指針と計画の見直し要求 高・特配置計画に対して声明―道高教組と道教組(関係団体 2016-09-09付)
道高教組(國田昌男中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は七日、道教委の「公立高校配置計画」「公立特別支援学校配置計画」に対し、「教育の機会均等、子どもの学習権を脅かす〝指針〟と〝高校配置計画〟の見直しを求める」とする声明を発表した。声明では、高校について、「一定の規模以下である学校を再編の対象とする今の〝指針〟を見直し、地域の願いや実態に応じた学校づくりをできるように求める」、特別支援学校について、「障害者差別解消法第五条に基づき、子どもの実態に合わせた環境整備をした上での開校を進めるべき」などと訴えている。
声明の内容はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
1.はじめに
道教委は九月六日、「公立高校配置計画」(二〇一七~二〇一九年度)と「公立特別支援学校配置計画」(二〇一七年度)を発表した。
「高校配置計画」では、二〇一九年度、六校(岩見沢西・札幌東豊・室蘭工業・苫小牧南・北見柏陽・北見商業)の各一学級減、函館西(三学級)と函館稜北(三学級)を募集停止し六学級の新設校(学科検討中)として再編することなどが、ほぼ六月の「案」どおりに決定された。
「特別支援学校配置計画」では、高校(上磯高校)の空き教室や閉校した小学校(真駒内小学校)の跡地を活用するなどして、二校の高等支援学校を新設、また、「障害の程度が比較的軽い生徒を対象とする学科」および「障害の程度が比較的重い生徒を対象とする学科」の区分を廃止し、学科を再編することが決定された。
私たちは、「新たな高校教育に関する指針(二〇〇六年度)」に対して、一貫して見直しを求めてきた。この「指針」は、広大な北海道の実情を踏まえておらず、国の教育政策を引き写し、経済性・効率性を最優先したものである。このまま「指針」による高校配置を推し進めれば、地方から高校はなくなり、子どもたちの学習権を侵しかねない。また、貧困問題や不登校、いじめ、発達障害など、かかえる課題が複雑・深刻化する教育条件の明らかな劣化が懸念される。
私たちはあらためて道教委に対し、「指針」の見直しと「高校配置計画」の撤回を求めるものである。
2.地域や子どもたちの声に耳を傾け、その意見を教育政策に反映することを求める
私たちが行っている道内自治体の首長、教育長との懇談では、「北海道の実情に合っていない指針は見直してほしい(上川)」「自治体の要望を取り入れた教育政策を進めてほしい(上川)」などの声が挙がり、地域の住民からは、「地元に高校がなく、公共交通機関もないので、親が送迎をしているが、大変だ(道南)」「地元高校の統廃合の噂があり、他の市町村への転居を考えている(上川)」など、わが子の教育を何とかしたいという願いが切々と語られた。
六月に「高校配置計画案」が出されたあと、各地域で開催された第二回地域別検討協議会では、「機械的な配置でなく、地域の実情を踏まえるとともに、地域の意見を反映した配置計画となることを希望する」「北海道の広域性を考え、国の基準に準ずるのではなく、北海道の責任として三十人学級を実現させてほしい」などの意見が出され、「指針」による機械的な統廃合をやめてほしいという声が上がっていた。
「地方教育行政の組織および運営に関する法律の一部を改正する法律」(二〇一四年)の附帯決議では、権限が強化された教育委員会に対して、専門家だけの判断に偏することなく、地域の声を適切に施策に反映させるレイマンコントロールの趣旨を踏まえた事務執行の厳格なチェックを求めている。数多く寄せられた高校存続、学級減の見直しの声がどのように反映されたのか、道教委はその説明責任を果たすべきである。
また、地域別検討協議会が学校統廃合・学級削減のための「アリバイつくりの場」「何を言っても変わらない」というそしりに真摯に向き合い、真に開かれた行政を目指すべきである。
3.十分な教育条件整備をした上での、特別支援学校の開校を求める
特別支援学校への進学希望者の状況に応じた学校新設は大切なことであるが、ここ数年で新設された特別支援学校は、予算不足を理由に統廃合された空き校舎・教室を転用している。中には、教室の床の破損や校舎の雨漏り、そこに通う子どもの実態に合っていない設備など、不十分な施設設備のままで開校している現状もある。
道教委は、障害者差別解消法第五条に基づき、子どもの実態に合わせた環境整備をした上での開校を進めるべきである。
また、学科再編によって、将来の進路希望や教育課程の特色、学ぶ内容によって学校を選択することができるようになった。障害の「軽い」「重い」ではなく、教育内容によって進路選択ができるようになることは、障害者権利条約の理念の具現化という点では一歩前進である。
しかしながら、学びの内容が子どもの発達や実態に合っていなければ、本質的なインクルーシブ教育の実現とは言えない。各学校が主体的に教育課程を検証し、入学した一人ひとりの子どもの実態に合わせた教育課程を各学校が再編成できるよう保障すべきである。
4.地域高校の条件整備を十分に行うとともに、「学校規模」は、地域の願いや実態に応じたものにするよう求める
道教委は、「人口減少社会への対応や地方創生の観点から、地域の教育機能を確保することが重要な課題である」として、地域キャンパス校を設置している。キャンパス校では、「離島の高校や小規模校の教育水準の維持・向上を図ることができる」として、ICTを活用した遠隔授業を実施しているが、対面授業と同等の教育効果が保障されているのか、多面的視点での検証を求める。教育において、人間同士の豊かなコミュニケーションこそ不可欠であり、子どもと教職員の人間味ある関係性によって、学びが深まっていくと考える。
また、「地域キャンパス校に対しては、道単独での教員配置を行うとともに、センター校からの出張授業などにより教育環境の充実に努めていく」として、二人の加配教員のうち一人をセンター校に配置しているが、遠隔システムの設定や事前の打ち合わせなど、むしろ地域キャンパス校の負担は増えている。地方の小規模校を残すための方策として、情報技術や配置換えに頼るのではなく、道独自の教員加配によって教育の充実を目指すことを求めるものである。
さらに、「指針」の中で、高校の望ましい学校規模を「一学年四~八学級」とし、その利点を多々挙げている。一方、小規模校の利点についても、「地域とのつながりが深くなる」「生徒一人ひとりに目が行き届く」「個別の活動機会をつくることができる」「異学年の交流がされやすい」としている。
WHO「世界保健機関」の報告では、学校規模は百人以下であることが望ましいとしている。諸外国で学校規模が小さいのは、それだけ教育効果が高いからであり、子どもたちの人格形成・人間的成長にとっても効果的であることが実証されているからである。学校規模は地域の実情によって異なり、一律に決められるべきではない。一定の規模以下である学校を再編の対象とする今の「指針」を見直し、地域の願いや実態に応じた学校づくりをできるように求めるものである。
5.ゆきとどいた教育をすすめるための教育政策への転換を求める
高校配置や特別支援学校の新設の問題は、教育予算の充実と密接にかかわる問題である。国や道が進める、一部「エリート」養成への予算の集中化をただし、教育の機会均等の理念に照らした教育予算の充実と配分が求められる。
日本の教育への公的支出(対GDP比)は、OECD加盟国の中では六年連続最下位であり、日本の教育予算がいかに低いかを示すものである。道は国に対して予算増額の要望を上げ続けるとともに、道独自に教育予算を増やすべきである。
私たちは現在、国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求める「教育全国署名」に全力で取り組んでおり、「ゆきとどいた教育」を求めるすべての道民とともに運動を進めている。同時に、北海道の教育課題や高校配置の在り方を積極的に議論し、高校・特別支援学校の配置計画の問題点を明らかにする取組を、今後さらに強めていくことをあらためて表明するものである。
(関係団体 2016-09-09付)
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