生徒指導連絡協議会 いじめの定義、共通理解を 文科省・平居氏が行政説明(道・道教委 2016-05-02付)
説明する平居氏
道教委の二十八年度第一回全道生徒指導連絡協議会(四月二十六日、道庁赤れんが庁舎)では、文部科学省初等中等教育局児童生徒課生徒指導室長の平居秀一氏=写真=が行政説明を行った。現状におけるいじめの定義を共通理解するよう求め、「いじめを減らす定量的目標より、〝いじめを許さない〟など取組姿勢を示して」「〝学校いじめ防止基本方針〟〝いじめ対策組織〟に魂を入れてほしい」と要望。いじめの認知が確実に行われるよう求めた。
いじめ防止対策推進法が二十五年九月に施行されたものの、学校現場における対応が十分とは言えないことを踏まえ、文科省では、的確な対応を徹底してもらうため、二十八年四月から都道府県および指定都市ごとに市町村教委担当者や学校管理職を対象とした行政説明を行うこととした。
本道では、各教育局を通して、学校に周知していく。
平居氏は、いじめの認知について、世間の注目を集めたいじめ自殺事案の発生直後に急増し、以降は減っていくこと、都道府県の格差が大きいことを指摘し、「認知件数の多寡は、教員の感度に左右されているのではないか」「いじめの認知を初期段階のものも含めて定義どおりに行うことができている地域と、そうでない地域があるのではないか」と疑問を投げかけた。
さらに、平成十七年度以前と十八年度以降、いじめ防止対策推進法の定義の違いについてふれ、「いまだに旧来の狭い定義が染みついている先生がいるのではないか」と問題提起。「法律上のいじめの概念は広範であり、事案については法律に則った組織的対応をしなければいけない」と訴え、これを怠ると賠償責任を負うことになることを説明した。
同級生とのトラブルの積み重ねが自殺につながった事例を挙げ、「我々はこうしたことの積み重ねで死を選ぶ子どもがいる事実を直視すべき」「どうすれば組織的対応を現実にこなせるかをしっかり考えてほしい」と各校の創意工夫に期待を寄せた。
また、学校では「学力向上や部活の成績向上で手一杯。いじめ全件への組織的対応はとても無理」という声があることにもふれ、「子どもたちの命を守り、安全・安心な学校生活を実現できる学校でなくては、子どもたちの個性や能力を伸ばすことはできない」と呼びかけた。
平居氏は、法律上のいじめの定義として、①行為をしたものと行為の対象となったものが児童生徒②二人の間に一定の人間関係が存在すること③心理的または物理的な影響を与える行為をしたこと④当該行為の対象となった子どもが心身の苦痛を感じていること―を提示。「力の差」「継続的」「意図的」「深刻」という要素は含まれていないことをポイントに挙げた。
また、いじめに関する保護者の認識の差が大きいことも指摘し、「うちの子の行為は、遊び半分でやっただけ。そんなものをいじめとして扱っては困る」というタイプの親が多いことを報告。「的確な対応をするためにいじめの定義に関して正確に理解させるべき」と述べた。
アンケート調査は、いじめを早期発見するための有効な手段として確立している一方、「いじめのない学校」「いじめゼロ」という表現のリスクを認識するよう要望。「文科省では、いじめの認知件数が多い学校について、〝いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取組のスタートラインに立っている〟と極めて肯定的に評価する」と、いじめを減らす定量的目標を示すより、「いじめを許さない」など取組姿勢を示す大切さを挙げた。
いじめ防止対策推進法については、「学校基本方針」「いじめ対策組織」が十分に機能していない学校があることを話し、「〝学校いじめ防止基本方針〟〝いじめ対策組織〟に魂を入れてほしい。教職員一人ひとりが法律や基本方針に基づいて事案に対処すべき」と訴えた。
特に、「多くの悲惨な事案で、担任等による〝抱え込み〟が事後的に発覚することを真に教訓として」と強調し、熱心な先生ほど抱え込むこと、「いじめのない学校」の達成目標が掲げられている方がリスクが高まることを事例に挙げた。
このほか、「重大事態」が発生したにもかかわらず地方公共団体の長への報告、調査組織を設けた調査を行わなかったことが発覚し、大きな問題となるケースがあることを憂慮。具体例を挙げながら、重大事態には、①いじめによって児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある事態②いじめによって児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある事態―の二種類があることを示した。
二種類とも「疑いがある」事態と定義されていることから、いじめの行為と自殺や不登校の間に因果関係の存在が疑われれば、「重大事態」であることを強調。「重大事態はいつ起きるか分からない。重大事態の調査組織となり得る教育委員会の附属機関を設置するための条例の制定を検討してほしい」と呼びかけた。
(道・道教委 2016-05-02付)
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