コーディネーター研修講座―特セン 連続性ある多様な学びを 北大大学院・安達教授が基調講義
(道・道教委 2016-05-31付)

北大大学院安達潤教授
基調講義を行う安達教授

 二十八年度「特別支援学校コーディネーター研修講座」(十八~二十日、道立特別支援教育センター)の初日、北海道大学大学院教育学研究院の安達潤教授=写真=が「特別支援学校のセンター的機能の充実と小・中学校との連携の推進」と題し、基調講義。これからの特別支援学校に求められるセンター的機能と、特別支援学校のコーディネーターに求められる専門性、特別支援学校と幼稚園、小・中学校、高校との連携について解説した。公開講義として行われ、講座参加者、一般聴講者合わせて七十人が受講した。

安達教授は「二十八年度は、特別支援教育がインクルーシブ教育に転換していくための舞台装置、いろいろな仕組みが完成する年度。就学前から学校教育、そして、社会的自立というライフコースにわたる支援の仕組みがつくられていることになる。学校教育の位置は、就学前から学校教育に移り、社会的自立につながっていく真ん中を支える、橋渡しをしていく、非常に重要な部分を担っている」と強調。

 学齢期に求められることとして、①就学前からの支援の引き継ぎ②親と本人が安心できる学校生活の保障③本人自身の自己理解につながる支援の実施④本人の学習達成を保証していく支援の工夫⑤多様性を認めていける学級経営の工夫と学級・学校文化の醸成⑥社会生活に向けたスキルの獲得(自立活動)⑦本人の心理的安定や自信の醸成につながる支援の実施⑧本人の自立に向けた支援の実施―を挙げ、「就学前から自立に向けて、一人の子どもが育っていく上で必要なことは、学習面もそうだが、まず、安心できる環境が保障されること。小学校一年生から高校三年生までなので、すごく変化が大きい。それを教育で切れ目なくつないでいくというのは大変なことだが、子どもたちにとってはすごく大事な時期で、先生方がいろいろ連携しながら、支えていくことが、子どもの育ちにとって大事なこと」とアドバイスした。

 義務教育段階において、「個別の教育的ニーズのある児童生徒に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要」とし、「小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある〝多様な学びの場〟を用意しておくことが必要」と強調した。

 また、現時点で求められる特別支援学校のセンター的機能として、①「合理的配慮」の提供を含めた「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の作成を軸に、学齢期の教育に求められることを実現できるよう小・中学校をサポート②「自立活動」の観点を具体的に含めた「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の作成をサポートし、子どもたちの自立に向けた育ちを支える③教科レベルでの合理的配慮の工夫をサポート④インクルーシブ教育の観点から、すべての子どもたちの育ちを支える学級・学校づくりをサポートする―ことを提示。

最後に、インクルーシブ教育のセンターである特別支援学校の地域コーディネーターとして、「特別支援教育からインクルーシブ教育への転換の背景を、権利条約の批准という大きな流れから理解しておくことが必要不可欠」「個別の教育支援計画・指導計画を軸に、小・中・高の現場で役立つサポートを通じて、障害理念の転換、合理的配慮、ICFの理解を促しながら、個別の学習支援と自立活動の要素が生きる教育実践の広がりを支える」「すべての子どもたちが自他の多様性を尊重し、多様性と持続性を包容し得る社会の担い手として巣立っていくための教育環境づくりに注力しよう」と呼びかけた。

(道・道教委 2016-05-31付)

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