28年度日高管内教育推進の重点(高・特) 必要な資質・能力育んで 夢と希望もてる学校教育創造
(道・道教委 2016-05-30付)

日高局高特校長会議
赤間局長が説明

 【浦河発】日高教育局は四月二十日、浦河町内の日高合同庁舎で二十八年度日高管内公立高校長・特別支援学校長会議を開催した。赤間幸人局長が本年度日高管内教育推進の重点を説明し、「今と未来を生きる日高の子どもたちに届ける日高の教育改革のNext Stage〝みんなで目指そう!新しい時代に求められる資質・能力の確実な育成〟」のスローガンを掲げた。その上で、「生きる力を育成する取組の確実な推進」「取組を支える体制の整備」の二つを大きな柱として提示。教育改革が進む中、「求められる取組を、それぞれの教育実践に取り込んでもらいたい」と求めた。

 管内教育推進の重点はつぎのとおり。

【はじめに】

 校長の皆さんには、昨年度、二十七年度日高管内教育推進の重点として示した二つの柱に基づき、学校経営の改善・充実はもとより、管内教育の振興・発展に寄与していただいた。

 道教委の施策等に理解・協力をいただき、日高で学ぶすべての子どもが、本道の次代の担い手として成長することができるよう取り組んでいただいていることに、感謝申し上げる。

 さて、国では、先月末、高大接続システム改革会議の「最終報告」をまとめた。

 これは、高校教育と大学教育、大学入学者選抜の一体的改革を目指したものであり、義務教育を含めた、わが国の教育の在り方全体にかかわる提言となっている。

 その「検討の背景と狙い」から一部引用すると―

 「これからの時代にわが国で学ぶ子どもたちは、明治以来の近代教育が支えてきた社会とは質的に異なる社会で生活をし、仕事をしていくことになる。グローバル化・多極化の進展、産業構造や就業構造の転換、生産年齢人口の急減、地方創生への対応等、新たな時代に向けて国内外に社会変動が起こっているためである。

 このような大きな社会変動の中では、これからのわが国や世界でどのような産業構造が形成され、どのような社会が実現されていくか、誰も予見できない。確実に言えるのは、先行きの不透明な時代であるからこそ、多様な人々と協力しながら主体性をもって人生を切り拓いていく力が重要になるということである。

 また、知識の量だけではなく、混とんとした状況の中に問題を発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造していくための資質や能力が重要になるということである。

 こうした資質や能力は、知識・技能を受動的に習得する能力が重視されたこれまでの時代の教育では、十分に育成することはできない。そのため、抜本的な教育改革を進める必要がある。

 わが国と世界が大きな転換期を迎えた現在、この教育改革は、幕末から明治にかけての教育の改革に匹敵する大きな改革であり、それが成就できるかどうかがわが国の命運を左右すると言っても過言ではない。

 これからの時代に向けた教育改革を進めるに当たり、身に付けるべき力として特に重視すべきは、①十分な知識・技能②それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力③これらの基になる主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度―である。

 高校教育から大学教育、また、義務教育や社会との関係まで含め、多岐にわたる改革内容をシステムとしてとらえ、これまでの歴史の先に新たな教育の仕組みを創造することは、“答えが一つに定まらない問題に解を見いだしていく”活動である」

 ―少し長くなったが、こうした教育改革の方向性をしっかりと視野に置きながら、本道の教育、そして、日高の教育を考えていかなければならないと考える。

 教育局では、道教委の執行方針や「北海道教育推進計画」に沿って掲げられた施策の推進を通し、管内教育課題の解決に取り組んできたところであり、二十七年度は、日高の教育改革として「できなかったことをできるようにすること」を確実にすべての学校で実現するとともに、教育の質の向上は限界なくどこまでも追究する姿勢を重視するという考え方に立って、「教育の質の向上に向け、日高教育改革は、Next Stageへ!」というスローガンとして提示した。

 こうした流れを引き継ぎながら、本年度においては、今を生き、未来を生きる子どもたちの人生に必要な力の育成を目指し、「学校がなすべきことは何か」を明らかにするとともに、「なすべきことを確実に実践する」意識を共有し、これからの時代を生き抜く力を育む教育が、すべての学校で推進されるよう、「今と未来を生きる日高の子どもたちに届ける日高教育改革のNext Stage〝みんなで目指そう! 新しい時代に求められる資質・能力の確実な育成〟」とした。

 この「管内教育推進の重点」の内容は、義務教育校にかかわる内容が多いものの、各学校においても取り組んでいただきたい重点となっている。

 私からは、特に、取り組んでいただきたいポイントのみ説明申し上げる。

【生きる力を育成する取組の確実な推進】

▼生きる力を育成する取組の確実な推進

 一点目の取組の方向性「社会で活きる実践的な力の育成」について本年度、(1)から(5)の五点について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に(1)(2)(5)について申し上げる。

▽(1)学力向上に向けた適切な教育課程の編成・実施

 昨年八月、中央教育審議会教育課程企画特別部会が、次期学習指導要領改訂に向けた「論点整理」をまとめ、豊かな未来を築くために、教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割を示した。

 「論点整理」の考え方には、学習指導要領の改訂を待つまでもなく、現教育課程の実施においても指針とすべきものが多く示されている。

 学校においては、「社会に開かれた教育課程」の観点に立ち、

・より良い学校教育を通じてより良い社会を創るという目標をもち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと

・これからの社会を創り出していく子どもたちが、社会や世界に向き合い、かかわり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと

・教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育の目指すところを社会と共有しながら実現させること

 ―といった役割が期待されている。

 また、「カリキュラム・マネジメント」の重要性が指摘されており、校長を中心としつつ、教科等の縦割りや学年を超えて、学校全体で取り組んでいくことができるよう、学校の組織および運営についても見直しを図る必要があり、管理職のみならずすべての教職員がその必要性を理解し、日々の授業等についても教育課程全体の中での位置付けを意識しながら取り組む必要があることが提言されている。

 こうしたことを踏まえながら、校長としてリーダーシップを発揮し、推進していただきたいことについて重点的な取組を示した。

 特に、「学校課題を踏まえた育成すべき資質・能力の明確化」についてであるが、「論点整理」では、「各学校が編成する教育課程の中で、各学校の教育目標とともに、育成する資質・能力のより具体的な姿を明らかにしていくことが重要である」とし、「教育課程全体でどのような資質・能力を育成していくのかという観点から、各教科等の在り方や、各教科等において育成する資質・能力を明確化し、この力はこの教科等においてこそ身に付くのだといった、各教科等を学ぶ本質的な意義をとらえ直していくことが重要である」としている。

 これは、次期学習指導要領改訂の視点として、これまでの言わば「コンテンツ・ベース」の教育課程から、「コンピテンシー・ベース」の教育課程へ移行することを示したものと考えられるが、こうした考え方は、現行教育課程においても重要な視点であり、各学校においては、生徒の実態を踏まえ、どのような資質・能力を身に付けさせることを目指していくのかをこれまで以上に明確に示し、さらに、教科をはじめとする教育活動全体の中で、そうした資質・能力を確実に身に付けさせていくための指導方法や学習評価の改善につなげていただきたい。

▽(2)確かな学力を育成する学習指導の工夫・改善

 一昨年度、一年生(現三年生)を対象に実施していただいた道高校学習状況調査において、「長期休業中を除く、授業等が行われた期間に、家庭学習を一度もしない週があるか」の質問に対して、「家庭学習をしない週がある」と回答している管内の生徒がいる。

 道教委では、「北海道教育推進計画」において、二十九年度までに「家庭学習をしない週がある」と回答する生徒を「ゼロ」にすることを目標に掲げており、各学校においては、自校の調査結果を十分に分析して、学習意欲の向上に向けた取組の充実をお願いする。

 推進の重点では、取組の質の向上に向け、「学習過程の整備」と「学習過程を充実させるための取組および学習環境の整備」の二つの視点からそれぞれ重点的な取組を示した。

 「学習過程の整備」の四つ目の、いわゆる「アクティブ・ラーニング」についてであるが、高大接続改革では、小学校の学習指導要領改訂元年の三十二(二〇二〇)年度から、大学入試センター試験に替わり、思考力・判断力・表現力の評価を重視する、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を導入する予定としている。

 その一期生は、現在の中学二年生であり、高校では、中学二年生が入学するまでに、着実に、知識を活用する思考力・判断力・表現力等を重視する授業改革を進めることが求められるている。

 小・中学校では、すでに、全国学力調査において、「活用」に関する問題に取り組んでおり、今後、一層、知識・技能を活用する力を伸ばす授業の充実を図るとともに、高校においては、思考力等を確実に伸ばすための「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」、いわゆる「アクティブ・ラーニング」の飛躍的な充実を図ることが重要となっている。そうした観点から、小・中・高校が連携した取組も効果的に進めていただきたい。

 「学習環境の整備」の三つ目の「ICTを活用した効果的な指導の促進」について、昨年度から、本道においては、各学校の理解と協力のもと、管内の高校が中心となって研究を進めてきている。

 生徒が主体的に自らの疑問について深く調べるなど、自立した学び手として生徒を育てる教育活動を展開する上で、ICTは学習の手段および学習環境として一層重視されてくる。

 研究指定校においては、それぞれの情報手段の特性を理解し、指導の効果を高める方法について、引き続き研究を進めていただくようお願いする。

▽(5)特別支援教育の充実

 『障害を理由とする差別の解消に関する法律』の施行に伴い障がいのある生徒への指導や支援を充実させることや、障がいのある生徒およびその保護者に対し、心情を汲み取り、丁寧に対応することが求められている。

 各高校においては、「校内研修プログラム」を活用するとともに、平取養護学校ならびに静内ペテカリの園分校と連携するなどして、特別支援教育にかかわる教員の専門性の向上を図る研修の充実をお願いする。

 併せて、特別な配慮や支援の内容について、中学校と高校との間で「個別の教育支援計画」を活用し円滑な引継ぎができるような連携体制の整備をお願いする。

▼豊かな心と健やかな体の育成

 本年度、(1)から(5)について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、私からは、特に(1)(3)(5)について申し上げる。

▽(1)道徳教育の充実

 道徳教育の目標は教育全体の目標に通じるものであり、学習指導要領では、道徳教育の役割が「道徳性を養うこと」であることが示されている。道徳性とは人間らしい良さであるとともに、人間としての本来的な在り方やより良い生き方を目指してなされる道徳的行為を可能にする人格的特性であり、人格の基盤をなすものである。

 高校においては、人間としての在り方生き方に関する教育を推進し、学校の教育活動全体を通じて各教科・科目、総合的な学習の時間および特別活動のそれぞれの特質に応じて実施するものであり、管内における特色を取り入れた教材や体験活動等の活用も含め、各学校で工夫いただきながら、道徳教育の一層の充実をお願いする。

 なお、ことし十月に管内において、小・中学校の道道徳教育研究大会日高大会が開催されるので、公開授業の参観や研究協議に参加するなどして、小・中学校の道徳教育についても理解を深め、高校での取組に生かしていただきたい。

▽(3)生徒指導・教育相談体制の充実

 いじめを苦にしたと思われる子どもたちの自殺が相次ぐなど、生徒指導に関わっては、依然として深刻な状況が続いている。生命はかけがえのないものであり、いじめは絶対に許されないものという共通認識のもと、学校の内外を問わず、すべての子どもたちが安心して元気に生活を送ることができるよう、家庭、学校、地域、関係機関が相互に連携協力して、いじめの防止に向けた取組を社会全体で進めることが大切であり、四点の重点的な取組を示した。

 特に、「学校いじめ防止基本方針」に基づく取組など、「未然防止、早期発見、早期解消」を実効性あるものとするため、家庭や関係機関等と密接に連携しながら、学校として組織的に取り組む体制づくりを構築していただきたい。

 また、関係機関と連携し、専門的な指導・助言が受けられる体制づくりの推進についても推進していただきたい。

▽(5)学校における体力づくりの促進

 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果、本道の小・中学生の体力が、全国平均と比べ大きく下回っていることが明らかになっており、管内においても同様の傾向がみられている。

 体力向上を図るためには、子どもの体力の実態を把握し、その結果を踏まえ「学校における体力づくり」や「授業改善」を促進する必要があることから、三点の重点的な取組を示した。

 なお、高校においても、新体力テストで全国平均以上が目標指標となっていることから、全学年全種目を実施し、経年変化を比較するなど、体力向上に向けた取組をお願いする。

【取組を支える体制の整備】

▼信頼される学校づくりの推進

 本年度、(1)から(6)について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に(1)(3)(5)について申し上げる。

▽(1)管理職のリーダーシップによる学校組織の活性化

 今日の学校経営においては、学校経営者としてのリーダーシップの発揮と学校経営のマネジメントサイクルを機能させることが求められている。

 特に、組織的な学校経営を推進するためには、ミドルリーダーの育成が重要であることから、道立教育研究所で開催されるミドルリーダー養成研修講座等を活用するなど継続的・計画的な人材育成の取組をお願いする。

▽(3)学校間の連携・接続の推進

 教育活動を充実させるためには、学校種間の連携を図るとともに、学校と地域との交流・連携を進めることが重要であり、二点の重点的な取組を示した。

 特に、「中一ギャップ」や「高一クライシス」を未然に防止する上でも、学校種間の連携は不可欠となっている。

 管内においては、様似町における「小中連携・一貫教育」の取組や、平取町における「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」の取組など、九年間または十二年間を見通した一貫した教育が展開されており、教育局としては、その成果を広く管内に普及したいと考えている。

 小・中学校との連携については、町内の管理職が集まる場に高校の管理職が参加して相互に情報交換する取組、公開授業や学校行事を参観し合う取組、高校生が小・中学校の学習サポートに協力する取組、中学校の授業を高校の教師と協同で行う取組などが行われているが、一層の実効性ある取組を進めていただきたい。

▽(5)教職員の勤務と服務規律の徹底

 機会あるごとにお知らせしていることであるが、全国的に教育公務員の不祥事が一向に減少しない傾向にあり、学校教育への信頼を失墜させていることは、誠に、憂慮すべきことである。このような中、昨年度、管内においては、体罰や交通違反などの事案が発生した。

 教育局としては、「管内コンプライアンス確立会議」を開催し、あらためて、学校における不祥事防止の取組について確認することとしており、重点的な取組として教育公務員としての法令順守の徹底を示した。

 不祥事が発生する背景には、「この程度ならという安易な思考」「自分の欲する気持ちや価値観の優先」「法令軽視」などの個人的な考えにかかわるもののほか、「おそらく、そんなことはしないだろう」という思い込みや確認手続きの不備等の管理面の問題があると考えられる。

 こうしたことから、服務監督者である校長においては、教職員一人ひとりに服務規律の順守について、これまで以上に、きめ細かく働きかけたり、確認手続きの見直しを図ったりするなど、あらためて指導の徹底をお願いする。

▼地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進

 今日、学校教育が抱える課題の解決に向けては、家庭や地域との連携が不可欠であることを踏まえ、本年度、(1)と(2)について、重点的に取り組んでいただきたいと考えている。

 推進の重点には記載はないが、選挙権年齢の引下げへの対応についてであるが、七月に実施予定の参議院議員通常選挙(もしくは衆参同日選挙)について、若者、特に、高校生の投票率への関心が高まっており、生徒が、有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、各学校においては、政治的教養を育む実践的な教育を一層推進していただきたい。

【終わりに】

 以上、本年度の管内教育の推進に当たって、基本的な考え方や重点として取り組んでいただきたいことを申し上げた。

 わが国の大きな教育改革の動向を踏まえつつ、日高の子どもたちが、二十一世紀、さらには二十二世紀をしっかり生き抜いていくために、真に必要な資質や能力を育むという、本質的な目的に向かう教育実践を積み上げていくことが重要であると考える。

 そうした実践を積み上げ、日高において、全国トップレベルの実践を目指していきたいと考える。

 これまでにない大きな教育改革が進められているが、求められる取組をそれぞれの学校の教育実践に取り込み、日高の子どもたちに、新しい時代に求められる資質能力を確実に育んでいただくよう願っている。

 学校は、子どもの確かな成長を担保する役割と責任を果たす教育の専門機関であり、わが国の教育の基本を支えているのは学校であると考える。

 教育局としては、これまでの取組の一層の充実を図り、町教委および学校の支援に努めていく考えであるので、皆さんにおかれては、「子どもたちが夢と希望をもつことのできる学校教育の創造」に全力を尽くしていただくことを期待する。

 皆さんの活躍を期待申し上げるとともに、教育局の教育行政の執行に引き続き協力をお願いする。

(道・道教委 2016-05-30付)

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