【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.50小学校家庭科編④北海道小学校家庭科教育連盟(新岡惠会長)「新しい家庭科 内容C 指導上のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-01付)
一人の消費者として、既習を生かし、議論する子どもたち
◆かしこい消費者か振り返り、極意の獲得を
ポイント1 題材を貫く課題意識から見方・考え方へ
本稿では、C「消費生活・環境」について、改訂のポイントをなぞり、その授業実践について紹介する。
C「消費生活・環境」は5年「じょうずに使おうお金と物」(4時間)の題材がスタートである。まず、収入・支出等生活の中でのお金について学習した後、身近な文具である「ノート」等、文具の購入を現金で支払うことを想定し、「かしこい消費者とは?」という見方・考え方について問い続けられるよう、課題解決型の学習を行う。
ポイント2 5年生は目的に応じた品物選びの疑似体験を
今年度、本連盟でのグループ公開研では、「おうちで学習するためのノートを選ぶならどれを選ぶか」という児童全員が共通した土俵に立てる場面を設定し、4種類のノートを提示した。「A 無線とじノート 120円」、「B ツインリングノート 140円」、「C 再生紙ノート 120円」、「D 徳用パックノート(5冊組)200円」である。
グループ分のノートを用意し、体験的な活動の場を設けた。児童は実物を手に取り、形状や紙の性質を確かめたり、表示を読んだりする実践的で体験的な活動を通して、これまでは何気なく購入していたノートについて、自分なりに選択する観点を見出したりした。購入の経験も乏しく、一人で購入する際には視点を広げることは難しいが、ノートを選ぶ観点を友達と交流することで、新たな視点を得る。そして、購入の目的に立ち返りながら、「かしこい消費者とは?」を問う学習を展開させるのである。
この学習の中で、児童から生まれてきた「観点」は、「品質・機能・エコ・価格・一冊当たりの単価・予算・情報(後述~買い物の極意)」等である。
児童からは「実際に購入する際に生かしていきたい」と実感を伴った学習となった。これまでにも、色鉛筆、のり、ステープラーなどの品物選びが実践されてきている。
ポイント3 6年生はより実践的学習を
新学習指導要領では、内容Cもより実践的に学習することを求めている。児童は実際に消費者として学習するのであるから、学習の成立のためには、共通な体験をもとに、課題解決学習を進めることである。小学校家庭科の中で学習として購入が体験できる題材を考える。6年生題材「くふうしよう おいしい食事」での調理実習に使用する食材の買い出し、同じく6年生「布を使用して製作物を作る時のふさわしい布選び」等が考えられる。また、修学旅行も児童が消費者となる場面であるので活用したい。5年生で獲得した観点を「買い物の極意」として、巻物にしておく。修学旅行の際には、お小遣いの使い方の指導の中で「買い物の極意」を活用することも考えられる。
ポイント4 5年生の既習「買い物の極意」を6年生に生かす
◎6年生 金融教育の実践~購入体験から振り返りを大切に
金融教育公開研として、また、札幌市内の校内研として公開した6年生題材「くふうしよう おいしい食事」での実践を紹介する。
調理計画終了後、グループ毎に購入する食材は決定している。購入場所は、校区の2店舗とした。そして、児童は5年生で獲得した「買い物の極意」の情報を活用して、チラシやインターネットから購入する食材を探し、予算立てを行う。実際に調べてみると、一袋に入っているじゃがいもの量が分からなかったり、広告の品は買い物当日には、価格が変わったりすることに気付く。また、必要な量を購入するには、他のグループと共同購入や、情報からは得られない鮮度も大切にしたいという「買い物の極意」を増やすことになる。買い物当日は、エコバックをもち、「かしこい消費者」を目指して、グループ毎に相談する姿が見られた。
大切なことは、購入後の「かしこい消費者」であったか、振り返らせることである。実際に、食材購入や修学旅行での買い物経験をもとに、買い物したからこそ獲得した「買い物の極意」を学習の成果として挙げ、2年間の消費生活のまとめとした。
このように、B「衣食住の生活」との関連を図り、消費生活や環境に配慮した生活の仕方に関し、実践的・体験的な学習活動の場を設定していくことによって、児童は「かしこい消費者」を問い続け、一人の消費者として、自分の消費生活に目を向け、よりよい消費生活を実践できる態度と能力を身に付けていくことができると考えている。
(北海道小学校家庭科教育連盟 研究部Dグループ長 札幌市立信濃小学校 教諭 阿部聡子)
※次回は、札幌小学校英語活動研究会①を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-01付)
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