【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.49小学校家庭科編③北海道小学校家庭科教育連盟(新岡惠会長)「新しい家庭科 内容B 指導上のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-28付)

伝えたい49回小学校家庭科3
実習を通して、課題意識をもちながら、深く考え、工夫する子どもたち

◆調理実習も課題解決的な展開を

ポイント1 内容B「衣食住と生活」は、体験的・実践的活動が展開しやすい

 B「衣食住と生活」では、生活の自立の基礎として必要な衣食住に関する知識及び技能を確実に身に付けるようにしている。また、食生活、衣生活、住生活を総合的にとらえ、生活の営みに係る見方・考え方を働かせ、健康・快適・安全で豊かな生活を営む視点から、衣食住に係る課題を解決する力を養い、日常生活において実践できるように意図したものになっている。多くの場合、調理実習や布を使った製作など、子どもにとって楽しい活動が展開されることが多い。それだけに、調理や製作活動にのみ力点が置かれ、「調理をしておいしく食べて楽しかった」という感想で終わることが考えられる。

ポイント2 題材を貫く課題意識の醸成と仕掛け

 今年度行われた5年生「食べて元気に」の授業実践から考える。今回の授業実践では、「おいしく食べるために調理計画を考え、調理の仕方を工夫する力」をねらいに題材を構成し、子どもの思い・願いから「家族が喜ぶおいしい食事を作ろう」ということを、題材を通しての学習の目標とした。特に「みそ汁の調理」に焦点を当て、家族が喜ぶみそ汁を調理できるように授業を展開した。

 授業を始めるにあたり子どもたちにアンケートを取ると、約70%の子がみそ汁の調理を経験している。しかし、だしについて知っている子は数名。また、みそを入れるタイミングについて知っている子も数名であった。みそ汁の調理で身に付けさせる技能として、「だしの取り方」「実の切り方」「みその扱い方」の3つのポイントがある。今回はアンケートをもとに、「みその扱い方」を題材の中心とした。

 おいしいみそ汁作りに向けて、まずは、日常の給食を題材として取り入れた。栄養教諭に協力していただき、日本の伝統食である「米飯とみそ汁」から和食のよさについて、子どもたちに話してもらった。子どもたちは和食のよさとして、「だし」「見た目」「香り」「味」があることを知り、これらの和食のよさが今後の学習の観点となるように仕掛けた。

ポイント3 みそを入れるタイミングを課題に調理実習

 調理実習時には、「みそはいつ入れたらいいのか」ということを課題とした。授業で調理するのは、じゃがいものみそ汁。各グループ、A「水が沸騰したらみそを入れ、じゃがいもと共にみそを煮立たせる」、B「じゃがいもが煮えたらみそを入れ、火を止める」の2つのみそ汁を比較する調理実験を行った。使用する材料や火加減などは同じ条件として、「みそを入れるタイミング」だけを変え、栄養教諭が話してくれた「見た目」「香り」「味」の3つの観点をもたせて、実験を行った。

 完成したAB2つのみそ汁をお椀に盛り付け、比較する子どもたち。「見た目は変わらない」とつぶやき、「香り」を比較すると、「違う」「Bの方がみその香りが強いよ」と友達と話し合っている。子どもたちは比較実験後の交流を通して、B「じゃがいもが煮えた後にみそを入れ、みそを煮立たせない」方がみその風味が残ることに気付くことができた。

 最後にそれぞれを試食すると、「Bは家のみそ汁の味がする」など、自分の生活経験から話している子が多かった。

ポイント3 「何気なく」を揺さぶり、課題意識を生むことから科学的視点を

 毎日何気なく食べていた食事も観点を決めて目を向けてみると、気付いていなかったことが多くあることに気付く。そこから子ども自身に①「生活の課題発見」が浮かび上がる。その課題に着目し、②「解決方法の検討・計画」を立てる。そして、③「課題解決に向けた実践活動」を行い、④「実践活動の評価・改善と整理」していく。

 「何気なく」「当たり前に」行っていた日常生活を、観点を決めて振り返らせることで、疑問をもち、課題意識を生むことができるのである。

 調理実習は、おいしいことも大切だが、おいしさの秘密を科学的に追究することが、理解を深いものにし、生活を見る目を確かにし、よりよい生活を創り出す力になる。

 学習指導要領の改訂にあたり、家庭科ではこれまで以上に実感を伴った実践的な学習を通して、課題意識を醸成し、子どもが自ら学習課題に関わり、深く考え、工夫する学びの姿勢が期待されている。

(北海道小学校家庭科教育連盟 研究部Bグループ長 札幌市立栄北小学校 教諭 船木正美)

※次回は、北海道小学校家庭科教育連盟④を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-28付)

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