28年度日高管内教育推進の重点 目的達成へ実践積み上げ 資質・能力の確実な育成目指し
(道・道教委 2016-05-26付)

日高管内教育推進の重点
28年度日高管内教育推進の重点(画像をクリックすると拡大表示されます)

 【浦河発】日高教育局は四月中旬、浦河町総合文化会館で二十八年度管内公立小・中学校長会議を開催した。赤間幸人局長が本年度管内教育推進の重点を説明。「今と未来を生きる日高の子どもたちに届ける日高教育改革のNext Stage〝みんなで目指そう!新しい時代に求められる資質・能力の確実な育成〟」をスローガンに掲げ、これからの時代を生き抜く力を育む教育を、すべての学校で推進するよう求めた。

 管内教育推進の重点はつぎのとおり。

【はじめに】

 昨年度「二十七年度管内教育推進の重点」として示した二つの柱に基づき、学校経営の改善・充実はもとより、管内教育の振興・発展に寄与していただいた。

 道教委の施策等に理解・協力をいただき、日高で学ぶすべての子どもが、本道の次世代の担い手として成長することができるよう取り組んでいただいていることに、感謝申し上げる。

 さて、国では、高大接続システム改革会議の「最終報告」をまとめた。

 これは、高校教育と大学教育、大学入学者選抜の一体的改革を目指したものであるが、義務教育を含めた、わが国の教育の在り方全体にかかわる提言となっており、その「検討の背景とねらい」から一部引用すると―

 「これからの時代にわが国で学ぶ子どもたちは、明治以来の近代教育が支えてきた社会とは質的に異なる社会で生活をし、仕事をしていくことになる。グローバル化・多極化の進展、産業構造や就業構造の転換、生産年齢人口の急減、地方創生の対応等、新たな時代に向けて国内外に社会変動が起こっているためである。

 大きな社会変動の中では、これからのわが国や世界でどのような社会が実現されていくか、誰も予見できない。確実に言えるのは、先行きの不透明な時代であるからこそ、多様な人々と協力しながら主体性をもって人生を切り開いていく力が重要になるということである。

 また、知識の量だけではなく、混とんとした状況の中に問題を発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造していくための資質や能力が重要になるということである。

 こうした資質や能力は、知識・技能を受動的に習得する能力が重視されたこれまでの時代の教育では、十分に育成することはできない。そのため、抜本的な教育改革を進める必要がある。

 わが国と世界が大きな転換期を迎えた現在、この教育改革は、幕末から明治にかけての教育の改革に匹敵する大きな改革であり、それが成就できるかどうかがわが国の命運を左右すると言っても過言ではない。

 これからの時代に向けた教育改革を進めるに当たり、身に付けるべき力として特に重視すべきは、①十分な知識・技能②それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力③これらの基になる主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度―である。

 高校教育から大学教育、また、義務教育や社会との関係まで含め、多岐にわたる改革内容をシステムとしてとらえ、これまでの歴史の先に新たな教育の仕組みを創造することは、“答えが一つに定まらない問題に解を見いだしていく”活動である」。

 ―少し長くなったが、こうした教育改革の方向性をしっかりと視野に置きながら、本道の教育、そして日高の教育を考えていかなければならないと考える。

 教育局では、道教委の執行方針や「北海道教育推進計画に沿って、掲げられた施策の推進を通し、管内教育課題の解決に取り組んできたところであり、二十七年度は、日高の教育改革として「できなかったことをできるようにすること」を、確実にすべての学校で実現するとともに、教育の質の向上は限界なくどこまでも追求する姿勢を重視するという考え方に立って、「教育の質の向上に向け、日高の教育改革は、Next Stageへ!」というスローガンとして提示した。

 こうした流れを引き継ぎながら、本年度においては、今を生き、未来を生きる子どもたちの人生に必要な力の育成を目指し、「学校がなすべきことは何か」を明らかにするとともに、「なすべきことを確実に実践する」意識を共有し、これからの時代を生き抜く力を育む教育が、すべての学校で推進されるよう、「今と未来を生きる日高の子どもたちに届ける日高教育改革のNext Stage“みんなで目指そう!新しい時代に求められる資質・能力の確実な育成”」とした。

 管内教育推進の重点に記載した内容は、すべて各学校で取り組んでいただきたい重点となっているが、特に、取り組んでいただきたいポイントを説明申し上げる。

【生きる力を育成する取組の確実な推進】

 一つ目の柱「生きる力を育成する取組の確実な推進」である。

▼社会で活きる実践的な力の育成

 一点目の取組の方向性「社会で活きる実践的な力の育成」について。

 本年度、(1)から(5)の五点について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に、(1)と(2)について申し上げる。

▽(1)学力向上に向けた適切な教育課程の編成・実施について

 昨年八月、中央教育審議会教育課程企画特別部会が、次期学習指導要領改訂に向けた「論点整理」をまとめ、豊かな未来を築くために、教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割を示した。

 論点整理の考え方には、学習指導要領の改訂を待つまでもなく、現教育課程の実施においても指針とすべきものが多く示されている。

 学校においては、「社会に開かれた教育課程」の観点に立ち、

・より良い学校教育を通じて、より良い社会を創るという目標をもち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと

・これからの社会をつくり出していく子どもたちが、社会や世界に向き合い、かかわり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと

・教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育の目指すところを社会と共有しながら実現させること

 ―といった役割が期待される。

 また、「カリキュラム・マネジメント」の重要性が指摘されており、校長を中心としつつ、教科等の縦割りや学年を超えて、学校全体で取り組んでいくことができるよう、学校の組織及び運営についても見直しを図る必要があり、管理職のみならずすべての教職員がその必要性を理解し、日々の授業等についても教育課程全体の中での位置付けを意識しながら取り組む必要があることが提言されている。

 こうしたことを踏まえながら、校長としてリーダーシップを発揮し、推進していただきたいことについて四点の重点的な取組を示した。

 特に、「教職員による学力・学習状況調査の自校採点、分析に基づく学校課題の確実かつ正確な把握」について、本年度、一層の取組の質の向上をお願いしたい。

 全国学力・学習状況調査は、推し量られる学力の状況や子どもたちの意識などを、子ども一人ひとりについて詳細に把握することができるものであり、子どもたちのつまずきの状況について、数値のみをもって把握するだけではなく、子ども一人ひとりの誤答の状況を分析するなど、データと教員の指導や子どもたちの授業の様子などと関連付け、授業改善を図っていただきたい。

 教育局としては、えりも町の「学校力向上に関する総合実践事業」における、全校体制による学力調査の分析を踏まえた教育課程の編成や授業改善など、学力向上を図る組織的な取組の成果を広く管内に普及したいと考えている。

▽(2)確かな学力を育成する学習指導の工夫・改善について

 道教委では、二十九年度の全国調査までにすべての管内で「全国平均以上」にすることを目標に掲げたところであり、教育局としては、その実現に向けて、取組を加速させ、充実・強化を図っていく考えである。

 二十七年度の教科に関する調査からは「依然として学力の定着状況に課題があること」、児童生徒質問紙からは、「授業がよく分かる児童生徒が少ないこと」「平日に一時間以上家庭学習をする児童生徒が少ないこと」、さらに、学校質問紙からは、「学校として組織的によく取り組んだ学校や学習過程を整えている学校が全校となっていないこと」などの課題が明らかとなっており、確かな学力を育成する学習指導の工夫・改善を一層進めることが重要である。

 そこで、本年度は、取組の質の向上に向け、「学習過程の整備」と「学習過程を充実させるための取組および学習環境の整備」の二つの視点から重点的な取組を示した。

 これらは、昨年度から、様々な機会に具体的に話してきている事項でもあるが、各学校の学校経営方針の中に確実に位置付けていただきたい。

 このような中、昨年十一月、日高地区校長会が、管内において成果を上げている学校の優れた実践をまとめた『日高管内学力向上実践事例集』を発行し、学校改善に活用されていると伺っており、今後、すべての学校において、これらの実践を参考に学習過程や学習環境の整備の充実を図っていただきたい。

 教育局としては、学力向上や望ましい生活習慣の定着などに向けたこれまでの取組を改善するとともに、すべての子どもたちに確かな学力を確実に身に付けさせる取組を一層推進することが重要と考え、本年度も全国学力・学習状況調査の各校の自校採点結果を教育局独自に集計して、管内の課題を明らかにし、課題解決に向けた取組を推進する。

 また、学校教育指導訪問については、本年度、抜本的に見直し、各学校の実態に応じた目的別訪問を実施することとしており、義務教育指導監の学校経営指導訪問や各種研修会等との関連を図った取組となるよう各学校で計画していただきたい。

▼豊かな心と健やかな体の育成

 本年度、(1)から(5)の五点について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に(1)(3)(5)について申し上げる。

▽(1)道徳教育の充実について

 二十八年度道道徳教育研究大会日高大会の開催を控え、昨年十二月に、管内においてプレ研究会が開催され、これを契機として、多くの学校において、道徳教育を一層充実させる機運が高まっていると伺っているところである。

 また、教委連が主体となり、「管内道徳教育プロジェクトチーム」を立ち上げ、道外の先進校を視察し、道徳教育推進教師研修会や管内教育課程研究協議会等で成果を発表するとともに、啓発資料を作成するなど、管内の道徳教育の充実のために取り組んでいると伺っているところである。

 各学校においては、重点内容項目を明確にした道徳の時間の確実な実施や道徳教育全体計画の別葉の改善、教科化に向けた取組を一層充実させることが必要であり、七点の重点的な取組を各学校の学校経営方針に位置付けるなどして、確実に実施していただきたい。

▽(3)生徒指導・教育相談体制の充実について

 いじめを苦にしたと思われる子どもたちの自殺が相次ぐなど、生徒指導にかかわっては、依然として深刻な状況が続いている。

 生命はかけがえのないものであり、いじめは絶対に許されないものという共通認識のもと、学校の内外を問わず、すべての子どもたちが安心して元気に生活を送ることができるよう、家庭、学校、地域、関係機関が相互に連携協力して、いじめの防止に向けた取組を社会全体で進めることが大切であり、四点の重点的な取組を示した。

 特に、「学校いじめ防止基本方針」に基づく取組など、「未然防止、早期発見、早期解消」を実効性あるものとするため、家庭や関係機関等と密接に連携しながら、学校として組織的に取り組む体制づくりを構築していただきたい。

 また、関係機関と連携し、専門的な指導助言が受けられる体制づくりについても推進していただきたい。

▽(5)学校における体力づくりの促進について

 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果、本道の子どもの体力が全国平均と比べ大きく下回っていることが明らかになっており、管内においても同様の傾向がみられている。

 管内においては、改善の兆しはあるものの、依然として全国を下回る状況が続いており、各学校においては、全校体制で継続的な体力向上に向けた取組を推進するとともに、体育の授業改善を一層推進することが必要である。

 体力向上を図るためには、子どもの体力の実態を把握し、その結果を踏まえ「学校における体力づくり」や「授業改善」を促進する必要があることから、三点の重点的な取組を示した。

 特に、新体力テスト等から実態を把握し、つぎに、分析した結果から数値目標を設定して改善方策を実施し、そして、実施結果の検証・改善を行うという検証改善サイクルが重要であり、新体力テストの全学年・全種目の実施による実態把握、分析結果に基づきねらいを明確にした「一校一実践」など、すべての学校で運動習慣の定着が確実に図られるよう、取組の一層の充実を期待する。

【取組を支える体制の整備】

 二つ目の柱「取組を支える体制の整備」についてである。

▼信頼される学校づくりの推進

 一点目の取組の方向性「信頼される学校づくりの推進」について

 本年度、(1)から(6)の六点について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に(1)(3)(5)について申し上げる。

▽(1)管理職のリーダーシップによる学校組織の活性化

 今日の学校経営においては、学校経営者としてのリーダーシップの発揮と学校経営のマネジメントサイクルを機能させることが求められている。

 昨年度は、管理職としての学校経営力を高めることを目的に、目的別管理職研修を実施するとともに、将来のスクールリーダーを輩出する新たな仕組みとして、「ミドルリーダー研修会」等の目的別一般研修を実施してきたところであり、こうした取組を踏まえ、五点の重点的な取組を示した。

 特に、組織的な学校経営を推進するため、主幹教諭の配置や教務主任が機能するようにすることが重要と考えており、主幹教諭候補、教務主任の育成に努め、学校経営に参画させる機会を設定していただきたい。

▽(3)学校間の連携・接続の推進

 教育活動を充実させるためには、学校種間の連携を図るとともに、学校と地域との交流・連携を進めることが重要であり、二点の重点的な取組を示した。

 特に、「中一ギャップ」や「高一クライシス」を未然に防止する上でも、学校種間の連携・接続が不可欠となっている。

 管内においては、様似町における「小中連携・一貫教育」の取組や平取町における「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」の取組など、九年間または十二年間を見通した一貫した教育が展開されており、教育局としては、その成果を広く管内に普及したい。

 高校との連携についてはすでに、町内の校長会に高校の校長が参加して相互に情報交換する取組、公開授業や学校行事を参観し合う取組、小・中学校の学習サポートに高校生が協力する取組、中学校の授業を高校の教師と協同で行う取組などが行われてきているが、一層の実効性のある取組を進めていただきたい。

▽(5)教職員の勤務と服務規律の徹底

 これまでも、機会あるごとにお知らせしていることであるが、全国的に教育公務員の不祥事が一向に減少しない傾向にあり、学校教育への信頼を失墜させていることは、誠に憂慮すべきことである。

 このような中、昨年度、管内においては、体罰や交通違反などの事案が発生した。

 教育局としては、「管内コンプライアンス確立会議」を開催し、あらためて、学校における不祥事防止の取組について確認することとしており、重点的な取組として、教育公務員としての法令順守の徹底を示した。

 不祥事が発生する背景には、「この程度ならという安易な思考」「自分の欲する気持ちや価値観の優先」「法令軽視」などの個人的な考えにかかわるもののほか、「おそらく、そんなことはしないだろう」という思い込みや確認手続きの不備等の管理面の問題があると考えられる。

 こうしたことから服務監督者である各町教委においては、校長会議や教頭会議の際に服務規律の順守について働きかけたり、各種手続きの方法の再確認を行ったりするなど、あらためて、各学校への指導徹底についてお願いする。

 また、所属長である校長においては、教職員一人ひとりが法令順守の強い意識をもつよう、法令や規則に基づいた職務の遂行について、今まで以上にきめ細やかに監督するとともに、日常の教職員の言動に関心を払い、気になる点はその都度注意するなど、秩序ある職場づくりを進めていただきたい。

▼地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進

 二点目の取組の方向性「地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進」について。

 今日、学校教育が抱える課題の解決に向けては、家庭や地域との連携が不可欠であることを踏まえ、教育局としては、本年度、(1)(2)の二点について、重点的に取り組んでいただきたい。

【終わりに】

 以上、本年度の管内教育の推進に当たって、基本的な考えや重点として取り組んでいただきたいことを申し上げた。

 全国学力調査について、道教委では、二十九年度までにすべての管内で全国平均以上にすることを目標としているが、そうした目の前の目標に向かうことはもちろんのこと、わが国の大きな教育改革の動向を踏まえつつ、日高の子どもたちが、二十一世紀、さらには二十二世紀をしっかり生き抜いていくために、真に必要な資質や能力を育むという、本質的な目的に向かう教育実践を積み上げていくことが重要であると考える。

 そうした実践を積み上げ、日高において、全国トップレベルの実践を目指していきたいと考える。

 また、高大接続改革では、小学校の学習指導要領改訂元年の三十二年度から、大学入試センター試験に替り、活用力の評価を重視する、新しい大学入学者選抜を導入する予定としている。

 その一期生となる学年は、現在の中学校二年生であり、高校では、中学校二年生が入学するまでに、着実に授業改革を進めることが求められており、さらに、中学校二年生以下の学年においては、これまで以上に、知識を活用する思考力・判断力・表現力等を重視する授業を推進することが求められている。

 小・中学校では、すでに、全国学力調査において、「活用」に関する問題に取り組んでいるが、今後、一層、知識・技能を活用する力を伸ばす授業の充実を図るとともに、高校において、飛躍的に授業改善を図ることが重要となっている。

 そうした観点からも、小中高が連携した取組は非常に大切であると考えている。

 これまでにない大きな教育改革が進められているが、求められる取組をそれぞれの学校の教育実践に取り込み、日高の子どもたちに、新しい時代に求められる資質・能力を確実に育んでいただくよう願っている。

 学校は、子どもの確かな成長を担保する役割と責任を果たす教育の専門機関であり、わが国の教育の基本を支えているのは学校であると考える。

 教育局としては、これまでの取組の一層の充実を図り、各町教委および学校の支援に努めていく考えであるので、皆さんにおかれては、「子どもたちが夢と希望をもつことのできる学校教育の創造」に全力を尽くしていただくことを期待する。

 皆さんの活躍を期待申し上げるとともに、教育局の教育行政の執行に引き続き協力をお願いする。

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