【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.25中学校技術・家庭科編技術分野①北海道技術・家庭科教育研究会(岩本正美会長)「学び合う体制づくりのポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-24付)
栄養教諭とのチーム・ティーチングによるICTを活用した家庭科授業で効果を上げる
◆培ったノウハウを若手教員に伝える
【技術・家庭科の現状から】
先日、教科の研修会に参加した折、新採用の技術・家庭科教員2人から「生徒から、先生の授業は教科書とワークだけの授業なのでつまらないと言われました」「調理実習をしなければならないが、どのように進めたらよいのかわからない」という発言があった。また、50歳代のベテラン技術科教師からは、「今年度着任した学校は規模が小さく、技術・家庭科は1名しかいないため、この歳になって初めて免許外で家庭科を教えることになった。教材研究が大変で疲れている。勘弁してほしい」と。
これが、学校現場における「技術・家庭科」の実情の一端である。実は私自身も50歳にして初めて免許外である家庭科の授業を担当することとなり、その授業づくりに苦労している一人である。
今後さらに小規模校が増え、技術・家庭科合わせて1名体制の学校が増えると予想される中、これは新採用教員のみならず、中堅教員やベテラン教員にも関わる大きな課題である。
そこで、未経験の教科を担当した場合の授業力向上について、私の経験を伝えていきたい。
ポイント1 ネットワークづくり
技術・家庭科が1名体制で、校内に同一教科の教師がいないため、教科に関することを学べる環境がない場合は、積極的に外へ目を向け、情報収集し、教科の指導法などについて相談できる人脈(ネットワーク)づくりに努めるべきである。
例えば、「教科研究団体に所属する」「近隣他校の研究発表会(公開授業)に参加する」「地方で開催する全道大会・全国大会などの研究大会に参加する」等の方法がある。
私が勤務する札幌市では、教育委員会が実施している「札幌市教育研究推進事業(札教研事業)」があり、全教職員が教科等の研究部会に所属し、年2回(春・秋)の全体研究会を実施している。そこでは、公開授業を通して、指導法や日常の実践に関する様々な情報を交流し研修を深めている。
今年度の研究会では、若手教員から「パワーポイントの授業に関するワークシートは?」や、「木工作品作りの際に効果的なワークシートは?」など日常の授業に関する話題が出され、ベテラン教員からは、「明日資料を送ります」「近くの学校の先生が放課後に向かえば良いのでは」などの助言があり、学校間の仲間意識が高まり、教科のネットワークが構築された。近隣の学校と連携した「学び合い・助け合い」は大変有効である。
ポイント2 Webコンテンツの活用
多忙な業務や近くに学校がないなどの理由から学校外で学べる機会が得られない場合は、Webコンテンツの活用と言う方法がある。Web上には、指導案・実習題材・ワークシート・動画等、すぐに活用できる有効な情報が豊富にある。私も、家庭分野「幼児の遊ぶおもちゃづくり」はWeb上の題材を参考にした。
なお、Webコンテンツを活用する場合は、著作権の扱いに注意し、必要に応じてサイト管理者に許諾を得ることや、自校生徒の特長に合わせて自分なりにアレンジを施すことが大切である。
ポイント3 ICT機器の活用
授業者が、教科書やワークブックなどを活用しながらの説明を主とする授業は、生徒にとって面白みに欠ける授業になりやすく、興味関心を持続させ、生徒が学びの主体となる授業展開はあまり期待できない。平成33年度から全面実施となる次期学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」が強調されており、その学びの実現にむけて、授業者にはより質の高い授業が求められる。
そこで、有効な手段として「ICTの活用」がある。例えば、導入段階では、画像や動画等の提示により、授業に対する興味関心を高めることで、学習課題の設定につながりやすくすることが可能となる。また、生徒によるICT機器の活用は、学習課題の解決に迫るツールとして効果が期待できる。
例えば、「のこぎり引き作業を互いに撮影し、客観的な振り返りや相互アドバイスにより、自己課題の明確化と課題解決に向けた追究」が可能となるなど、大画面テレビ・実物投影機・タブレット端末等が整備されている場合は、それらを組み合わせることで更に効果的な授業づくりに活用できる。
全国的にICT機器の整備が進み、授業におけるICTの活用事例は、Web上に多く掲載されている。全国各地で開催されているICTセミナーからも情報収集することができる。ICT機器が整備されていない学校が、学校予算にて整備する際の有効な資料がそれらから得られるのではないか。
【ベテランから若手への継承】
新学習指導要領「技術・家庭科」の目標は、「生活の営みに係る見方・考え方や技術の見方・考え方を働かせ、生活や技術に関する実践的・体験的な活動を通して、よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、生活を工夫し創造する資質・能力の育成」である。
ベテラン教員は、若いころに諸先輩方から指導していただき、身に付けてきた教科の意義や指導方法等、授業のノウハウ等を、次代を担う若手教員に伝え、成長を支えていく役割がある。
知恵を出し合い、工夫してともに学び合う体制(ネットワーク)づくりは大変重要であり、自身も協力していきたい。
(北海道技術・家庭科教育研究会 参与 札幌市立前田北中学校 主幹教諭 伊藤彰英)
※次回は「授業改善のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-24付)
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