたちがもっている。こういったところのバランスをとっていただくことが、教育の質を高めることだと思う。

 成果は、成績プラス成長。成長にかかわるような部分をアプローチしていただきたい。道教委でも示されているが、鍛える部分の勉強に加え、自分で考えて自分の課題を自分で解決できる、そういうような発達の課題に応じて、宿題の質を変えていただきたい。

 質をどうやって高めるかというのを考える子どもに育てるには、親との協力は絶対に必要。学び続ける上では、学校だけでは足りない。ずっと見ていただき、大きくは学習習慣の確立や生活習慣の確立で、もっと言えば、学力向上は「人権教育」「進路保障」である。

 何を言いたいかというと、「人の気持ちが分かる人間になりたい」と答える子どもは学力が高い。お互いを認め合って、助け合い、学び合う学級の雰囲気は人権感覚が高い。

 逆に、できる子どもたちが、活躍する授業ではダメ。私は、よく、三分の一の授業という言葉を使う。全国各地の授業を拝見するが、教師の質問に対して手を挙げる子が三分の一、分かるけれど手を挙げない子が三分の一、本当に分からない子が三分の一。そういう授業では、子どもたちがお互いに良いところがあるなんて思わない。

 教科等の授業の中で、道徳をすること。授業の中で生徒指導、学習習慣の確立をさらに大事にしてほしい。子どもの学力が高まっていき、授業の満足度などが上がっていく。こういうことを、学力を高めることと同時に考えていかなければならない。保護者・地域住民にとって行かせたい学校、職員がこの学校で良かったと思える学校を、管理職として目指してほしい。

 学力向上は永遠の課題。特効薬も即効薬もない。オホーツク管内の学校、それぞれの職員にとって、様々な課題がある。課題のPDCAサイクルを回すか回さないかということが、大きな問題。課題があるのに、みんなが知らんぷりしたらそのままになってしまう。

 ここ九年間ずっと、「教科書を教えるのではなく、教科書で教える」を念頭に、文科省で問題を作り続けてきた。学習指導要領を踏まえ、話す力・聞く力とは何かを考えて問題をつくっている。教科書に載っていないのではなく、能力自体は教えていなければならないものしかない。

 過去問と言っても良いが、その印象が良くない。過去問といえば、傾向と対策ととらえられる。後ろ向きの教員から、「なぜ、やるのか。点数なのか」などと聞かれたら、きょうから校長先生方は「問題は教材だ」と答えてもらいたい。

 私たちは、テストとは思っていない。現場への具体的なメッセージとして、一つの教科書教材をつくっているイメージ。それを、実際の授業で使ってほしいと思っている。どの学年もいつでも使えるわけではない。どの学年のどの教材とマッチングしているのかを、考えていただきたい。

 早稲田大学と文科省で、実際に多面的にアプローチをかけて、なぜ福井県や秋田県が学力が高いのかを、数年前にリサーチしたことがある。

 教員の授業力が向上していくことが大事だという大きなコンセンサスを前提にとして、その授業力を上げるために、行政がよく旗を振ってくれているということが分かった。できる範囲で予算配分をし、研修を実施する体制がうまく動いている。

 現場だけでは、分からないことがある。形は分かるが、何が大事か分からないことがある。このため、外部の組織や団体の積極的な働きかけと研究活動の推進、校長のOBの方々が足しげく通って授業を見ることが大切になってくる。

 福井県・秋田県の児童生徒の学力の高さは、教育委員会や教員の取組に独自性があるというよりも、各学校における教員が協力し合って、より良い授業を求めて研究し、効果が上がるまで徹底的に実践しているものと考えられる。

 ある秋田県の校長先生は、「個に応じる指導というが、個に応じるということではなく、個に徹する」と話していた。「個に応じることはどの学校もやっている。できるだけ分かるような授業をしようとしている。でも、個に徹する」と。簡単に言えば、落ちこぼしを出さないということだそうです。

 それは、小学校一年生から実は始まっている。昨今では、小学校といっても雪だるまのように課題が山積している。なので、一年生から、ある程度の勉強時間の確保など、発達に応じたことを実施されている。

 一方で、両県にも課題はある。秋田県は大学進学が思うように伸びない。福井県では不登校率が増加している。学力の問題というのは、様々なな視点から考えなければならないということを教えられる。

(道・道教委 2015-12-10付)

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