4定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年12月12日)(道議会 2017-03-10付)
四定道議会予算特別委員会(二十八年十二月十二日開催)における中山智康委員(北海道結志会)、安藤邦夫委員(公明党)の質問、および柴田達夫教育長、村上明寛総務政策局長、岸小夜子学校教育局指導担当局長、磯貝隆之学校教育局特別支援教育担当局長、大橋則之施設課長、桜井康仁教育政策課長、鈴木淳義務教育課長、山本純史特別支援教育課長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆学力の向上について
中山委員 教育長は、二十八年度教育行政執行方針において、地方創生を実現するためには、地域の発展を支える教育の役割がますます重要であると述べた。「地方創生とは、国内の各地域・地方が、それぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を形づくること。魅力あふれる地方の在り方を築くこと」とあるが、その中で、教育の役割とは何かを伺う。
桜井教育政策課長 地方創生における教育の役割について。急速な少子高齢化の進展に対応し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある地域社会を維持していくためには、これを支える人材の育成が不可欠であることから、その担い手となる子どもたちには、ふるさと北海道に誇りをもち、互いに支え合いながら、生涯にわたって生き抜く力を身に付けさせることが求められており、こうした期待に応えていくためにも、教育の果たす役割は極めて重要であると考えている。
このため、道教委としては、地域全体で子どもたちを育成するという観点に立って、学校・家庭・地域・行政のつながりをさらに深め、教育環境の一層の充実を図りながら、地方創生の実現を支える教育の推進に取り組んでいく考えである。
―意見―
中山委員 今、コミュニティ・スクールが、あちらこちらで行われているが、学校を、家庭と地域と行政が一体となって進めていくことだと思う。かたや、人口減少が進むにつれて逆の観点も考えられる。学校の人たちが、家庭・地域・行政をまた守っていく、このようなつながりをお互いにつくっていくことが、これから大事な観点だと思うので、ぜひお願いしたい。
中山委員 二定道議会予算特別委員会において、「道教委が全国学力・学習状況調査の目的としている、社会で自立するために必要な学力を身に付けることを目指すとは、どの程度の学力なのか」という私の質問に対して、「学校教育法に規定された義務教育課程における基礎的・基本的な知識・技能や、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等および主体的に学習に取り組む態度」と答弁した。
学力調査は、小学六年生、中学三年生の四月に実施することになっており、そのことをかんがみれば、大切なのは、前学年までに学習した知識等を習得できているかどうかということであり、平均点以上かどうかということよりも、むしろ、小学六年生や中学三年生の学習内容と並行して調査問題として出題された問題を一〇〇%解くことができる力を身に付けさせ、中学校に送り込む、または、高校や就職先に送ることが求められているのではないかと考えるが、道教委の見解を伺う。
鈴木義務教育課長 全国学力・学習状況調査について。全国学力・学習状況調査は、義務教育における各学校段階の到達度を把握するため、小学校第六学年および中学校第三学年を対象として、教科に関する調査内容としては、あらゆる学習の基盤となる教科である国語や算数・数学について、調査対象の前の学年までに含まれる、身に付けておかなければ、後の学習内容に影響を及ぼす内容や、実生活において不可欠であり、常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能などとなっている。
こうした調査の内容は、その後の学習や、社会生活を支える極めて重要なものであり、道教委としては、各学校において、児童生徒の解答状況を明らかにして、きめ細かな指導を行い、小学校および中学校を卒業するまでに各学校段階における基礎・基本として、確実に定着させる必要があると考えている。
中山委員 きめ細かな指導ができているか、または、基礎的・基本的な教育を確実に定着させることができているかということが問題になってくるわけであり、そんな中で、調査の結果、定着が十分でなかった学習内容について、その学年の学習内容を子ども一人ひとりに確実に身に付けさせることが必要だと考える。各学校では、どのような指導を行っているのか伺う。
鈴木義務教育課長 調査結果を踏まえた学校の取組について。各学校においては、本調査を実施した直後から、児童生徒一人ひとりの誤答や無解答等の状況を把握し、弱点やつまずきなどに応じて、例えば、習熟度別指導や少人数指導などによる個に応じた指導、休み時間や放課後における個別指導、さらには、学習内容を確実に定着させる家庭学習の仕方の指導などに取り組んでいる。
また、各学年の学習内容の定着状況を把握できるよう、道教委が計画的に配信しているチャレンジテストを、授業の振り返りや学期のまとめの学習等において活用し、学習内容の確実な定着に努めている。
中山委員 子どもに対しては、基礎的・基本的なことを確実に定着させられているのか。一方で、学校に対しては、平均点ということが一つあるとするならば、以前よりもできているかどうかということは、今までの取組がしっかりと実を結んでいるかどうかということにつながるので、ぜひ、そういったことを検証しながら、事業を展開していただきたい。
本年度の結果報告書の分析結果では、教科に関する調査の正答数の状況について、下位層の割合に改善傾向がみられるということだが、依然として、本道の下位層の割合は、全国を上回っている状況である。
また、正答数がゼロ問や一問の児童生徒もおり、一人ひとりに確実に学力を身に付けさせるという意味では、課題があると考えるが、道教委では、今度、どのように取り組むのか伺う。
鈴木義務教育課長 正答数が少ない児童生徒への指導について。道教委では、これまでも各学校に対して、学習の遅れがちな児童生徒の指導については、学ぶ意欲を高めたり、最後まで粘り強く取り組む態度を身に付けさせたりする指導はもとより、繰り返し学習や指導体制の工夫などに学校全体で組織的に取り組み、正答数が少ない児童生徒にも、基礎的・基本的な学習内容を確実に定着させるなど、学習状況の改善等を図るよう指導してきた。
今後も引き続き、これらの取組の充実を図るとともに、報告書に掲載した調査結果から明らかになった課題の解決に向けた授業改善の参考となる資料や、家庭や地域と連携した学習サポートなどの取組事例を活用するなどして、各学校において児童生徒一人ひとりに応じた指導の一層の充実が図られるよう、学校訪問等を通じて支援していく。
中山委員 非常に大事な観点なので、ぜひ、検討していただきたい。
学校質問紙の結果をみると、小中連携に関する項目について、小・中学校ともに全国よりも低い傾向にある。キャリア教育やアクティブ・ラーニングなど、様々な取組を進めていく上で、小・中学校が連携することがこれまで以上に重要と考える。
北海道には、中学校区に小学校が一校の地域や、複数の小学校から中学校へ進学する地域など、様々な状況があるが、こうした地域性を踏まえ、小学校と中学校の接続を進めていくために、道教委では、どのような取組をしていくのか伺う。
鈴木義務教育課長 小学校と中学校の連携や接続について。道教委では、義務教育の目的や目標に掲げる資質や能力、態度などを養う上で、小学校と中学校が九年間を通じた教育課程を編成し、系統的な教育を行うことは、意義あるものと考えており、これまで、小・中学校間の円滑な接続や相互の連携を一層促進し、児童生徒の学力向上を図ることを目的とした「小中連携、一貫教育実践事業」や、小中一貫教育の効果的な導入に向けた先導的な取組を行う「小中一貫教育推進事業」に取り組んできている。
今後は、これらの事業の充実を図りながら、例えば、小規模な町村で、小・中学校九年間を同じ集団で過ごす地域や、学区が複雑で、複数の小学校の児童が複数の中学校に進学する地域における小中連携の取組など、本道の特性を踏まえた様々な事例を取りまとめ、市町村教育委員会等に情報提供するなどして、小・中学校間の円滑な連携や接続を促進していく考えである。
―意見―
中山委員 小中一貫教育の効果的な導入に向けた先導的な取組や、小中一貫教育推進事業に取り組んでいくということだが、調査紙では、小中の連携がとれていないということなので、モデル事業的な部分もよいが、地域でしっかりと取り組むことが大事であるし、ましてや、これからキャリア教育なども含めて、小学校でやる部分と中学校でやる部分は違うと思うから、そういったことも含め、連携していくことによってスキルアップすることもできる。ぜひ、そこを検討していただきたい。
中山委員 今回、クロス分析を行ったことは、素直に評価するが、ある新聞には、「学校と児童生徒質問紙調査の詳細な分析の結果、自尊感情や地域・社会への関心、読書への興味・関心が高い児童生徒、カリキュラム・マネジメントが確立されている学校の方が平均正答率が高いなどの傾向がみられた」と掲載されていた。
例えば、「自尊感情や地域・社会への関心、読書への興味・関心が高い児童生徒は、教科の平均正答率が高い」という分析結果については、「学習することによって知識が備わった結果、自尊心が芽生えたり、読書への興味・関心が高まったりする」ということも考えられる。
報告書には、「掲載しているクロス集計は、相関関係を示したものであり、因果関係を示したものではない」との注釈はあるが、この報告書を通じて、学校や家庭、地域と学力の課題を共有することを意図しているのであれば、結果だけではなく、考えられる要因なども含めて分析して掲載するなど、より分かりやすいものにすることが重要であると考えるが、いかがか。
岸学校教育局指導担当局長 調査結果の分析について。道教委では、本年度、国の報告書も参考に、授業や家庭学習の教育指導、学校運営などの改善充実に活用できるよう、多角的な観点から分析を行っており、質問紙と学力のクロス分析の結果については、質問項目のうち、学力と一定の関係がみられる主なものを報告書に掲載した。
道教委では、これまでも、報告書の作成に当たっては、市町村教育委員会教育長や校長会等の代表で構成する「学力向上推進協議会」での意見も踏まえ、新たな分析の観点や参考事例を追加するなど、改善を図っており、今後は、道内外の大学や教育研究機関などの有識者からも意見を伺うなどして、本道の子どもたちの学力向上の取組に資するよう、より分かりやすい調査結果の分析や報告書の改善などに努めていく考えである。
―意見―
中山委員 自尊感情が高い生徒が、正答率が高かったとなると、自尊感情を高めるためには、道徳をした方がよいという話になるかもしれない。
ところが、例えば、成績が良いとか、スポーツができるだとか、もてるとか、いろいろなことが考えられるが、そういうことによって、自尊感情が高まるといった方が自然ではないかと思う。
であるから、学力も一つの自尊感情を高める要素になるということで、ぜひ、ここも考えていただきたいと思うし、有識者などの意見も伺うなどということであるから、できる限り、科学的エビデンスに基づいて、しっかりと分析をしていただきたいと思っている。
中山委員 多角的・多面的な調査結果の分析によって、学校の取組や子どもたちの学力・学習状況が一層明らかになったと考える。
今後、道教委として、子どもたちの学力向上に向けて、どのような取組を進めるのか伺う。
柴田教育長 学力向上に向けた今後の取組について。これまでの調査結果を踏まえると、本道の状況は、全国の平均正答率との差が全教科で縮まってきており、本調査の結果等を活用しながら、教育活動の改善を進めている学校が着実に増えてきている。
しかしながら、本年度行った多角的な分析からは、学校が指導を行ったと考えていても、児童生徒がそのように受け止めていない状況や、児童生徒に望ましい生活習慣が十分身に付いていないといった状況が、あらためて明らかになっており、学校の組織的な取組のさらなる充実や家庭・地域との一層の連携の強化などが求められている。
道教委では、こうした本道の子どもたちの学力・学習状況の課題や改善方策を学校、家庭、地域、行政が共有し、子ども一人ひとりが、学ぶことと自分の人生や社会とのつながりを実感しながら、自らの能力を引き出し、主体的に生きていくことができるよう、地域が一体となって学力向上の取組を進めていきたいと考えている。
―意見―
中山委員 今回の質問に当たって、例えば、市町村教育委員会や現場の学校などに話を聞いてきたが、多くの人は、多忙な職務なので、学力を上げるためには、人を増やしてほしいと話していた。
来年度から財政問題などもあって、加配が厳しくなってくるという話も伺っている。財政的には非常に厳しいことも、承知しているから、道教委、市町村教育委員会、学校、家庭、地域が、しっかり明確な役割分担をしていけば、それもクリアできる可能性があると思っている。
全国知事会の見解によると、都道府県の役割は大きく三つに分けて、広域事務、補完事務、連絡調整事務とされているが、多忙を極める現場に対して、補完する意味で、加配することも大事だが、いかにして学力を向上させるか、科学的に検証をしっかりとやって、こういうことだったら学力が上がるというサポートをしていくことが大事だと思う。そういったことを深くやっていただきたい。
そういった意味で、学力テストも使い方によっては、よいものであるから、しっかりと生かして、補完の責任を果たしていただきたい。道教委の今後の活躍を心から祈念申し上げる。
◆学校施設の耐震化について
安藤委員 公立小・中学校の校舎・体育館の天井やガラス、外壁などの非構造部材については、近年の大規模な地震によって、例えば、天井材が落下するなどの被害が生じている。文部科学省が実施した調査によると、非構造部材である、吊り天井の落下防止対策について、全国で三七・二%が対策済みとなっているが、北海道は一七・一%と低く、非構造部材の耐震対策は遅れているという状況にあるのではないか。構造体と同様に早急に対策を進めるべきと考えている。
そこで以下、非構造部材の耐震対策などについて伺っていく。
公立小・中学校の非構造部材の落下防止策について、現時点での状況と対策を伺う。
大橋施設課長 道内公立小・中学校における非構造部材の耐震化の状況について。文部科学省が本年七月に公表した、二十八年四月一日現在の「公立学校施設の耐震改修状況調査」では、道内公立小・中学校の屋内運動場等における吊り天井等非構造部材の落下防止対策の状況については、吊り天井を有するのは三十七市町村、七十棟であり、そのうち、落下防止対策が未実施の吊り天井が、二十八市町、五十八棟であり、本年度は、十七市町、二十九棟で改修工事等を予定している。
また、吊り天井を有していない一千六百五十二棟のうち、照明器具やバスケットゴールの落下防止対策が未実施の屋内運動場等が六十六市町村、四百七十五棟であり、本年度は、二十五市町、百八棟で改修工事等を予定している。
現在、道教委では、関係市町村に対し吊り天井等の非構造部材にかかる耐震対策の年次計画を調査中であり、年内に取りまとめる考えである。
安藤委員 これまで道教委として、非構造部材の耐震対策について、市町村への指導をどのように行ってきたのか伺う。
大橋施設課長 市町村に対する指導について。道教委では、これまで、市町村を対象とした研修会等において、文部科学省が作成した『学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック』に示しているチェックリストを活用した定期的、継続的な点検を要請するとともに、耐震対策を促すための技術的な指導や助言を行ってきた。
また、文部科学省から、「熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備に関する検討会」が取りまとめた緊急提言を参考に、二十八年十月、非構造部材等の耐震点検および耐震対策の推進について、通知があったことから、体育館等の吊り天井については、撤去を中心とした対策を引き続き推進することや、吊り天井以外の非構造部材の落下防止など、安全対策の観点から、優先順位を付けて計画的に老朽化対策を行うなど、耐震化対策の積極的な取組を進めるよう、市町村あて通知した。
安藤委員 熊本地震においては、体育館の天井やガラスなど非構造部材の損壊によって、避難所として使用ができなかったという学校施設もあったものと承知している。
地域の防災拠点としての観点からも、構造体は当然であるが、非構造部材の耐震対策も必要であると考える。
今後、道教委として、どのように取り組んでいくのか伺う。
村上総務政策局長 今後の取組について。学校施設は、児童生徒の生活や学習の場であるとともに、災害発生時には、地域の避難所としての役割も担うことから、安全安心な施設の整備は、極めて重要な課題であり、道教委では現在、直接、市町村を訪問し耐震化の働きかけを実施中であり、その中で関係する市町村に対し、非構造部材の耐震対策についても強く要請している。
また、非構造部材の耐震対策が五〇%未満の市町村に対して、耐震対策の推進について知事と教育長の連名による文書によって要請した。
今後は、市町村において作成する非構造部材にかかる耐震対策の年次計画をもとに、引き続き、技術的な指導や助言を行うとともに、事業の前倒しを働きかけるほか、市町村における耐震化の対策が着実に進められるよう必要な財源措置について国に要望するなど、非構造部材にかかる耐震対策が、可能な限り速やかに完了するよう積極的に取り組んでいく考えである。
―要望―
安藤委員 どうぞ道教委として積極的な取組をよろしくお願いする。
◆特別支援学校について
安藤委員 近年、特別支援学校の在籍者数が増加していることに伴い、道教委では、障がいのある児童生徒の教育環境の確保のために、本年度、札幌市や旭川市、十勝管内に、新たに四校の特別支援学校を開設して、来年度も、渡島管内に一校を開設する予定であると承知している。
こうした中、長年にわたって、知的障がい特別支援学校の整備を要望している苫小牧市については、その人口規模からみても、他の地域と比較して、特別な支援を必要とする児童生徒が少なくはないと考えているが、いまだに整備の実現に至っていないという状況にある。
学校の整備や維持運営については、多額の経費が必要になることは承知しているが、多くの児童生徒が、自分の住む地域で、希望する教育を受けられないという状況は、改善が必要ではないかと考えている。
そこで、苫小牧市への特別支援学校の整備について伺っていく。
二十八年十月末に、苫小牧市教育委員会が、市内の小学校再編に関する住民説明会を開催して、市教委から、市立小学校を閉校して、閉校後の校舎の跡地を活用した特別支援学校の開設を道教委に要請していくという発言があったと承知している。
その後、苫小牧市教委から、道教委に対して要請があったのか伺う。また、要請があったのであれば、その内容についても、併せて伺う。
山本特別支援教育課長 苫小牧市からの要請について。十一月十五日に、苫小牧市教委の教育長が来訪し、苫小牧市において、三十二年度に予定している小学校の統合によって空き校舎となる苫小牧市立明徳小学校を活用して、市の特別支援教育における課題の最重点事項である特別支援学校設置を道教委に求める旨、要望を受けた。
安藤委員 道教委では、本年度、四校の特別支援学校を開設して、来年度は、さらに一校を開設するが、これらの学校整備が、どのような状況によって、決定に至ったのか伺いたい。
山本特別支援教育課長 学校整備の考え方について。道教委においては、これまで、知的障がい高等支援学校の場合は、出願者数の見込みが、圏域内の現行の定員を上回る状況で、既存校の学級増等では対応できないとき、また、高等部を併設する義務校の場合は、児童生徒数の増加によって校舎の狭隘化が進行し、特別教室の多くを普通教室に転用するなどの状況が生じ、教育環境の改善が必要なときに、閉校した学校など既存施設を効果的に活用しながら新設校の整備を行っており、本年度開校した四校および来年度開校する一校は、いずれも、圏域内で定員を大きく上回る出願者数の状況が見込まれたことや、一部の学校で校舎の狭隘化が著しい状況があったことから、必要な受入体制を確保する目的で、整備することとした。
安藤委員 角度を変え、人口規模と学校整備との関係について伺う。苫小牧市の人口は、近年、十七万人前後で推移している。道内の人口十万人を超える自治体における知的障がい特別支援学校の設置状況がどのようになっているのか伺う。
また、人口規模と学校整備との関係について、道教委として、何か基準などがあれば、併せて伺う。
山本特別支援教育課長 人口規模と学校整備の状況について。二十八年一月一日現在、道内の人口十万人以上の都市は、札幌市や旭川市、苫小牧市など九市で、このうち、市内に知的障がい特別支援学校が設置されていない自治体は、江別市、苫小牧市の二市であり、さらに、児童生徒が通学可能な近隣の市町村などにも特別支援学校が設置されていない自治体は、苫小牧市のみである。
道教委としては、人口規模に応じて特別な支援を要する児童生徒がいることは認識しているが、新たな学校の設置に当たっては、先ほど答弁したとおり、出願者数の見込みが、既存校の学級増等では対応できないとき、児童生徒数の増加によって校舎の狭隘化が進行し、教育環境の改善が必要なときに、閉校した学校など既存施設を効果的に活用しながら新設校の整備を行ってきた。
安藤委員 各種の法律等において、障がいのある子どもと、その子どもが学ぶ場の整備について、どのように示されているのか伺う。また、そのことについての道教委としての認識を伺う。
山本特別支援教育課長 法令等における規定について。学校教育法第八〇条では、「都道府県は、その区域内の児童生徒のうち、知的障害者等で、政令で定める程度のものを就学させるに必要な特別支援学校を設置しなければならない」と定められている。
このほか、学びの場所などについては、「障害者の権利に関する条約」第二四条で、「インクルーシブ教育システムとは、障がいのある者とない者が共に学ぶ仕組みであり、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられることが必要」という趣旨が示されているほか、「北海道障がい者条例」の第一五条で、「障がい児の希望などに応じた教育および保育が受けられるようにすること」と規定されている。
道教委では、こうした各種の規定の趣旨も踏まえ、できるだけ身近な地域において、障がいの種別などに応じた専門的な教育を受ける機会を確保するという観点に立ち、児童生徒の障がいの状況や本人・保護者のニーズを把握しながら、必要な受入体制の整備を図ることが重要と考えている。
安藤委員 道教委の認識は分かった。
知的障がい特別支援学校の小・中学部への就学に当たって、現在、苫小牧市は、平取養護学校の通学の区域に含まれており、特別支援学校への就学を希望する苫小牧市の児童生徒は、平取養護学校の寄宿舎に入り、そこで学んでいる。
平取養護学校は、昭和五十三年度に設置されて以来、これまで長年にわたって、東胆振・日高地域における特別支援教育の充実・発展に本当に多大な役割を果たしてきている。日高管内の児童生徒の教育環境確保、あるいは、寄宿舎生活を通じて、社会生活を身に付けるといったニーズもあることも踏まえると、平取養護学校は、今後も必要であろうと考えている。
そこで、苫小牧市と平取町との距離や特別支援学校への就学状況など、市町村間の関係において、道内の他の地域で同様の例があるのかどうかを伺う。
山本特別支援教育課長 就学環境について。本年五月一日現在、道内の知的障がい特別支援学校のうち、高等部を併設する義務校において、自宅から通学できる範囲に特別支援学校が設置されていないなどの理由から、寄宿舎に入舎している児童生徒は三百三人おり、これらの児童生徒の自宅から学校までの距離は、地域によって、それぞれ大きく異なる。
苫小牧市に在住する児童生徒については、通学区域において、平取養護学校が就学すべき学校となっており、現在、五十五人が在籍しているが、市内中心部から学校までの距離が約五十六㌔㍍あることから、全員が寄宿舎を利用している。
このように、通学が困難であることなどの理由で、同一の自治体から五十人を超える児童生徒が寄宿舎を利用しているケースは、苫小牧市のみである。
安藤委員 苫小牧市に自宅がある多くの児童生徒が平取養護学校に就学している状況があり、本年度は、五十五人である。
児童生徒や保護者の中には、「地域の中で学びたい」「自宅から通学をしたい」という気持ちをもつ方もたくさんいる。そうした児童生徒の中には、障がいが重くても、地元の小・中学校に就学しているという実態があり、本年度は四十三人と承知している。
このように、地元に特別支援学校がないために小・中学校に就学するというケースがあることについて、道教委として、どのように認識しているのか伺う。
磯貝特別支援教育担当局長 就学の在り方について。児童生徒の就学に当たり、就学先を小・中学校とするか、特別支援学校とするかについては、学校教育法において、保護者の意見を尊重する旨の規定があることから、保護者の意向によるところが大きくなるが、通学できる範囲に特別支援学校が設置されていない場合は、希望に沿う就学が困難となっているケースもあるものと承知している。
道教委としては、各地域において、小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場が用意され、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに対し、最も的確に応える指導や支援が行われることが大切であると考えている。
安藤委員 特別支援学校の整備の考え方、法令との関係、他地域における例など、様々な観点から質問させていただいたが、多くの児童生徒や保護者が、障がいに応じた専門的な教育を受けたい、受けさせたいという希望をもつ中で、特に、小学部や中学部の段階の年齢の子どもたちやその保護者には、自分の住む地域の中で教育を受けたいという気持ちをもつ方が多いと考える。
こうしたことを踏まえ、苫小牧市への知的障がい特別支援学校の整備について、道教委として、どのような考えをもっているのか、教育長の所見を伺う。
柴田教育長 苫小牧市における特別支援教育について。苫小牧市への特別支援学校の整備については、これまで、苫小牧市や、苫小牧地方総合開発期成会から熱心な要望をいただいており、さらに、先般、苫小牧市教委から、活用施設について、具体的な提案もなされた。
道教委としては、できるだけ身近な地域において、専門的な教育を受ける機会を確保するという観点で、必要な受入体制の整備を進めてきており、苫小牧市からの要望に対しては、東胆振・日高地区全体における障がいのある児童生徒の就学状況や、今後の在籍者数の推移を踏まえるとともに、苫小牧市内を通学区域としている、平取養護学校の役割や機能等を十分考慮しながら、児童生徒や保護者のニーズ、希望する就学先などについて、より一層の把握に努め、今後の学校配置の在り方について、検討していきたいと考えている。
―指摘―
安藤委員 これまで、様々な観点で答弁をいただいたが、そこから分かることは、苫小牧市の障がいのある児童生徒が、全道の他の地域との比較において、基礎的な教育環境の整備という点で、一定の課題があり、本来のあるべき姿にすべきだと言わざるを得ない。
障がいのある児童生徒が、希望する教育を受けるために、小学校の段階から親元を離れて、寄宿舎に入らなければならないということは、本人や保護者などの当事者にとってみると、非常につらい、厳しい環境にあると言っても過言ではない。
教育長からは、「児童生徒や保護者のニーズ、希望する就学先などについて、より一層の把握に努め、今後の学校配置の在り方を検討する」と力強く答弁いただいた。ぜひ、就学の実態はもとより、児童生徒や保護者の心情なども十分把握しながら、苫小牧市や胆振・日高地区における特別支援教育のさらなる充実に向けて、前向きに検討していただくよう強く申し上げる。
(道議会 2017-03-10付)
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