4種校長会長28年新春インタビュー②北海道小学校長会会長・小西俊之氏 学びの力を一人ひとりに 豊かな心の育成、一層の充実を
(関係団体 2016-01-14付)

校長会インタ小西俊之
北海道小学校長会・小西俊之会長

 ―校長会としての新年展望についてお聞かせ下さい。

 早いもので二十七年度も新たな年を迎え、本会の活動も二月の理事研修会などを残すばかりとなりました。本年度は、本会の歴史と伝統を受け継ぎ、「連携し、前進する道中」をスローガンに掲げ、全道二十地区の校長会、六百四人の会員が総力を結集し、校長としての職能向上および北海道中学校教育の振興に努めてまいりました。あらためて、全道各地の会員の皆さんの尽力に感謝いたしますとともに、本会の活動に協力いただいております道教委をはじめ教育関係機関、教育関係団体の皆さんに心より感謝申し上げます。

 さて、学習指導要領全面実施から四年がたとうとしています。現行学習指導要領は、それまで揺れ動いてきたゆとり教育か詰め込み教育かという二者対立の弊害を乗り越え、教科等を横断する「言語活動」をキーワードにして、習得・活用・探究というプロセスをバランスよく学習活動に取り入れていくことにポイントが置かれました。

 各学校においては、「生きる力」の育成を念頭に、特色ある教育課程の編成・実施・改善・評価に努める中、今まさに言語活動を取り入れた授業を工夫・実践しながら、学力の育成に取り組んでいる真最中であろうと思います。

 そんな中、中央教育審議会から次期学習指導要領改訂に向けた方向性が示され、「アクティブ・ラーニング」や「カリキュラム・マネジメント」などのキーワードも出てきました。気になる言葉でありますが、どちらも優れた学校ではすでに行われているとの話で、特に「アクティブ・ラーニング」は指導法など特定の型の問題ではなく、教室の生徒一人ひとりが自分なりに授業に関心をもってものを考えていく状態をつくっていくことであるという説明も聞いています。

 次期学習指導要領改定の動きを注視しながらも、現行学習指導要領に基づき、学びの力を子どもたち一人ひとりに育成するよう努めることが、今は大切であると考えます。

 学力と両輪をなす豊かな心の育成についても、より一層の指導の充実が求められていることは言うまでもありません。特に、全国共通の喫緊の課題となっているいじめや不登校への対応、命を大切にする指導の充実については、本会としてもより一層の危機感をもって取り組んでいかなければならないと考えております。加えて、価値観の多様化、情報化社会やグローバル化の急速な進展など大きく変容していく社会の中で成長している中学生にとって、人間尊重の精神や健全な自尊感情、社会貢献できる力を養うことは極めて重要であり、その基盤となる道徳教育が豊かな心を育む鍵になっていると考えます。

 昨年の学習指導要領の一部改訂によって、中学校では三十一年度から道徳が特別な教科になることが決まり、先行実施も可能となりました。各校は「考え、議論する」道徳科の推進に向け、質的転換を積極的に進めていかなければならないと考えます。

 ―校長会の抱える課題と対策について伺います。

 学力向上に向けた各校の取組では、「言語活動」を授業に取り入れる検討や研修等を行っている学校が引き続き高い割合を占めており、学習指導要領に基づいた取組が、今各校で進められているところと思われます。また、本年度は習得・活用・探究というプロセスをバランスよく学習活動に取り入れるための研修等を進める学校が大幅に増加しました。同時に、確かな学力の定着に向けた手立ての検討や評価・評定に関する研修を進めている学校も引き続き微増しています。

 今後も学習指導要領に基づいた「生きる力」を育む学力観に立ち、教育課程の全体計画のさらなる工夫と充実に努めることが大切であると考えます。

 本年度の全国学力・学習状況調査の調査結果のポイントをみると、すべての教科で全国平均以上という目標には残念ながら届かなかったものの、昨年度に引き続き多くの教科で改善の傾向がみられ、本道の子どもたちの学力が確実に伸びてきていることが分かってきました。

 また、本年度の中学三年生を三年前の小学六年生のときと比べると、大きく改善していることも分かりました。確かな学びに向けた学校・家庭・地域の連携が、行政の協力のもとで効果を上げつつあると考えます。各校においては、道教委が行うチャレンジテストを活用し、教員による補習を放課後や土曜日、長期休業中などに時間を生み出して行っていることが、本会のアンケートから分かります。

 また、個に応じたきめ細かな学習指導では、加配の活用は微増しているものの、いまだ六割であり、財政との綱引きで学校の要望が必ずしも満たされない厳しい現状がありますので、三十五人学級の継続・拡大とともに、オール北海道のつながりを大切にして引き続き要望していこうと思います。

 つぎに、いじめや不登校への対応ですが、近年はますます大きな社会問題としてとらえられてきており、各学校においては、これまで以上に危機感をもって生徒の状況を把握し、予防の観点から誰もが居場所のあるいじめを生まない学校づくりに努めなければなりません。各校では、「いじめ防止基本方針」に基づいた取組を行っているところですが、その形骸化を指摘する声も挙がっており、検証と改善の取組が求められています。

 昨年十一月に仙台市で行われた「いじめ防止等に関する普及啓発協議会」では、いじめの認知件数に大きな都道府県格差がみられることが指摘され、軽微ととらえがちな行為を見逃さない報告体制や積極的な認知努力があらためて確認されました。

 本会としても、いじめ・不登校への効果的な対応について情報共有を図っていこうと思います。また、その一つとしてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの拡充を要望していこうと思います。

 子どもたちの心の育成は、当然のことですが学校だけではできません。子どもたちの健全な生活習慣づくり、子どもたちを守る社会の構築に向け、今後も関係機関や関係団体との連携を深めていきたいと思います。

 ほかにも、教育諸課題の対応に向けた教育環境整備や行政との連携のこと、信頼される学校づくりに向けた教職員の資質向上・危機管理・服務規律の確保のこと、子どもと向き合う時間の確保や教職員の時間外勤務縮減のことなど、取り組むべきことは山積しておりますが、一つ一つ丁寧に進めていこうと思います。

◆子の成長につながる研究推進

 ―新年度の重点的取組についてお聞かせ下さい。

 新年度も、これまで取り組んできた五つの重点に沿って活動を進めていくことになると思いますが、中でも以下の三点が中心になると考えます。

 一つ目は、本会研究活動の充実です。四ヵ年継続研究のまとめの年となった本年度の桧山・江差大会の成果と課題を受け継ぎ、新年度は新たな四ヵ年継続研究がスタートします。

 中学校教育の現状と将来の日本社会を見据え、研究主題を「社会を生き抜く力を身につけ、未来を切り拓く日本人を育てる中学校教育」とし、この秋に上川・旭川大会を開催します。

 主管していただく上川管内校長会の皆さんには、大会の成功に向けた尽力をお願いいたします。また、道教委をはじめ関係機関・関係団体の皆さんの協力をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本会の研究大会は、地区校長会がこれまで蓄積してきた実践研究をもとに、参加者が分科会においてグループ討議を行うなど、あすの学校経営に資する研究大会として高い評価をいただいております。今後もこの流れを大切にし、子どもたちの成長につながる研究を推進していきたいと思います。

 つぎに、各種要請・要望活動についてです。これは道小学校長会とこれまで同様に緊密な連携をとる中で、各地区が抱えている諸課題や要望を丁寧に把握し、全国・全道の教育情勢を参考にしながら進めていきます。特に、教育委員会とは適切なパートナーシップに基づく双方向の関係性を大切にし、これまで同様に適度な緊張感をもって、「言うべきことは言う」という姿勢を大事にしていきたいと思います。

 その意味で、毎年夏に開催していただいている道教委との文教施策懇談会・各課懇談会は各地区の実情を伝える大切な場となっていますので、よろしくお願いいたします。

 三つ目は、今後の組織運営に関する検討についてです。学校の統廃合による会員数の減少、および二十九年度の政令指定都市税源移譲にかかる組織の在るべき方向性を特別委員会で検討してきました。経費縮減対策や事務局体制の見直し等の本年度の確認をもとに、新年度はより具体的に検討を進めることになりますが、今後も本道中学校教育振興の中心的役割を担う職能団体として使命感をもって取り組んでいきます。

 また、地区においては小中合同の校長会となっていることを鑑み、道小との関係についても検討したいと思います。

(関係団体 2016-01-14付)

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