【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】№24総合的な学習の時間編 北海道生活科・総合的な学習教育連盟(礒島年成委員長)「探究的な学習 充実のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-23付)
◆振り返りから自らの考えや課題を明らかに
総合的な学習の時間では、〈課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現〉という探究のプロセスを繰り返す学習過程=図1=を大切にしている。今回の学習指導要領の改訂では、「深い学び」とも関わって、この探究的な学習の一層の充実が求められている。どのようにするとさらに充実させることができるのか具体的に考えてみたい。
ポイント1 探究の過程を繰り返すように単元を構想する
単元のスタート時に、教師は見通しをもって「探究のプロセス」を位置付けて単元を構想する必要がある。その時、大切にしたいことは次の3点である。
①どのような対象と出会わせるかを吟味する。子どもにとって身近なものか、繰り返し関わることができるか、関わりをもつことのできる人がどの程度いるか、どのような体験が可能か、学習活動に広がりや深まりが期待できるかなどの視点から考えていく。
②子どもがどのように学んでいくのかを見通す。対象との出会いをどう工夫するか、単元のどの場面でどのような体験を取り入れ、どのような人と関係をつくっていくことができるかを明らかにしていく。
③どのような資質・能力が身に付くのかを明確にする。資質・能力の3つの柱(「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」)を基にして学習を見通し、具体的な子どもの「深い学びの姿」を想定していく。
ポイント2 課題を連続的に発展させる
子どもが自ら課題意識をもち、その意識が連続的に発展していくように学習を展開していきたい。その際には子どもに任せきりとならないために、教師が子どもの疑問や問題意識を引き出すように関わることが重要である。
例えば、理想と現実との「ギャップ」や、これまで思っていたこととの「ずれ」や「隔たり」、対象への「憧れ」や「可能性」を感じさせるように工夫することが考えられる。その方法として「今はこういう状況だけど、本当はどうあるべきか」と子どもに問いかけたり、「あんなふうになってみたい、自分もやってみたい」と思える人との出会いを計画したりすることもできる。
子どもが単元を通じて課題を意識しながら活動を進めるために大切になるのは、活動の振り返りである。振り返ることで「ここは分かったけど、この部分ははっきりしない」「他にも疑問が湧いてきた」「上手くいかなかったけど、原因はこれだと思う」といったことに気付き、自らの考えや課題を新たにし、探究の過程を繰り返すことにつながっていく。
ポイント3 情報を整理・分析することで思考を深める
子どもは、アンケートやインタビュー調査などを行い、たくさんの情報を集める。それを課題解決に向けて整理し、分析していく。この時に大切なのは、子ども自身が何をどう考えるとよいのかをはっきり分かっているということである。そのために、教師が「AとBを比較して考えてみてはどうか」「何が大事なことなのか順序付けてみてはどうか」などと、「考えるための技法(比較する、順序付ける、関連付ける等)」を子どもに示すことも必要である。こうした学習を積み重ねていくうち、子ども自身が「今回はこれとこれを比較してみよう」「こんな視点で分類して考えよう」というように情報を適切に整理し、分析できるようになっていく。
この時、座標軸やピラミッドチャートなどの思考ツール(図2)も役に立つ。思考ツールを活用すると自分の考えが可視化され、漠然としていた考えをはっきりさせることができる。また、協働的な学習にも効果的である。グループで話し合う時に活用すると、図を指しながら身を乗り出して「この考えはこっちと似ている」「これとこれは結びつくのでは」などと説明し合う姿が見られるようになる。考えるための土台がはっきり見える、互いの考えを組み合わせることが容易にできる、話し合いが活性化されるなど、学習の過程で一人ひとりに新たな考えが生み出され、次の課題にもつながっていく。
総合的な学習の時間では、「探究のプロセス」を大事にしながら、初めは単に興味本位で行っている活動も、だんだんとそのことが頭から離れなくなり、いつしか探究せずにはいられなくなる、そんな学習を目指したいものである。
(北海道生活科・総合的な学習教育連盟札幌地区 札幌市立北九条小学校 教諭 能登貴章)
※次回は北海道技術・家庭科教育研究会「学び合う体制づくりのポイント」を掲載します。
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(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-23付)
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