高・特校長会議の道教委所管事項説明⑤学校経営の充実を要請 社会に開かれた教育課程へ―北村学校教育局長
(道・道教委 2017-05-17付)

校長会議説明・北村学校教育局長
社会の期待に応える教育の実現に向け協力を呼びかけた

 総務政策局から順次、各局や推進室の所管事項のうち、特に、学校経営上、重視していただきたいポイントについて、すでに通知等で示している事項や昨年度からの継続事項なども含め、あらためて説明させていただいた。

 各校長先生においては、すでに、これらの事項を実現するための方策を考え、取組を開始していただいているものと理解しているが、会議の中であらためて、学校の経営方針や計画などが、すべての教職員の段階まで落とし込まれ、具体の校務や授業などを通じて、生徒に届く学校体制となっているかという観点で自己点検していただくとともに、不十分な部分については、校長先生同士で協議などしていただくことを通して、改善の手立ての確実な実行を期待する。

【公立学校全般にかかる事項】

▼教職員の資質・能力の向上

 道教委では、昨年改正された教育公務員特例法に基づき、研修の見直しを進めており、本年二月に、三十年度以降の「教職員研修体系のイメージ」を示した。

 今後は、「教員育成指標」および「教員研修計画」の策定のほか、カリキュラム・マネジメントに関する研修など、基本研修の内容や方法の改善を図り、一層の質的向上に努めていくこととしており、適宜、情報提供も行っていくので、その動向に注視願う。

 あらためて申し上げるまでもなく、教職員一人ひとりの資質・能力の向上は、生徒に提供する教育の質の確保・向上に直結することから、個々の教職経験年数や年齢にかかわらず、すべての教職員が今日、学校教育に対する社会からの期待や教育改革の背景を深く理解し、指導力を高めることが強く求められている。

 各校長先生においては、このようなことを踏まえ、学習指導要領改善の方向性などと関連付けた教職員の資質・能力の向上に向けた取組や、子どもたちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程の編成、実施、評価、改善をどのように行うのかについて、学校経営計画などに、誰が読んでも分かりやすい表現で、具体的に明記した上で実行していただくことが重要である。

 また、日々の教育活動の中で、教職員相互に指導力を高め合う意識や、社会と学校との連携・協働を重要とする意識などを職場に醸成する取組を、学校の実態に基づき工夫して行い、教職員一人ひとりの資質・能力の向上に努めていただきたい。

 併せて、研修への積極的な参加や研修成果を還元する機会の設定はもとより、研修に参加する教職員に対して、学校課題を共有し研修を通して、改善方策を主体的に考えさせる指導もお願いする。

▼コミュニティ・スクール

 コミュニティ・スクールを導入し、地域や社会の参画、協力を促進することは、学校運営の改善につながるとともに、学校の魅力化や特色づくりにも資するものである。

 現在、道内の高校におけるコミュニティ・スクールの指定状況は、別海高校、知内高校、市立札幌大通高校の三校であるが、道教委では、今後、学校運営協議会の設置の拡大について基本方針を定めるとともに、すでに小・中・高校の一貫した教育体制を構築しているなどの学校で、希望する学校から先行して、学校運営協議会を設置していく考えである。

 各学校においては、国の動向や道教委の基本方針などを踏まえ、学校運営協議会の設置に関する地域等の意見などを、様々な機会を活用して把握しながら研究を進めていただくようお願いする。

▼「北海道みんなの日条例」を踏まえた教育活動の実施

 本年三月三十一日に、「北海道みんなの日条例」が公布され、七月十七日が「北海道みんなの日」として定められた。

 本条例の趣旨は、道民が、北海道の歴史や自然、文化、産業等についての理解や関心を深め、北海道の価値をあらためて認識するとともに、道民であることを誇りに思う心を育むことによって、将来にわたり、より豊かな北海道を築いていくことを期するものである。

 また、道外においても、北海道の価値が、広く認識される契機となることを期するものでもある。

 各学校においては、こうした趣旨にかんがみ、「北海道みんなの日」を含む七月に、本条例の趣旨にふさわしい教育活動を実施していただくようお願いする。

▼いじめの問題への対応

 先般、道立学校で発生した、いじめによる重大事態の疑いがある事案については、道教委による第三者委員会の調査の結果、通常行われるような行為であっても、児童生徒にとって心身の苦痛を感じる場合には、「いじめ」に該当するものとして受け止めること、当該児童生徒やその保護者への積極的な支援策の提案や当該児童生徒などに寄り添った対応が十分に行われていなかったことなどが指摘された。

 道教委も、早期からの学校支援体制の不十分さが指摘され、その改善を図ることとしている。

 各学校においては、本年四月十八日付通知で示した再発防止のための提言を十分に踏まえ、全教職員が、「いじめ」を訴える生徒や保護者の心情に寄り添った対応や、学校が定めた基本方針に基づいた対応が、確実に実践できるよう、校内で必ず再確認していただきたい。

 また、教育局や市町村教委への早期の相談も意識していただき、教育行政と学校とが一体となった取組が推進されるようお願いする。

▼学校体育活動中の事故防止

 本年三月、栃木県の高校の山岳部の生徒および教員が、雪崩に巻き込まれ亡くなるという大変痛ましい事故が発生した。

 生徒の生命が失われることは、決してあってはならないことであり、各学校においては、本年四月十三日付通知「学校における体育活動中の事故防止等について」に添付しているチェックリストを活用するなどして、体育活動全般について、生徒の安全に配慮した活動となっているかをあらためて検証し、必要な改善があれば、早急に行っていただくようお願いする。

▼ICTの活用

 現在は、社会生活の中でICTが日常的に活用されているが、第四次産業革命とも言われる、進化した人工知能が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、今後の社会や生活を大きく変えていくとの予測がなされている。

 このような社会の変化を踏まえると、今後、ICTの活用範囲の広がりや求められる活用能力のレベルは、格段に向上するものと思われ、学校の授業においても、生徒が日常的にICTを活用して、様々な課題を主体的・協働的に解決する学びや、生徒の特性に応じたICTの効果的な活用の研究などが不可欠となっている。

 また、次期学習指導要領では、小・中・高校を通じて、プログラミング教育の充実も示されており、道教委としても、総務政策局長が説明したとおり、広域分散型の本道の地域性なども踏まえ、ICTを活用した教育については、環境整備を含め、重点的に推進していくこととしている。

 今後は、現在取り組んでいる国や道の各種事業の推進と成果の普及に努めていくこととしており、各学校においては、研究成果を参考に、ICTの効果的な活用などについて、校内研究に努めていただき、道教委にも情報提供願いたい。

【特別支援教育】

▼特別支援学校における教育

 特別支援学校においては、在籍する幼児児童生徒の障がいの重度・重複化、多様化が進行する中、例えば、医療的ケアを必要とする子どもが増加するなど、一人ひとりの障がいの状態の把握や、それを踏まえた適切な指導や支援の充実、さらに、福祉や医療との連携がこれまで以上に重要になるなど、学校全体・教職員全体が、高い専門性をもって教育活動に当たることが求められている。

 一方で、特別支援学校は、自校の教育の充実のみならず、地域の特別支援教育の充実・発展のため、センター的機能を発揮することも期待されている。

 こうした中、特別支援学校による「パートナーティーチャー派遣事業」では、小・中学校や高校等の要請に応じ、派遣先で研修支援や助言を行うなどしているが、派遣を受けた学校において、校内体制や情報共有が不十分である、教職員の異動等の際、十分な引き継ぎが行われず、助言等が一過性のものに終わってしまうなどの状況も報告されている。

 道教委としては、こうした状況を踏まえ、地域全体における特別支援教育の一層の充実に向け、小・中学校や高校等に対し、校内体制の充実や適切な情報共有が行われるよう周知を図っていくこととしていることから、引き続き、センター的機能の発揮に積極的に取り組んでいただくようお願いする。

 また、現在、国の動向として、二十七年十二月の中央教育審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質向上について」を踏まえ、免許法附則第一六項の廃止や、概ねすべての特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有を目指す動きがある。

 先ほど申し上げたとおり、児童生徒の障がいの重度・重複化や多様化が進み、これまで以上に教職員の専門性の向上が求められる中、免許状の取得促進は、道教委としても重要な課題ととらえており、該当する教員に対し、免許法認定講習の積極的な受講を働きかけていただくようお願いする。

【高校教育】

▼外国語教育・国際理解教育

 昨年度から、本道の将来を担う生徒の国際的な視野を広げ、コミュニケーション能力を養うため、ICTを活用して海外の青少年と交流を行う「U―18未来フォーラム」を実施しているが、通信環境に課題がある事例もみられたことから、本年度は、ICT環境を改善し、一層の充実に努めていくこととしており、指定校においては、一層の充実をお願いする。

 本年度も、指定校の実践を普及する「地区フォーラム」を開催することから、各学校においては、積極的に生徒を参加させていただくなどして、生徒の外国語によるコミュニケーション能力を向上させる学習機会の確保に努めていただきたい。

 また、今後、社会生活や仕事場面などにおいて、世界とのかかわりが一層拡大することが想定されることから、昨年度、「高校卒業までに英語で日常的なコミュニケーションができるようにする」という道教委独自の目標を設定した。

 その目標を踏まえ、本年度から三年間、生徒の英語力の向上を図るため、「高校英語力向上事業」を実施し、各年度、職業学科を含む十校程度を指定して、職業生活、社会生活における英語の活用場面について、「日常的な会話」「国内での海外企業との取引やネットでの情報発信」「外資系企業への勤務や海外生活」の三つのタイプを設定し、学習プログラムの開発や授業改善に取り組むこととしている。

 各学校においては、指定校ごとに編成するプロジェクトチームへの教員の派遣に協力願うとともに、指定校の取組を参考に、実践的な英語力の向上を図る取組を推進していただきたい。

▼道高校学力向上実践事業

 道教委では、国の教育改革の方向性と軌を一にし、すべての高校生が、学習意欲を喚起させ、自らの学習の改善を図り、必要な資質・能力を確実に身に付けることができるよう、「道学力向上実践事業」において、モデル別の教材の開発や学力テストの作成のほか、授業実践講座を実施するなどして、生徒の学力や教員の教科指導力の向上に向け取り組んできた。

 また、関連する事業として、札幌北高校、函館稜北高校、旭川東高校、釧路湖陵高校の四校を拠点校に指定して、国の「教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善に関する実践研究」に取り組んでいる。

 本年度は、拠点校の教員が、近隣の高校五校程度を月一回訪問し、カリキュラム・マネジメントの構築に向けて協働して検討を行い、組織的なカリキュラム・マネジメントの実現に向けた取組の普及に努めることとしている。

 各学校においては、こうした取組を積極的に活用していただきたい。

▼高校における特別支援教育

▽特別支援教育の充実

 道教委が昨年度実施した調査において、高校では、通常の学級に在籍し特別な教育的支援を必要とする生徒に対して、「個別の指導計画」を作成している割合は、全体の約九〇%となっているものの、「個別の教育支援計画」を作成している割合は、約四〇%にとどまっている状況である。

 各学校においては、本年三月に、道教委と道の保健福祉部が作成した『支援体制づくり取組事例集』を参考に、可能な限り、「個別の教育支援計画」を作成するなどして、生徒の学習上、または、生活上の困難さへの必要な指導や支援の充実に努めていただきたい。

 また、特別支援教育センターが五月に各管内で実施する「特別支援教育基本セミナー」や、道教委が八月から十月にかけて各管内で実施する「特別支援教育充実セミナー」に、積極的に参加していただきたい。

▽高校における通級による指導

 国においては、学校教育法施行規則の一部を改正し、三十年度から、高校等において、言語障がい者や自閉症者、情緒障がい者など、障がいのある生徒のうち、当該の障がいに応じた特別の指導を行う必要がある者を教育する場合には、特別の教育課程によることができることのほか、設置者の定めるところによって、ほかの高校等において受けた授業を、当該高校等において、当該の特別の教育課程にかかる授業とみなすことができることになった。

 道教委においては、今後、庁内に検討委員会を設置して、高校における生徒の実態等を把握するとともに、本道における通級指導の在り方等を検討することとしている。

▼小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業

 本事業については、道内各地において人口減少が進む中、地域の教育力を生かして地域の未来を担う子どもたちを育てる教育活動として、各自治体や地域の産業界も注目しており、高く評価していただいている。

 道教委では、本年十月に「道キャリア教育サミット」を開催し、指定地域の取組および成果を広く普及することとしている。

 また、同様の取組が全道に広く普及できるよう、各指定校の取組を分析し、地域と連携した教育活動の進め方について、総合的にまとめた手引きを作成することとしている。

 本事業は、次期学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」を具現化する方策の一つであると考えており、各学校においては、本事業の取組や成果を自校の教育に活用するほか、地域の教育委員会や小・中学校、地元企業などと協働して、各地域におけるキャリア教育のさらなる充実策を提案するなどの主体的な取組をしていただきたい。

▼部活動の充実

▽部活動指導員

 国においては、学校における部活動の指導体制の充実のため、本年三月に、学校教育法施行規則の一部を改正し、技術的な指導に従事する部活動指導員について規定しており、道教委としては、法改正を踏まえ、本道における部活動指導員の在り方について、校長会を含めた関係者の意見等も伺いながら、今後、検討することとしている。

▽部活動の適切な実施

 本道ではこれまで、「部活動指導の見直しにかかる申し合わせ」において、

①週一日程度は休養日を設けること

②授業日においては、放課後の二~三時間程度で活動が終わるようにすること

③休日においては、半日程度でも効果的な活動ができるようにすること

④可能な限り、複数顧問の配置を検討すること

 ―を掲げ、各学校で取り組むこととしている。

 各校長においては、申し合わせの趣旨を踏まえた取組が、年間を通して行われるよう、校内体制の不断の点検や効果的な指導方法を教職員で意見交換するなどの職場意識を醸成していただくなどして、部活動の適切な実施に努めていただきたい。

          ◇          ◇          ◇

 最後に、学校経営にかかわって、ぜひ校長先生方に留意いただきたいことを申し上げる。

▼次期学習指導要領改訂の背景となる時代認識と「社会に開かれた教育課程」を実現させる学校経営

 新しい学習指導要領等は、二〇二〇年から、その十年後の二〇三〇年ごろまでの間、子どもたちの学びを支える重要な役割を担うことになるが、私たちが、学校教育の将来像を描くに当たっては、この二〇三〇年ごろの社会の在り方を見据えながら、その先も見通した姿を考えていくことが重要と言われている。

 私たちが押さえておくべき時代認識であるが、近年、顕著となってきているのは、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人間の予測を超えて進展するようになってきており、先にICTの活用について述べたとおり、第四次産業革命とも言われる時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測がなされている。

 また、経済や文化など、社会のあらゆる分野でのつながりが国境や地域を越え、多様な人々や地域同士のつながりは、ますます緊密さを増してきている。

 このように、加速度を増す社会の変化は、どのような職業や人生を選択するかにかかわらず、すべての子どもたちの生き方に影響するものとなっている。

 今後は、特定の既存組織のこれまでの在り方を前提としてどのように生きるかだけではなく、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くのかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力の育成が社会的な要請となっている。

 しかし、こうした力の育成は、学校教育が長年、「生きる力」の育成として、目標としてきたものと共通する部分も多くあることから、学校と社会とが認識を共有し、相互に連携することが求められている。

 昨年十二月の学習指導要領等の改善および必要な方策等についての中教審答申では、「社会に開かれた教育課程」を目指すべき理念として位置付け、これによって、教職員間、学校段階間、学校と社会との間の相互連携を促し、さらに学校種などを越えた初等中等教育全体の姿を描くなど、二〇三〇年の社会と、さらに、その先の未来において、一人ひとりの子どもたちが、よりよい人生とよりよい社会を築いていくために、教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割が示された。

 現在、道内各地において、地域と大学や企業等とが協働した教育課題解決に向けた提案型プロジェクトや、高校教育魅力化に向けた研究組織が立ち上がるなど、高校教育等に対する関心の高まりがみられている。

 このことは、今日、学校教育に求められている「よりよい学校教育を通じて、よりよい社会をつくるという目標を学校と社会が共有する」営みの一つの切り口になるのではないかと考えられる。

 こうしたことを踏まえ、校長として、学校外からの学校に対する意見や提案などを、学校と社会とが連携・協働を図る契機ととらえ、自校や地域の教育の充実に向け、「社会に開かれた教育課程」の理念や学習指導要領等の改善の方向性を具体化する学校経営を進めていただくよう期待している。

▼学校経営指導等の充実

 日々、学校経営に尽力いただいているものの、今日、学校が抱える課題は、複雑化・多様化するとともに、学校経営に求められることが高度化してきており、道教委としては、学校経営への支援体制の整備が急務と考えている。

 そこで、本年度から、学校経営の実態を的確に把握するほか、実践的な指導助言を迅速に行うなど、教育指導監の学校経営指導を中核としながら、本庁と教育局とが一体となって取り組む体制づくりを進めていきたいと考えている。

 本年度は、そのスタートの年として、まずは、高校を対象に、主幹を一人、石狩教育局に配置し、例年よりも早い時期に採用校長先生の学校を訪問し、学校経営の基本事項について助言するとともに、経営相談に乗るなど、採用校長先生の学校経営を支援する体制を整備した。

 本庁の高校の教育指導監については、経験校長先生への学校経営指導や経営相談に対応させていただくこととしている。

 すでに、高校、特別支援学校ともに日程の調整も終わり、このあと、学校訪問が始まるが、学校経営上の課題に関する協議の充実によって、学校経営が一層改善・充実することを期待する。

 生徒の未来をつくり、社会の期待に応える学校教育の実現に向け、校長の皆さんと力を合わせて取り組んでいく考えである。各学校の取組の充実を心より期待申し上げる。(連載おわり)

(道・道教委 2017-05-17付)

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