新たな札幌スタイル実現を 29年度予算で札幌市に要望書―札私幼・P連
(関係団体 2016-11-22付)

 札幌市私立幼稚園連合会(=札私幼、前田元照会長)と札幌市私立幼稚園PTA連合会(=札私幼P連、小林邦章会長)は十五日、札幌市および札幌市教委に二十九年度予算に対する要望書を提出した。札私幼では、二十七年度から本格実施している「子ども子育て支援新制度」にふれ、子どもの最善の幸せを考えた新たな札幌スタイルを実現してほしいと要望。札私幼P連では、親が安心して生み育てられる社会の実現に向け、就園奨励費の拡充や団体助成金の増額等を求めた。

 予算要望の概要はつぎのとおり。

▼札私幼

▽特別支援教育事業

 十六年に開催された札幌市幼児教育市民会議以降、市教委と同連合会が連携協力して、市における幼児教育の充実にかかわる施策のうち、支えつなぐ仕組みを充実させてきた。

 その中でも、二十二年度に新設された「私立幼稚園特別支援教育事業費補助金」については、年々増加し続ける「支援を必要とするすべての子ども」に対して、十分な保育環境の中で生活し、一人ひとりの自立に向けたきめ細やかな適切な支援体制を充実させるため、一園当たりの基準額の単価を見直し増額することが必要不可欠だ。

 また、現在は要支援児の総数が十三人以上で補助対象事業の実施に要する教諭の人件費が四人分支給されるが、よりきめ細かな支援体制を充実させるため要支援児の総数が十七人以上で補助対象事業の実施に要する教諭の人件費五人分が支給されるような補助制度の向上・拡充を切に要望する。

▽教材教具補助事業

 同事業に関しては、二十二年度から総体的に補助額が縮減される実績となったが、昨今の私立幼稚園をとりまく厳しい経営環境にあっては良質な保育環境の整備と維持に公的助成が欠かせない。

 また、前年度から「子ども子育て支援新制度」が本格施行されたことによって、今まで以上に教育・保育の質の向上に努める必要があることから、新たな保育環境の充実にも公的助成が欠かせない。

 予算総額の維持ないし増額とともに、対象事業や補助単価など見直しを図り、より実効性のある事業とすることを要望する。

▽新制度にかかる事項

①新制度の事務作業を効率良く進める上で、また保育士の業務負担軽減を図るため、保育所と幼保連携型認定こども園にあるICT化推進事業費補助金の対象を、幼稚園型認定こども園と施設型給付の幼稚園も対象としてほしい。

②一号認定こどものアレルギー補助を、自園調理を含む、外部委託・外部搬入、さらに幼稚園型認定こども園、施設型給付の幼稚園も対象としてほしい。

③札幌市保育所緊急整備事業(二・三号)、札幌市認定こども園整備事業(一号)を活用しての幼保連携型認定こども園の改修整備対象枠を本年度並みに拡充をお願いしたい。

④保育所の改修整備にかかる借入金の利息補給補助を、学校法人の幼保連携型認定こども園も対象としてほしい。

 以上、新制度に関して四項目を要望する。

▽研修費等助成事業(団体補助)

 同連合会では、職員の資質向上のための研修事業と労働環境の充実のため様々な事業を実施しているが、教員免許更新制や学校評価の推進など研究研修事業は拡大の一途をたどっている。

 現在、そのような状況を勘案し同連合会としても厳しい経営環境のもとにおいて、事業見直しを実施し、さらに会費改定も検討中だ。

 市においては十七年度の大幅な減額に続き、二十六・二十七年度と連続で減額された結果、現状の研修体制を維持することさえ困難な状況が続いている。

 さらに、子ども・子育て支援新制度によって実施されている研修(保育士関係の研修体制等)の質向上にも影響があり、質の高い幼児教育を担っていくための団体運営が非常に厳しい状況にさらされていることから、団体補助の拡充等について、再度、検討するよう強く要望する。

▽人材確保事業(幼稚園教諭・保育教諭)

 教育・保育の質を向上させていくためには、優秀な人材を継続的に確保していくことが必要だが、保育所等の定員増加によって、札幌の私立幼稚園・認定こども園における幼稚園教諭・保育教諭の人材確保は年々厳しさを増している。

 幼稚園や認定こども園も市の待機児童の解消に大きな役割を果たしているにもかかわらず、人材確保に関する施策は保育所中心であり、不公平感を感じずにはいられない。

①同連合会では、二十六年度より「就職フェア」を開催し、私立幼稚園・認定こども園の先生として働く魅力を発信するとともに、各園における採用を支援する事業を実施している。求職者の就職活動をサポートするという公益的な側面もある本事業に対するさらなる支援を求める。

②保育士等の人材確保に関する三種の事業(保育士修学資金貸付、保育補助者雇上費貸付、未就学児をもつ潜在保育士に対する保育料の一部貸付)の適用施設の範囲を、認定こども園および一時預かり事業を行う幼稚園まで広げることを要望する。

▼札私幼P連

▽保護者負担の軽減

 幼児期における教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なもの。「生きる力の基礎」を育成し、「義務教育およびその後の教育の基礎を培う」ために、幼児教育の重要性が、広く深く認識されるようになってきた。

 質の高い幼児教育を、市内に住む多くの子どもたちが享受できるようにするためには、保護者の経済的負担を軽減し、幼稚園・認定こども園の就園機会の充実を図ることが第一だ。

 市が保育料の段階的無償化に向けて、国基準の一歩も二歩も先を行くような施策を積極的に検討し、「幼児教育に力を入れている街」を具体化する取組を実現することを、強く要望する。

①就園奨励費補助金

 市では、二十二年度に「Eランク」が廃止された。現在、多くの政令指定都市では、市単費で就園奨励費の上乗せや対象外の世帯への補助、または独自の私立幼稚園教育費等の補助制度がある。

 二十八年度において、このような市の補助がないのは、政令指定都市上位十五都市中、札幌市のみ。「安心して子どもを産み育てられる街」を目指す自治体としては、残念な状況と言わざるを得ない。

また、全所得層で市独自補助を受けている保育所利用の保護者との格差があり、市とともに暮らし、ともに市政を支える者として、納得できない。

 そこで、「Sランク」の世帯の補助について、ほかの政令指定都市に準じ、拡充されることを切に要望するとともに、就園機会の拡大のため、私学助成の私立幼稚園に通うすべての保護者世帯が市単費の補助を受けられるよう、併せて要望する。

②新制度の利用者負担額(一号認定)

新制度に移行した園と私学助成の園との間で、保護者の平均的な保育料負担額に不公平が生じないような制度設計であるべきだ。

しかし、市の場合、新制度に移行した園の第二子(一号認定)の利用者負担額は、私学助成の幼稚園に通う第二子の平均的かつ実質的な保育料負担額より著しく高く、これが保護者の園選びにも少なからず影響している現状もあるため、法人が差額分を負担しているケースもある。

 第二子の利用者負担額(特に、世帯の大半を占める第三区分から第五区分)の減額を強く求める。

 また、条例が定める利用者負担額は、「札幌市が幼児教育をどれだけ大切にしているか」を示す尺度になると思われる。就園奨励費とのバランスを取りながら、第一子も含めて利用者負担額の減額を要望する。

▽PTA団体助成金

 十一年度まで五十万円だった団体助成金は、十二年度から四十五万円、さらに十七年度から四十万円に減額され現在に至っているが、当該助成金は多様化するPTA活動の事業費の根幹をなす貴重な財源だ。

 ここ数年、子育て支援と同様に「親育ち支援」が求められ、保護者が親として育つための各種研修会の企画運営など、PTA活動が担うべき役割は極めて大きくなっている。

 また、社会情勢の変化とともに、家庭の子育て力や地域の教育力の低下が懸念される中、親と親を結びつけ、親と園を結び付けるPTA団体の存在意義も、今まで以上に増している。

 この現状を認識してもらい、PTA活動の円滑な運営のため、団体助成金の増額を要望する。

(関係団体 2016-11-22付)

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