メンタルヘルスを高める職場のコミュニケーションづくり №16 保護者との信頼関係を築くかかわり③(メンタルヘルス 2016-12-14付)
担任の前向きな思いを保護者に伝えるとともに、問題の対応を図りながら信頼関係を構築することが大切
保護者との面談で信頼関係を深めるためには、どのようなことに留意し、話を進めたら良いのかを説明します。
◆面談場所といすへの座り方
保護者との面談場所は、話をしっかり聴くために、教職員が往来する職員室の応接間や子どもから見える空き教室などではなく、机といすが常備している静かな場所を選びます。また、座り方は対立、対決とならないよう、正面に座るのではなく、一つずれて座るなどの工夫が必要です。
◆面談の進め方
入室後、「お忙しい中おいでいただき、ありがとうございます」とはじめにお礼を言い、引き続き、「このたびは大変ご心配をおかけしています」と述べます。つぎに、「私と○○の二人でお話をお聞きします」「〇○については話の内容をメモさせていただきます(メモすることは保護者のクールダウンになります)。また、必要に応じ、話に加わりますがよろしいでしょうか」と同席と発言の理解を得ます。
また、早く収束させたいという思いから、取りあえず謝るようにという方がいますが、謝り過ぎは保護者の誤解を誘発し、面談そのものを難しくさせてしまうこともあります。面談中の謝罪は不自然にならないよう、保護者が自分の心にあることを話したあとや、説明の終わりに話すようにします。
そのあと、「このたびのことで、〇〇君に心苦しい思いをさせてしまいましたが、〇〇さんよりあらためてお話をお聴きしたいと思います」と話し、保護者の話を聴きます。つぎに、保護者の話を傾聴しますが、途中で保護者の話の腰を折ったり、否定し弁明に陥ったりすることがないようにします。この場合の傾聴は、うなずきながら、「はい、そうですか、よく理解できます」などと同調しながら聴くようにします。
また、心の中では、どのようなことに対してどのように感じているのかを見極めながら話を聴くようにします。たとえ保護者から冷静さを欠いた攻撃的な言動が発せられても、言葉に反応することなく、「そうお感じになったのであれば、私も〇〇さんの気持ちはよく理解できます」など、心に寄り添いながら聴くようにします。ひととおり話を聴いたあと、該当の教職員より保護者が問題を感じている部分の説明をしますが、自分の正当性を述べ保護者のとらえ方を否定するような話し方は、弁解ととらえられ新たな対立を生むことになります。冷静に、№13で示したサンドイッチ方式を活用し、「〇〇君は〇〇のような素晴らしいところがあるのですが、今回、〇〇君らしからぬ失敗をしてしまいました。私の〇〇君への指導が不足しているものと考えております」「私は厳しい言い方をしましたが、〇〇君の将来を考え指導しました。このたびの厳しい指導は〇〇君が理解してくれるものと考えています。しかし、その指導に誤解や行き過ぎがあったことを反省しております」など、自身の対応の反省を踏まえ話します。〇〇君の問題行動は、担任としての指導不足が原因であることを説明し、〇〇君のこれからに期待し、見守っていきますという担任の前向きな思いが保護者に伝わるようにします。
◆事後対応の重要性
保護者対応のねらいは、問題の対処、対応を図りながら信頼関係を築くことです。保護者が「今後ともよろしくお願いします」など対応に理解を示したあと、面談を終了するのではなく、今後に向けてどのように〇〇君を育ていくのか保護者の意見を聴きながら、学校でやるべきこと、さらに、家庭にお願いしたいことを交換します。
また、必要に応じて、学校での頑張りを電話で説明しながら家庭での様子を聴くなど、しばらくの間、情報を交換することが信頼関係を築くことになります。
◆保護者対応の状況をファイリングする
今後に向けて円滑な保護者対応を図るため、個人情報の取扱いには十分留意しながらファイリングしておくことが大切です。ファイリングは、保護者との信頼関係を築くための貴重な資料となります。ファイリングの内容は、どのような事実があったのか、問題点はどこにあったのか、どのような組織でどう対応したのか、課題としてどのようなことが残ったのかなどを具体的に記載します。
(公立学校共済組合北海道支部学校支援アドバイザー・石垣則昭)
(メンタルヘルス 2016-12-14付)
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