【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.32中学校外国語科編④北海道中学校英語教育研究会(中村邦彦会長)「授業のイロハ 実践のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-02付)

伝えたい北中英研武富教諭
生徒たちの学習効果を高めるよう活動を工夫する

◆授業こそ実際のコミュニケーション場面だ

ポイント1 見通しをもたせ振り返りを大切にする

 授業においては、授業の始めに目標を示し、子どもたちに見通しをもたせることが大切である。目標は、『ゴール』であり、1時間の授業を通して、「○○ができるようになる」ということを示すことで、授業における各場面のねらいが明確になる。また、教師は何のための活動なのか、そのためにどのような言語材料が必要なのかなど、授業のデザインがしやすくなる。目標はCAN―DOリスト記述文をもとにして、毎時間の授業に合わせて「○○することができる」とするのが子どもたちにとっても分かりやすいだろう。

 授業における振り返りは、子どもたちの「学ぶ意欲」につながるものである。子どもたちが、「できるようになった」楽しさや嬉しさ、達成感を味わうだけではなく、「(今できないけれど)できるようになりたい」「さらに、こんなこともやってみたい」「どうしたらできるようになるだろう」「次は~をやってみよう」などの向上心をもたせることが期待される。

ポイント2 たくさん英語に触れるよう授業は英語で行う

 教師の授業における使用言語をただ単に英語に置き換えるものではない。言語活動を中心とした授業により、子どもたちの英語の使用場面を多くする「授業改善」が求められているのである。授業そのものが実際のコミュニケーションの場面となるように工夫していく必要がある。

 例えば、導入時において、教師と生徒が簡単な英語でのやりとりを行うなどの工夫をしたい。英語による言語活動の指示や説明は、板書や視聴覚機器を活用し、活動方法を示すことで、子どもたちは容易に英語を理解するようになる。言語活動を数多く行っていくことで、子ども同士のやりとりが自然と英語で行われていくようになっていく。子どもがたくさん英語に触れ、たくさん英語を使う環境をつくることが、子どものコミュニケーション能力の向上につながるはずである。

ポイント3 文法を生徒が選択するなど課題解決の指導を

 例えば、最初に文法を説明して、練習をしてから言語活動をするという授業例がある。決められた特定の文法を使って、相手が知らない情報を交換し、話したり書いたりする活動である。しかし、文脈や状況を伴わない文法説明や問題演習では、なかなかコミュニケーション能力の向上には結びつかない。それに対して、子どもたちが課題(例えば、「私が尊敬する人」というテーマでのスピーチ)を解決するために、自分のニーズに合った文法を選択することによって、実際のコミュニケーションの場面で正しく文法を使える能力を身に付けていくという方法がある。コミュニケーションのための英語力を磨くことが、文法知識を習得することにつながると考える。

ポイント4 目的・場面が明確な言語活動を工夫する

 授業の中では、スピーチやインタビューゲームなど様々な言語活動が繰り広げられている。その際、例えば、スピーチであれば、何のために、誰に向けて行うのか、インタビューであれば、何の目的で行うのかというような場面の設定やコミュニケーションの必然性が必要である。それがなければ、意味のない情報のやりとりにとどまってしまう。

 また、言語活動において大切なこととしては、お互いの考えや気持ちを伝え合う活動を組み入れることである。例えば、聞き返したり、感想を述べたり、質問したりなど、実際に活用できる意味のある情報のやりとりを行うことである。さらに、得た情報を整理して編集する「書くこと」までを一連の言語活動として行うこともできる。

ポイント5 パフォーマンステストのすすめ

 4技能をバランスよく指導し、評価することが大切である。「聞くこと」「読むこと(読解)」「書くこと」に関しては、従来から筆記テストやリスニングテストが実施されてきた。それに加えて「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」に関して、面接、スピーチ等のパフォーマンス評価が必要である。年間指導計画に位置付け、計画的に実施していくことが望まれる。

 パフォーマンス評価は、信頼できる評価規準を作成することが大切である。例えばスピーキングテストであれば、①アイコンタクト、②声量・明瞭さ、③発音・伝達、④流暢さ、⑤内容構成、⑥情報量などのカテゴリーに分割して、評価規準を設定するとよい。評価の信頼性を高めるとともに、子どもたちへのフィードバックも容易になる。

 授業をコミュニケーション重視に変え、パフォーマンステストを実施することにより、子どもたちのモチベーションも上がり、学習効果も高まる。パフォーマンステストを取り入れることで、コミュニケーションとしての英語を重視することができるようになり、子どもたちにコミュニケーション活動の大切さを伝えることができるようになると考える。

(札幌市中学校英語教育研究会 研究部長 札幌市立北野台中学校 教諭 武富 洋一)

※次回は北海道中学校理科教育研究会①「思考力・判断力を育む工夫」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-02付)

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