【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】NO.30中学校外国語科編②北海道中学校英語教育研究会(中村邦彦会長)「CAN―DOリスト活用のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-31付)

第30回北中英研②児玉1
CAN―DOリストで学習の軌跡を残す(クリックすると拡大表示されます)

◆「できる感」高める活動設計を

◎授業改善が喫緊の課題

 平成23年、「国際共通語としての英語力向上のための五つの提言と具体的施策」を受け、文部科学省は、平成25年に作成した手引きの中で、各学校が学習指導要領に基づき生徒に求められる英語力を達成するための学習到達目標を「CAN―DOリスト」の形で作成し公表するよう求めている。このリストにCAN―DOディスクリプタと呼ばれる「英語で何ができるか」という行動を「言語学習者が他者の助けを借りずに自力で言葉を用いてできること」という評価尺度で設定し、これまでの指導方法や評価方法を見直し授業改善を図ることが英語科教師にとって喫緊の課題である。

 リストの作成・活用で最も大切にしたいことは、「CAN-DOリスト」で示した学習到達目標を達成するロードマップを教師が描き、生徒自身が「できる感」を高められる言語活動や評価場面を授業に多く盛り込むことである。本校ではこのリストを形骸化させず活用しながら授業展開を図るため、リストを眺めながら授業構成を考えている。

 以下は本校のCAN-DOリスト活用実践である。

ポイント1 生徒との目標の共有化

 毎年5月頃、CAN-DOリストを生徒に配付し、学期毎に目標設定や振り返りの場面で使用する。パフォーマンステストやグレードチェックテストの貼付欄を設け、ポートフォリオ形式で学習の軌跡を残す。生徒に学習目標が明確に伝わるよう教材やパフォーマンステスト、定期テストの設問でCAN―DOディスクリプタと関連づけた目標を明示し、授業では冒頭に今日の目標を示し、振り返りや学習の見通しについて触れる取組を継続している。

ポイント2 「できる感」を高める指導方法の工夫・改善

 「次の英文を日本語に直しなさい」「次の日本語に合うように英文を書きなさい」このような反復ドリルを主とする授業が果たして英語力を本当に高めることに繋がるのか、教師は考える必要がある。具体的な英語使用場面で相手と情報、思いや考えを伝え合える「英語力」の育成を図るためには、CAN-DOディスクリプタに基づき、より必然性があり生徒の想像力をかきたてる場面や表現を扱う学習課題の工夫が必要だとし、本校では学習課題設定について教師同士が日常的に討議している。以下は2年生の授業実践例である。

■CAN―DOディスクリプタ:道案内の場面で必要な表現を教科書のスキットの例を参考にしながら伝え合うことができる。■学習課題:地図を見ながら、目的地までの道順を案内しよう。■授業構成:①雪祭りに観光客を道案内する場面を想起。②札幌の観光スポットやアクティビティについて英語で対話。③道案内に必要な単語やフレーズをフラッシュカードアプリでインプット。④教科書のモデルスキットを短冊にし、ペアで並べ替えてスキット完成。⑤スキット例を参考にして会話練習。⑥外国人観光客用の札幌観光マップを配付。⑦マップを使ってロールプレイング。⑧発展課題として、おすすめの観光地やアクティビティを提案。■評価:パフォーマンステストを実施。ALTが外国人観光客役、生徒がマップを使って道案内を行う。「コミュニケーションに対する態度」と「表現」の観点で評価。「表現」では、タスクが達成されたかを適切さに応じて3段階評価。ここまでが基礎コースで、CAN-DOリストで示す「生徒全員が目指す到達目標」。さらに、発展コースでは道案内に続いて既に訪れた場所を尋ねたり、おすすめの観光スポットを提案するなど即興で会話するタスクを設定。

 本校の授業の約束は「予習はしない」である。教科書本文は初見で読み、新出単語の発音や意味は授業で学ぶためである。様々な活動を通して学び合い習得し、得た情報を共有する。家庭学習は復習中心である。例えば書く活動ではタスクに必要なインプットを行い、SNS形式で相手とメッセージを交換する。自分が書いた英文が相手に伝わった時、相手からの返事を読んでいる時の生徒の表情は「できる感」「できた感」の高まりに溢れている。

ポイント3 「できた感」の確認~リフレクションシートの活用

 リフレクションシート(表1)において自分の英語力における課題と解決の方法について内省する。学習後にどの程度できるようになったかを4段階で自己評価し、中学1年の入門期から「英語を使ってどんなことができるようになりたいか」「できるようになったか」を意識し、自律的に学習する生徒の育成を目指している。

 ワクワク感のある魅力的な学習課題のもとで言語活動を経験した学習者は、活動を通して「できる感」「できた感」を得て、自律性やその自己効力感が促進されていくだろう。新しい時代を生きる子どもたちが英語で様々な国や文化の人々とコミュニケーションを図ろうとする態度と活用できる英語力を養うため、実際に英語が使用される場面を想起しながら活動設計を練ることには夢がある。私たち教師はワクワク感をもって取り組みたい。

(札幌市中学校英語教育研究会広報部長 札幌市立あやめ野中学校 教諭 児玉麻知子)

※次回は外国語科編③「コミュニケーション能力を育てる仕掛け」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-31付)

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