メンタルヘルスを高める職場のコミュニケーションづくり №14 保護者との信頼関係を築くかかわり①
(メンタルヘルス 2016-11-09付)

 学校と保護者は子どもたちを健やかに育てるため、ともに手を携えなければならない関係ですが、保護者に学校や教職員の対応が理解されず、解決するまでに大変な労力を費やすことがあります。

 近年、学校のリーダーや教職員がメンタルヘルスを損なう原因の一つが、このクレームです。そこで今号より三号続けて、保護者と確かな信頼関係を築くかかわりについて説明します。

◆保護者からの電話で身構えない

 保護者から電話が来ると、クレームかと思い身構えてしまうという先生がいました。身構えてしまうと何を言われるのか不安になり、話したいことを上手く伝えることができなくなります。保護者からの電話を全てクレームとしてとらえていては、適切な対応はできません。

 電話の内容が連絡や質問なのか、意見や要望なのか、または苦情なのかを見極めながら、何をどうしてほしいのかをしっかり聞き、その上で、「ご意見ありがとうございます」「学校のためになるお話をいただき感謝いたします」などの言葉で、終えることができるよう、日ごろから心がけておくことが大切です。 

◆教師のちょっとした気遣いが大切です

 保護者からのクレームの六割は、学校や担任などの対応から感情を害したことによって発生しています。

 ある小学校での話です。夕方、保護者から担任に「うちの子まだ帰っていないのですが、学校に残っているのでしょうか」と連絡がありました。「そんなことはありません。どこかで寄り道しているのではないですか」と話すと、保護者は、「そんなことはないと思います」「日ごろから寄り道は良くないと教えています」という返事が返ってきました。そこで担任が、「もう少しで帰ってくるのではないですか」と話すと、担任の対応に不満をもちながらも「分かりました、もう少し待ちます」と答え、電話を切りました。

 その後、ほかの先生が電話を入れてくれた保護者の子どもが、数人の子どもたちと一緒に掲示物を作成しているところを発見したため、担任が保護者へ連絡をすると「無責任じゃないですか」「教室に足を運んでくれれば分かることではないのですか」と強い口調で抗議を受けました。

 担任は電話のあと、子どもたちを「どうして勝手に残っているのだ!」と怒鳴りつけてしまいました。翌日、その子のお母さん含め数人の保護者が校長のもとを訪れ、担任の対応の問題点を訴えるだけでなく、担任を替えてほしいと強硬に迫りました。

 「それでは、教室や学校の近辺を探してみます」と応じ、適切に対応していれば、「わざわざ探していただき、ありがとうございます」と感謝されたはずですが、保護者の心配をよそに、安易な対応をしてしまったため、保護者を怒らせてしまった実例です。特に問題がないことを問題にしてしまう背景には、気遣いの足りなさがあるのです。

 このように、保護者や子どもの側に立ったちょっとした気遣いができるかどうかが、クレームとなるのか信頼につながるのかの分かれ道であり、学校に対するクレームの六割はこのような内容であると言われています。

(公立学校共済組合北海道支部学校支援アドバイザー・石垣則昭)

(メンタルヘルス 2016-11-09付)

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