【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.28中学校技術・家庭科編家庭分野②北海道技術・家庭科教育研究会(岩本正美会長)「調理実習のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-29付)
工夫された調理実習の物品収納
◆生徒の信頼をもとに見通しある授業を
【家庭科教師としての心構え】
生徒から「すごい!」「さすが!」と思われる授業の武器をつくることが大切。例えば、針にパッと糸を通す、正確なミシンがけの技能、包丁さばきなど、さすが先生と言わせる技術は一つでも多く身につけておきたい。これは、日常生活の中でも言えることで、あの先生に聞けばすぐ解決する、何とかしてくれると思ってもらえることで信頼関係も深まる。常に自分の知識を広げ、技術を高める努力を惜しまないよう心がけている。
【授業づくりのポイント】
ポイント1 楽しい授業
・教師自身が「自分の教科が好き」「授業が楽しい」と思える授業が大切。
・教材研究は、手を抜かずに納得がいくまでする。
・作業や活動の指示は長々と話さず、的確で短くわかりやすい言葉で時間をかけずに行う。その際、実物を見せたり、図で示したりなど、視覚に訴える工夫があるとよい。
・授業ごとに学習内容や課題(作業内容)などを、始めに確実に伝える。その際「何をするのか、どこまでできるとよいのか」などの見通しをもたせることが大切。
・生徒の雰囲気は学級や学年、その年によって異なるので、同じ手法の授業をずっと使い続けるのではなく、その都度見直していく気持ちが大切。生徒の状況にあわせて、学習プリントの工夫や指導法を変えていく勇気を持つ。
ポイント2 発問の工夫
・発問の際は、一度全体を見回すなどの時間をおき、生徒から答えを引き出す「間」をつくる。待つことも大切。
・生活経験の少なさから、「考えてごらん」「イメージしてごらん」と言っても難しいような場合は、発問せずに「こうなんだよ」と知識や技能として教える。
ポイント3 「家庭科」の基礎・基本の定着
・よく出てくる言葉などは色画用紙などでパネルを作っておき、随時使うようにする。作成する際は、色でイメージ化させるなど、定着しやすくなるような工夫をする。
・繰り返し授業で取り上げたり、クイズ形式で楽しみながら覚えさせたりする。
・ミニテストや穴うめプリントを使用するのも効果的である。
ポイント4 板書の工夫
・2時間続きの場合でも、授業の終わりに黒板を見た時、その日の授業内容がわかるような構成にする。途中で消すことの無いよう心がける。
・板書には「要点」を書くようにし、「文章」などは書かない。補足説明などは、事前に各自ノートに記入するように指示を出しておく。
【調理実習の心得】~私が実践している内容~
◎調理実習関係の物品収納
(1)調理器具
・まな板:窓側の「まな板立て」に置いて乾燥させた後、毎回使う前にアルコール消毒を行う。
・包丁:かごに入れて準備室の棚で保管し、使用するときに教師用調理台に移動する。実習中は使い終わった班からすぐに教師台のかごに戻させ、調理台の上に置きっ放しにさせない。
・食器:食器棚にすべて収納し、調理実習の度に、使う物を班ごとにまとめておく。
・なべ・フライパン:生徒用調理台のガス台の下に収納。
*実習期間(約1ヶ月)中は生徒用ガス台の上に置き、毎時間きれいに洗ってあるか教師が確認し、教師が確認後にガス台の下へ収納する。
・ボール・ざる:教師用調理台の下に収納。その都度必要な物を班に渡す。
・おたま・さいばし・フライ返し:食器棚の引き出しに収納。
・計量スプーン・計量カップ・はかり:準備室の棚に収納。
(2)調理台
・教師用調理台:引き出しには、ビニール袋やラップ、キッチンばさみなどを入れておく。
・生徒用調理台
①流し (シンク)とガス台のふたは、乾燥させるためと教師が汚れを確認しやすくするため、閉じさせない。
②引き出しと下には何も入れておかず、実習中の教科書や筆記用具・プリントなどを入れ、下には標準服の上着など大きな荷物を入れている。
③生徒用調理台の引き出しにお玉や計量スプーンなど入れておくと、汚れが残っていた場合など、衛生的でなくなるため。
・生徒用調理台には作業スペースを確保するため、普通教室用の生徒机の予備を1個ずつ流し (シンク)の横に常備し、水切りかごなどの物が置けるようにしている。
◎調理実習の準備
・実習用食材:ビニール袋とボールに入れ、班ごとにわけておく。
・実習で使う用具類:班ごとにバットにまとめて教師用調理台に用意しておく。
・実習の内容により、生徒に計量させたい調味料は実習中に計量させるが、それ以外は教師が事前に計って準備しておく。
◎調理実習の後片付け
・食器は食器棚に、まな板はまな板立てに、それ以外の物は教師用調理台に戻させる。
・生ゴミは、食材を配布した際のビニール袋に入れさせ、排水溝のゴミをとったあと、空気を抜いて口を堅くしばり、教師用調理台に持ってこさせている。その後、全班分まとめて大きな袋に入れて捨てる。
*ただし、魚の調理実習ででた生ゴミは、悪臭が発生するため、いったん準備室の冷蔵庫で冷凍してから捨てている。
・生ゴミ以外のゴミは、教師用調理台の横に用意したゴミ箱に捨てさせている。
・教師用調理台に戻ってきた用具類とまな板は、水気を拭き取り、汚れているものは教師が再度洗う。
(北海道技術・家庭科教育研究会 札幌市立稲陵中学校 教諭 安藤直美)
※次回は北海道中学校英語教育研究会「思考力・判断力・表現力 育成のポイント」を掲載します。
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作業スペース確保のため、生徒机の予備を1個ずつシンク横に常備する
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-29付)
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