十勝管内28年度教育推進の重点―高・特校長会議 強い意志と覚悟もって 具体的取組を組織的に推進(道・道教委 2016-05-06付)
教育推進の重点を説明した校長会議
【帯広発】十勝教育局は四月二十二日、十勝合同庁舎で二十八年度管内公立高校長・特別支援学校長会議を開催した=写真=。竹林亨局長が本年度の管内教育推進の重点を説明。教育推進の重点に、①学力の向上②豊かな心と健やかな体の育成③信頼される学校づくり④十勝らしい一人ひとりの学びの実現―の四点を示し、具体的な取組を組織的に進め、自校の学校経営につなげるよう呼びかけた。
管内教育推進の概要はつぎのとおり。
【国・道の教育施策の動向】
本道においては、人口の減少が全国を上回るペースで進行しており、少子高齢化に加え、グローバル化の進展や情報通信技術の発達などによる社会の変化への対応など、多くの課題に直面している。
こうした課題の解決に当たっては、ふるさとに誇りをもち、地域の発展に主体的に貢献できる人材を育成することが教育に求められている。
このような中、国においては、次期学習指導要領の改訂に向けた動きが具体化している。
その中で、学校教育の核となる教育課程においては、教育が普遍的に目指す根幹を堅持しつつ、社会とのつながりを大切にする「社会に開かれた教育課程」の実現が期待されている。
「自立」と「共生」という北海道教育の理念を踏まえた「北海道教育推進計画」も、成果の検証の時期となる最後の二年となった。
教育局としては、国や道の動向を踏まえながら、今後も管内教育推進の二つの基本的な考え方である、①確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和のとれた育成②家庭や地域の協力を得た十勝らしい教育の充実―を大きな柱として、校長先生方との連携を一層深め、教育施策を推進していく。
【管内教育推進の重点】
▼学力の向上
公教育を担う学校には、児童生徒に、社会で生きる力の中核をなす「確かな学力」を確実に身に付けさせるなど、全国同一水準の教育の質を保証する責任が求められている。
各学校においては、これまでも学科の特色や児童生徒の実態に応じて、学力向上の取組を進めていただいており、取組の成果が着実に表れてきている。
「学力の向上」について、特に取り組んでいただきたいことを三点申し上げる。
一点目は、「検証改善サイクルに基づく授業改善」である。
昨年度は、道立高校はもとより市町立高校においても、「道高校学力向上推進事業」における学力テストおよび学習状況等調査を実施していただき、自校の経年分析を行うなど、学習指導の改善に取り組みいただいた。
今後、一層の充実を図るためには、検証改善サイクルに基づいた授業改善の取組を組織的に行う必要がある。
そのため、校長には、学力テストや学習状況等調査の分析結果を活用し、個に応じた指導の徹底、授業評価を活用した授業改善など、組織的な学力向上の取組に努めるとともに、家庭と連携した学習習慣の確立に引き続き取り組むよう求める。
二点目は、「言語活動の充実による思考力、判断力、表現力等の育成」である。
このことについては、現在、行われている次期学習指導要領の改訂においても、学びの量とともに、学びの質や深まりに焦点を当てた、いわゆるアクティブ・ラーニングについての検討がなされているところであり、今後も、児童生徒が主体的・協働的に課題を解決する学習活動の充実を図る必要がある。
そのため、校長には、問題解決的な学習や協働的な学びを一層推進するとともに、ICT機器を活用した指導方法の工夫・改善などに引き続き取り組むよう求める。
三点目は、「学びの連続性を踏まえた校種間の円滑な接続」である。
各学校においては、これまでも、学びの連続性を大切にし、児童生徒の交流や教員相互の授業交流などに取り組みいただいている。
これからの時代に求められる資質や能力を児童生徒に育むためには、学校段階ごとの特徴を踏まえつつ、「義務教育を終える時に身に付けておくべき力は何か」「十八歳の段階で身に付けておくべき力は何か」をそれぞれの学校段階に留まらず共有していく必要がある。
そのため、校長には、異校種間との連携、指導方法の交流、合同研修会の開催などに引き続き取り組むよう求める。
教育局としては、学力の向上に向けて、「道高校学力向上実践事業」や「教育課程研究指定校事業」などを通して、各学校の取組を支援していく。
▼豊かな心と健やかな体の育成
児童生徒が、社会の一員として、より良く生きていくためには、確かな学力を身に付けさせることはもとより、規範意識や社会性、思いやりの心とともに、生きる力の重要な源である健やかな体を育成することが求められている。
このことについて、特に取り組んでいただきたいことを三点申し上げる。
一点目は、「家庭・地域と一体となった道徳教育の充実」である。
昨年度、各学校においては、道徳教育の全体計画を作成し、全教職員が、組織的に道徳教育を進めていただいた。
今後、道徳教育を一層充実させ、児童生徒に豊かな心を育成するためには、各教科・科目や総合的な学習の時間、特別活動における指導方法を工夫するとともに、学校の取組を家庭や地域に積極的に発信するなどの取組をさらに推進する必要がある。
そのため、校長には、地域の教育力を活用した道徳教育の推進、保護者・地域への公開などに取り組むよう求める。
二点目は、「いじめや不登校の未然防止、早期発見・早期解消」である。
昨年度、各学校においては、「いじめ防止基本方針」に基づくいじめの未然防止等に努めていただくとともに、生徒会等が中心となった「携帯電話の使用にかかるルールづくり」に取り組んでいただいた。
一方では、依然としていじめを受けて苦しんだり、悩んだりしている児童生徒や情報通信機器の普及によるネットトラブルやネットいじめなども課題として指摘されている。
児童生徒にとって、学校は、何よりも自分の個性を発揮し、安心できる場でなければならない。
そのため、校長には、「いじめ未然防止モデルプログラム」を活用し、望ましい人間関係を醸成する学校経営・学級経営に努めていただくとともに、学校の「いじめ防止基本方針」に基づく家庭・学校・地域が一体となった組織的な取組や、ネットトラブルから児童生徒を守るための情報モラル教育の一層の充実をお願いする。
また、道教委では、新学期を迎えた四月に、知事と連名で、いじめ根絶に向けたメッセージを全道の子どもたちや保護者、地域の皆さん、教育関係者に発している。
各学校においては、その意を用いていただくようお願いする。
教育局としては、「道徳教育推進校事業」や「人権教育研究推進事業」の成果の普及に努めるとともに、「管内地域いじめ問題対策連絡協議会」や「管内生徒指導研究協議会」の充実を図っていく。
三点目は、「心身の健やかな成長を促す教育の充実」である。
昨年度、各学校においては、新体力テストを実施するなど、体力向上の取組を進めていただいたところである。
しかしながら、本道の全日制の高校二年生を対象に昨年度実施した「道立高校および道立中等教育学校後期課程体力・運動能力調査」の結果によると、男女とも、すべての種目および体力合計点が全国調査の平均を下回っている状況にある。
そのため、校長には、すべての学年で新体力テストを実施するなどして、体力の状況を把握するとともに、組織的な体力向上の取組に努めるよう求める。
教育局としても、「運動部活動指導の工夫・改善支援事業」を実施するなど各学校の取組を支援していく。
▼信頼される学校づくり
学校が保護者や地域社会から信頼されるためには、教育の質を保証することが重要であるが、学校が信頼感を高めていくには、何よりも教職員への信頼が基盤となることから、教職員には、教育公務員としての高い意識が求められている。
「信頼される学校づくり」について、特に取り組んでいただきたいことを三点申し上げる。
一点目は、「学校運営の組織的・継続的な改善を図る学校評価の工夫」である。
昨年度、各学校においては、評価指標および数値目標を設定した学校改善を推進していただいた。
学校が家庭や地域社会の付託に応えるためには、学校の教育目標の達成に向け、課題がどの程度解決したか、解決に向けた取組がどの程度進んでいるかなど、短いスパンで学校評価を実施するなどして、学校経営を不断に見直し、学校改善を図っていくことや、学校評価の結果を分かりやすく保護者や地域社会へ説明する必要がある。
そのため、校長には、マネジメントサイクルに基づく複数回の学校評価の実施と公表の工夫に取り組むよう求める。
二点目は、「服務規律の保持・徹底」である。
教職員の服務規律の保持については、これまでも機会あるごとに、指導をしていただいているが、児童生徒の手本となるべき教職員の不祥事は、児童生徒はもとより、保護者、地域の方々からの信頼を一瞬にして失うものであり、学校が信頼を回復するためには、多くの時間と労力が必要となる。
そのため、校長には、すべての学校で不祥事防止にかかる職場研修を実施するとともに、教職員が主体となる不祥事未然防止の取組をより一層推進するよう求める。
また、ことし七月に参議院議員通常選挙が実施される予定であることから、選挙権年齢の引き下げに社会的に関心が高まっており、各学校には、政治的中立を確保することが求められている。
そのため、校長には、教員が、公正中立な立場を保つことについて引き続き取り組んでいただくよう求める。
三点目は、「人材育成を進める取組の充実」である。
信頼される学校づくりに向けては、教職員一人ひとりの果たす役割が大きいことから、資質や能力の向上に向けた継続的な取組が必要である。
また、今後の本道教育の発展を考える上で、将来、学校経営に携わる有為な人材を育成することは大きな課題である。
そのため、校長には、中堅教員に学校運営の中核的な役割を担わせることや、各種研修会へ積極的に派遣することなど、スクールリーダーの輩出や校内体制を強化する取組をこれまで以上に推進するよう求める。
教育局としては、引き続き「コンプライアンス確立会議」を開催するなど、不祥事の未然防止に危機感をもって取り組んでいく。
▼十勝らしい一人ひとりの学びの実現
児童生徒一人ひとりの健やかな成長を促すためには、十勝らしい学びを地域総ぐるみで実現することが求められている。
「十勝らしい一人ひとりの学びの実現」について、特に、取り組んでいただきたいことを三点申し上げる。
一点目は、「新しい時代を切り拓く力を身に付けさせる」である。このことについて、二項目、申し上げる。
はじめに、「今日的な教育課題に対応する取組の充実」である。
各学校においては、これまでも、児童生徒が社会的・職業的自立に必要な態度や能力を身に付け、人生を切り拓いていくことができるよう系統性のあるキャリア教育を推進するとともに、ふるさと教育の充実に取り組みいただいている。
将来の変化を予測することが困難な時代にあって、児童生徒が将来自立して生きていくことができるようにするためには、時代を見据え、新しい時代に必要な資質や能力を身に付けさせる必要がある。
校長には、本年度も引き続き、一人ひとりの社会的・職業的自立に向けたキャリア教育の充実と家庭や地域と連携・協力したインターンシップに取り組むよう求める。
教育局としては、管内キャリア教育推進協議会が主催する「未来創造授業」を引き続き実施するとともに、「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」など指定事業の成果の普及に努めるなどして、各学校の取組を支援していく。
つぎに、「子どものニーズに応じた特別支援教育の推進」である。
各学校においては、これまでも、関係機関と連携を図り、個々の児童生徒の困り感に寄り添ったきめ細かな指導や支援に取り組んでいただいている。
ことし四月の「障害者差別解消法」の施行に伴い、障がいのある子ども一人ひとりが安心して学校生活を送り、可能性を最大限伸ばしていくことができるよう、指導や支援の充実を図ることがますます大切になっており、今後は、子どものニーズに応じた早期からの相談・支援の体制整備が一層必要である。
そのため、校長には、「個別の指導計画」および「個別の教育支援計画」を活用した一貫した支援を行うとともに、「校内研修プログラム」や実践事例集を活用した取組を推進し、教職員の指導力の向上を図っていくよう求める。
また、特別支援学校においては、センター的機能を一層発揮するため、校内の協力体制の充実を図るとともに、個別の教育支援計画および個別の指導計画の作成に関する留意点や活用の在り方について、小・中・高校へのサポートを引き続きお願いする。
教育局としては、特別支援教育にかかる相談体制の充実や各種研修会の充実に努めるとともに、「高校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育」など指定事業の取組や、「管内特別支援連携協議会」の成果の普及に努めるなどして、各学校の取組を支援していく。
二点目は、「家庭や地域の教育力を一層高める」である。
児童生徒の健やかな成長を支えるためには、地域ぐるみで児童生徒を守り育てることが重要であり、地域住民が学校の教育活動を支援するとともに、学校運営に参画できる体制づくりを進めることが求められている。
管内においては、これまでも、学校、家庭、地域、そして行政が協働し、「未来をつくる人づくり」の取組を推進しているところであり、教育局としては、「管内コミュニティ・スクール研修会」を開催するなどして、取組の成果の普及に取り組んでいく。
三点目は、「十勝のよさを取り入れた生涯学習活動を推進する」である。
生涯を通じて健やかに充実した生活を送ることができるようにするためには、十勝らしい、特色ある生涯学習活動を推進することが求められている。
教育局としては、地域住民が豊かに学び、文化やスポーツに親しむことができる仕組みづくりと学習の成果を地域に生かすことができる環境の整備に取り組んでいく。
校長には、引き続き学科の特性や、教科の専門性を生かした取組を地域に発信していくよう求める。
【むすびに】
私たち教育に携わる者は、未来を担う子どもたちが、自らの個性を伸ばし、自らの力で明るい未来を切り拓いていく勇気と希望を手に入れることができるよう、「十勝はひとつ 子どもたちのために」との思いを胸に、全力で取り組んでいくことが大切である。
一校を預かる校長においては、大局から自校の教育課題を見極め、その改善のために、強い意志と覚悟をもって、スピード感のある具体的な取組を組織的に推進していくようお願い申し上げる。
(道・道教委 2016-05-06付)
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