【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】NO.31中学校外国語科編③北海道中学校英語教育研究会(中村邦彦会長)「コミュニケーション能力を育てる仕掛け 実践のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-01付)

伝えたい北中英研
英語の授業で生徒がオールイングリッシュで活動する

◆即興的なやりとりができる生徒を育てる

ポイント1 生徒が英語を使えるようになるために

 教員になって、在籍生徒数800人の学校にも8人の学校にも勤務してきたが、地域や学校規模がどうであれ大事なことは変わらない。生徒は英語を学ぶ者ではなく、英語を使う者として指導され、評価されなければならないという点だ。そのために、四角四面の教室という空間を、英語が使われる空間に変えることが、教師の役割だ。生徒が、言語活動を行いながら英語を使えるようになるための場が教室であり、そうした空間を作り出すのが教師の役割だと思う。そのためには技能トレーニングを段階的に行い、その後、言語が実際に使用される場面設定の中で、表現力や思考力が要求される言語活動とパフォーマンス・テストを行う。この繰り返しが必要になる。

ポイント2 クラスルームイングリッシュ(CE)の指導と評価

 日頃のCEが、教師から生徒への指示やフィードバックで終わらずに、いかに生徒同士のやり取りになっていくかが、ポイントになってくる。グループやペアで解決させたいタスクを課すことで、生徒同士がコミュニケーションをとる必然性が生まれる。あとは、その活動を英語で行っているのか、母語で行っているのかを教師がおさえておくことだ。私のクラスではCEの評価規準が複数存在している。CEを使用するように指導するだけでなく、その使用状況の評価を工夫することも忘れないでいたい。例えば、次のような評価規準を示すと、子どもたちに分かりやすく好評で、使用する意欲が湧いてくる。

A「これ分かる?などと困り具合を近くの人に英語で相談できる」

B「先生が近づいてきた時だけ英語を話そうとしている」

C「話しかける人の好き嫌いがはげしい」

ポイント3 生徒の状況をよく観察しながらトレーニングを課す

 音から入る、易から難へとレベルを検討する、既習から新出へとつなげる、生徒に推測させる、自己関連性をもたせる、発問やタスクを投げかける、などの基本はおさえつつ、生徒の状況と自身の指導の評価を欠かさずに授業を行いたい。例えば、前時の授業で行った教科書本文の音読を一斉復習する際に、生徒の声量は十分で、ある程度そろったスピードで読めていなければ、生徒への指導が不十分だったと認識したい。また、全体として音読できていても、個人で読ませると読めないケースもある。アプローチは様々だが、一人一人の生徒の口と表情を見ながら練習を行うことが基本である。

ポイント4 よく聴ける生徒を育てるグループ・チャット

 教科書本文の音読活動「がや」とグループ・チャットを紹介したい。「がや」とは、バラエティ番組などで「にぎやかし」とも言われる人々のことを指すが、「がや」活動は、本文音読の際に、横からちょこちょこボケや質問を入れてくる「がや」役を新たに設け、その質問に対応させることで、本文の意味を考えながら読む習慣と即興的に答える力を養うものだ。例えば「さらに?」「なぜなら?」「あなたは?」「もしも?」「例えば?」のように内容を広げるものや、「すばらしい」「それは残念だ」「ひどい」などと感想を述べるものなどを「がや」として本文の合間に入れていくことで、笑いが起きたり、即興的に言葉をつなぎたい気持ちが高まったりする。何より音だけでなく、意味を考えて音読活動をすることにつながっていく。

 グループ・チャットは、今まで行ってきたスキット発表やライティングなどを組み合わせた活動に、即興性を求められる設定を加えたパフォーマンス・テストである。3人1組のグループでテストは行うが、場面設定や課題をはっきりさせて行うことで会話の方向性が見つけやすくなる。テストでは10個ある設定から1つを教師がテスト直前に抽出し、生徒がその設定の中で、即興的に会話を行う。例えば、次のような場面設定である。

1 忙しすぎる友人にアドバイスをしよう

2 海外から友だちが来ることになった。わが町での過ごし方をアドバイスしよう。

 1では何をする時間はないのか、なぜ忙しいのかを聞き出す、または伝える必要がある。2では海外からの友だちは何が好きで、どのくらい滞在するのかなどを聞き出して、さらに町に何があってそこで何ができるのかを伝える必要がある。いずれにしても相手の情報を引き出す力とそれを理解し、こちらの意見や気持ちを伝えるコミュニケーション力が必要とされる。英語の不得意な生徒もいることから、相手に配慮して、いかにかみ砕いて話すか、などの力も求められてくる。場合によっては単語をつないでジェスチャーを多用する必要もある。こういったパフォーマンス・テストと普段の授業での活動は当然リンクしている。

 指導と評価の一体化が何よりも求められる。即興的なやり取りができる生徒を育てるには、そのような指導はもちろん、その力を見とる評価規準を設定したパフォーマンス・テストの実施が不可欠となる。ゴールを見定めた指導を心がけたい。

(札幌市中学校英語教育研究会 研究部長 札幌市立栄南中学校 教諭 楠本正義)

※次回は外国語科編④「授業のイロハ 実践のポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-01付)

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