小樽芸術村の所蔵品道内初公開 岸田劉生の作品ら9点 18日まで―三岸好太郎美術館(道・道教委 2017-06-06付)
花をモチーフとした作品を鑑賞する来館者
道立三岸好太郎美術館(愛称・mima)は、「小樽芸術村×mima絵画コレクション―三岸好太郎とその時代」を開催している。小樽芸術村の所蔵品を同館の所蔵品と合わせて紹介。岸田劉生、中川一政など三岸好太郎の画業に影響を与えた作家や、藤田嗣治、棟方志功など同時期に活躍した作家の作品九点を、北海道で初めて公開する。十八日まで。
同館は、一九六七(昭和四十二)年、札幌出身の画家・三岸好太郎(一九〇三~三四)の作品二百二十点が遺族から寄贈されたことをきっかけに設立し、ことしで開館五十年周年を迎える。
今回のイベントは、小樽芸術村の所蔵品を道立近代美術館と道立三岸好太郎美術館の二つの会場で、各館の所蔵品と合わせて紹介するもの。
このうち、三岸好太郎美術館では岸田劉生、中川一政など三岸の画業に影響を与えた作家や、藤田嗣治、棟方志功など三岸と同時期に活躍した作家の作品九点を、北海道で初めて公開。
一九二三(大正一二)年、春陽会第一回展で入選し画壇デビューを果たした《檸檬持てる少女》、翌年の第二回展で春陽会賞を受賞し一躍美術界で脚光を浴びた《兄及ビ彼ノ長女》、後の妻となる当時画学生の吉田節子がモデルの《赤い肩かけの婦人像》などを展示。
《檸檬持てる少女》は、日本近代洋画の巨匠・岸田劉生への傾倒がうかがえ、同時にフランスの画家アンリ・ルソー風の素朴な描き方で、色彩の対比を生かしている。
岸田劉生の作品は、《黒き土の上に立てる女》《婦人像》を展示。このうち、《黒き土の上に立てる女》は、平成二十四年に五十一年ぶりに世に出たあと、小樽芸術村の所蔵作品となったもの。豊かな乳房をもち地面を踏みしめた力強い女性像によって、母性と大地の豊穣とを象徴的に表現した作品。
一九二六(大正十五)年、新たな画風を探し求め出かけた中国で「姑娘」(クーニャン)を描いた《支那の少女》や《茶畑》、さらに、画家として大きな転換期を迎えた作品として、道化を描いた《面の男》、《道化役者》なども展示。
また、花をモチーフとした三岸好太郎の《花と蝶》や《花》と中川一政の《薔薇》《向日葵》を並べて展示。一九三二(昭和七)年に札幌の豊平館で開催された個展に出品した《花と蝶》は、三岸の作品の中でも、黄・白・緑・紫など色彩の交響がとりわけ華やかな一点で、蝶をモチーフにした最晩年の傑作につながる重要作品の一つ。一方、中川一政は力強い色の線や幾何学化されたフォルムが用いられ、さらに壺の絵柄と組み合わせることで、花の生命力の表現とともに、絵画空間における造形効果を追求する姿勢がうかがわれる。
同時代に生きながらも、直接出会うことはなかった三岸好太郎と藤田嗣治。その間接的な接点を「猫」を通して浮かび上がらせた。三岸の《猫》は一九三一(昭和六)年の作品。擬人化された姿、白襟の赤い服、顔の毛模様など、十九世紀末のフランスの作品『長靴をはいた猫』に近似するイメージが見いだされることが最新の研究で明らかになった。一九二〇年代後半の作と考えられる藤田の《仰向けの猫》。パリの画壇で「素晴らしい乳白色の地」とたたえられた藤田独自のスタイルが油彩画のみならず版画においても追求されていることがよく分かる。
また、三岸の《上海風景》《のんびり貝》、彼と同時期に活躍した梅原龍三郎の《カンヌ港》、藤田の《仏印河内郊外》を紹介するセクションも設けている。
棟方志功の代表作の一つで、魅力的な力強い彫り、人物の精神性などとともに、画面に装飾性が豊かに息づいている《二菩薩釈迦十大弟子》。太い輪郭線や暗い背景に浮かび上がる人物が描かれ、輝くような男性の背面には装飾的表現への傾きが感じられる三岸の《男二人》とともに展示。
一九三三(昭和八)年、大胆で実験的な手法に取り組んだ、ひっかき技法によって表した《オーケストラ》や抽象的作品《コンポジション》なども展示している。
十日に行われる「土曜セミナー」では、藤田嗣治の作品について学芸員が解説する。午後三時から。
また、祝日と午後のイベント開催日を除く毎日、午後一時から三時まで、ボランティア解説員が三岸好太郎の作品を解説する。
十八日まで。毎週月曜日休館。
観覧料は一般五百十円、高大生二百五十円、中学生以下と六十五歳以上は無料。高校生は毎週土曜日は無料。
問い合わせは、同館(電話〇一一―644―八九〇一)まで。
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棟方志功の作品も展示している
(道・道教委 2017-06-06付)
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