推進状況の評価の在り方 第12期道生涯学習審議会まとめ
(道・道教委 2016-05-02付)

 第十二期道生涯学習審議会がまとめた「今後の本道における生涯学習推進状況の評価の在り方について(審議のまとめ)」の概要はつぎのとおり。

▼審議テーマについて

 道では、二十七年二月、急速に進む人口減少などの諸課題へ、適切に対応できる人づくりや地域づくりに向けた生涯学習についての基本的な考え方として「第三次北海道生涯学習推進基本構想」(以下「三次構想」)を策定しており、今後、これに基づく取組の着実な展開が期待される。

 この三次構想は、具体的な施策や事業を進める際の方向性や必要性を示す「基本的理念」であることから、政策や施策の目標と成果(達成度)を検証するための目標指標を設定した行政計画とは性格が異なるものの、本構想を踏まえた取組が、市町村や教育機関をはじめ、関係団体や民間事業者・NPOなど多様な主体によって積極的に展開されるためには、道が、各地域の生涯学習の現状や道民の意識、施策の推進状況等を的確に把握した上で、効果的な働きかけや支援を行うことが必要である。

 また、二十六年度における三次構想の基本的な方向性にかかる審議においては、「道民に対して北海道が目指す生涯学習社会像を分かりやすく示すことが必要」「人口減少や子どもたちを巡る課題など諸課題を抱える中、取組の優先性を示すことが必要」との論点のほか、「三次構想がどのように生かされているかを評価することが必要」との議論もあった。

 このため、道民の学習実態や要望の把握はもとより、道の生涯学習関連施策や各主体による取組の分析・検証など、生涯学習の推進状況にかかる評価の在り方について、さらに議論を深め、本道が目指す生涯学習社会の姿の実現に向けた着実な前進に貢献するため、「今後の本道における生涯学習推進状況の評価の在り方について」を審議テーマとして設定するものである。

▼本道における生涯学習推進状況の評価にかかる現状と課題

 行政における評価は、施策の改善・充実につなげることや、必要性や優先度、効率化の視点から、限られた行財政資源を効果的に配分すること、さらには、住民に対する説明責任を果たすことなどを目的とするが、ともすると、評価の手順や様式が複雑になり、結果の集約で終始するなど、評価を行うこと自体が目的化されている、といった状況も見受けられる。

 三次構想の具現化に向けては、こうした評価の目的や意義を再確認し、評価の在り方を検討することが必要である。

▽現状

 これまでの第二次北海道生涯学習推進基本構想下における評価は、つぎのように、道や市町村における施策についての現状や実態、道民の総体的な意識や要望の把握などについて、自己点検的に行われてきた。

 これらの結果は、道の施策・事業の立案や改善・充実に反映させるとともに、毎年、Web上で公表し、市町村の生涯学習推進計画や社会教育計画等の策定をはじめ、学習機会の提供や施設・設備の整備に当たっての活用はもとより、三次構想の策定時における基礎データとして一定の役割を果たしてきた。

▽課題

 一方、学習ニーズの多様化に加え、地域課題への対応の必要性や緊急性が高まる中、これまでの評価の在り方については、つぎのような課題を指摘することができる。

・三次構想が掲げる理念の共有状況等の把握と分析・検証

 道が、より効果的な施策を展開するためには、三次構想で示している、生きがいづくりや自己実現を目指す生涯学習から、学習成果を地域づくりや子どもたちのために生かす生涯学習へ重点を移していく観点から、地域で実践されている取組の状況や、課題解決を担う人材の育成状況などについて、学習の主体である道民はもとより、学習機会を提供する多様な主体に、どの程度共有され、生かされているかを把握し、分析・検証することが必要である。

・道民の意識や活動状況の多面的な把握と分析、検証

 財政状況など様々な制約が多くなる状況下においては、住民の学びに対する資源投入の効率性が求められることから、行政が提供する学習機会や支援方法などの生涯学習振興施策と地域住民が望むこととの間にある微妙なズレや隔たりを把握するとともに、地域を構成する多様な立場の人々の顕在的・潜在的な学習ニーズや生涯学習の取組状況を把握するなど、道民の意識や活動状況を多面的に把握し、分析・検証することが必要である。

・成果の観点からの評価

 これまでの構想は、その性格上、評価指標や達成期限を設定していないものの、道の各部の施策について、例えば、学級・講座等であれば、予算や講師等の資源を投入した量に対し、年間の開催講座数や受講者数などによって評価してきており、学習成果を地域づくりに生かす観点から評価を行うためには、これらに加え、学習活動が地域づくりや子どもたちの成長のために、どのような成果や影響をもたらしたかなど、成果の観点での評価が必要である。

▼今後の評価の方向性

 三次構想が示している本道が目指す生涯学習社会の姿の実現に向け、どの程度前進しているのかを評価するに当たっては、これまでと同様、生涯学習推進状況に関する基礎データを蓄積し、分析する必要がある一方、先の課題等を踏まえ、三次構想の三つの「重要な視点」に基づく取組の状況や成果を把握するため、つぎのような観点で評価の在り方を検討することが必要である。

▽構想の理念の共有状況等の評価に向けて

①学びを生かす仕組みの広がりの状況の把握

 学んだ成果を地域づくりや子どもたちのために生かす取組を促進するため、居住地域の生活実態に基づく課題の解決や改善に向けた実践事例や、住民の主体的な活動を支援するための仕組みなどに関する実践事例を把握すること。

 なお、学びを生かす仕組みを改善し一層広げていくため、事例の収集に当たっては、先駆的な活動はもとより、草の根の活動、発展途中で課題を抱えている活動などを併せて把握すること。

〈取組例〉

・課題の解決や改善に向けた実践事例の、地域特性別の分析

・住民と行政との協働による地域づくりに関する実践事例の把握 

②求められる人材像の把握

 主体的な地域づくりを担う人材として求められる知識・技能、人柄や人間性などを明らかにするとともに、その育成状況や活動の実態を把握すること。

〈取組例〉

・地域課題の解決や改善に向け、住民が求めている人材像の把握と分析・検証

・地域課題の解決や改善に向けた実践事例おいて、中核的に活躍する方々を対象とする聞き取り

▽道民の意識や活動状況の多面的な評価に向けて

①多様な立場にある道民の意識や活動状況の把握

 積極的に学習を行っている道民の地域課題に関する意識、学習成果の活用状況や課題等はもとより、地域課題の解決に向けて活動する民間団体の意識や課題等についても把握、分析・検証すること。

〈取組例〉

・住民の多様な求めと行政が提供する学習機会との適合状況の把握

・地域に密着して活動するボランティア団体・NPO等への聞き取り

・道民カレッジ受講生の意識の把握と分析・検証

②子どもたちや女性の意識や実態の把握

 地域の持続的な発展に向けた地域活動を促進するためには、学習の実践者であり、次代の地域づくりの主体である子どもたちの意識や実態を把握、分析・検証するとともに、男女平等参画を推進する視点から、女性の意識や実態についても把握、分析・検証すること。

〈取組例〉

・国や独立行政法人などの調査データの活用による、子どもたちの意識や活動状況、子どもたちを取り巻く環境の実態などの把握

・男女の雇用や育児参加などにかかわる意識や実態に関する統計データの活用

▽成果の観点からの評価に向けて

①評価に関する枠組みの再構成

 成果の評価に当たっては、生涯学習推進の総合的な評価の枠組みを再構成すること。

 そのため、すでに行われている様々な統計データを活用して、経年変化の分析・検証をすることに加え、長期的・短期的な視点や中間的・最終的な成果を適切に組み合わせて評価すること、さらには、客観性を担保しつつ、統計データに現れない住民の心情や地域の小さな変化なども併せて把握し、定性的な評価を行うことによって、定量的な評価を補完すること。

〈取組例〉

・道総合計画や各種個別計画における評価指標の活用

・書面による調査では把握することができない地域の実態を把握するための聞き取り

・国や他府県の諸調査と比較可能な調査項目の設定

②相乗効果や波及効果の把握

 成果の評価は、学習者の知識・技術の習得や意識の変化など、直接的な成果をつかむことに加え、住民の学習活動や学習成果を生かした行動がどの程度地域の変容に向けて作用しているかを探るため、地域づくりの実践者や地域課題の当事者などが取組にかかわることによる相乗効果、他の分野・領域や他地域へどのような効果をもたらしたかという波及効果などの把握も検討すること。

〈取組例〉

・子どもの貧困、高齢者や子育て中の母親などの孤立等の社会的な課題に関する統計データによる成果の傾向の把握

▽効果的な評価に向けたその他の観点

①外部評価(第三者評価)の導入

 現在の自己点検的な内部評価では、専門性や客観性、透明性、厳格性を担保することは難しいことから、定性的な評価の観点からも、生涯学習審議会等を活用した外部評価(第三者評価)の導入を検討すること。

②生涯学習推進センターの機能の発揮

 先駆事例の収集や評価方法の検討と評価の実施、評価結果を生かした施策の企画・推進等については、道立生涯学習推進センターの有する調査・研究や指導者の養成・研修等の機能を十分に活用すること。

③教育局によるきめ細かな市町村支援

 各教育局管内における市町村の生涯学習・社会教育担当者の研修会・会議等、様々な機会を通して、三次構想を継続的に周知するとともに、構想の趣旨を踏まえた生涯学習・社会教育の推進にかかわる計画づくりを支援すること。

▼本道の生涯学習の着実な推進のために

 生涯学習の成果の活用については、国の生涯学習審議会の答申「学習の成果を幅広く生かす―生涯学習の成果を生かすための方策について」(十一年六月)の中ですでにその必要性が指摘されているものの、学習で得た知識や技能をまちづくりに生かしている道民の割合は伸び悩んでいる。

 現在、この答申が取りまとめられた当時以上に、人口減少や少子高齢化などの課題への迅速な対応が求められており、生涯学習が地域住民主体による課題解決に貢献する役割を担っていくことができるよう、三次構想を具現化していかなければならない。

 第十二期道生涯学習審議会としては、道は、この「審議のまとめ」を踏まえ、三次構想下における本道の生涯学習の推進状況を適切に評価し、その成果に基づき、道や市町村をはじめ、生涯学習の推進を担う多様な主体において、それぞれの役割に応じた的確な対応策が講じられることを期待する。

(道・道教委 2016-05-02付)

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