【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.51小学校外国語活動編①札幌小学校英語活動研究会(綱渕友也会長)「Let’s try! 1 3年生 指導のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-02付)
関わり合う中で、新たな課題や友達のよさに気付かせていく
◆目的意識と気付き・振り返りを大切に
【中学校英語の前倒しでない、小学校らしい教育】
平成29年3月告示の新学習指導要領には、これまでの外国語活動の成果と課題を踏まえ、「コミュニケーションを図る素地となる資質・能力の育成」を目指すと示されており、この目標を「聞くこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」の三領域の言語活動を通して達成していくことを目指している。
しかし、忘れてはならないのが、3・4年生の外国語活動で目指すのは、決して中学校英語の前倒しではなく、「小学校の文化に根差した、小学校にしかできない外国語教育」という点である。3年生という発達段階を考慮し、新教材となる「Let’s try!」の内容を踏まえながら、次のようなポイントを大切にして授業実践に臨んでいきたい。
ポイント1 「知りたい」「やってみたい」を大切にした単元構成
新教材「Let’s try!」では、単元を通して"Let’s Listen / Watch and Think / Play / Chant / Sing,Activity"などの様々な活動が設定されている。単元の前半では、たくさんの聞く・話す活動や実際にゲームをする活動を通して、たくさんの言語材料の意味に気付いたり、推測したり、慣れ親しんだりしていけるようになっている。そして単元の後半には、慣れ親しんだ表現を使って体験的に友達と楽しく関わり、コミュニケーション活動を豊かにしていけるような学習内容となっている。これらの単元構成に共通しているのが「明確な目的意識をもたせること」である。
Unit1"Hello!"では、世界各国の挨拶を聞き、挨拶や名前の言い方に慣れ親しむと共に、友達とも上手に名前を言って挨拶し合えることを目標としている。またUnit2"How are you?"では、感情や状態を尋ねたり答えたりする表現に慣れ親しむと共に、表情やジェスチャーを付けて相手に伝わるように工夫しながら挨拶をし合うことを目標としている。いずれも、HelloやGoodなどの表現をただ単に教えるのではなく、「こういう時は何と言うのかな」「これを伝えるにはどうすればいいのかな」と相手を意識して考え、実際に取り組ませながら気付かせたり、活動を振り返ったりする中でじっくり学んでいけるよう、学習展開を考えていきたい。
ポイント2 子どもたちの発達段階に応じた教材の提示や活動の工夫
3年生は、発達段階を考慮して学習の中で触れる表現を徐々に増やしたり、歌やゲームの内容を工夫したりと、子どもたちに負担や無理がないようにしていく必要がある。
Unit3"How many?"では、1から20までの数に慣れ親しむために、数え方そのものを覚えるのではなく、じゃんけんで勝った回数を数えたり、身の回りの物の数を調べたり、指導者が示した数を手で打ったりするなど、段階的に体験しながら子どもたちが考え、音声と具体的な事物を結び付けていけるようにしている。またUnit4"I like blue."では、スポーツを取り扱う際に、普段から外来語として聞き慣れているものを踏まえながら、外来語と英語との音声の違いについて気付かせることができるようになっている。外国語活動が、子どもたちの学習にとって身近なものとしてとらえさせていくことを大切にしていきたい。
ポイント3 他教科と関連させながらの幅広い学習の展開
Unit6"ALPHABET"は、アルファベットの大文字とその読み方に慣れ親しむ単元である。平仮名や漢字とは異なる新しい文字の世界に触れていくため、子どもたちが興味・関心を高めながら活動できるよう、他教科と関連させながら学習を進めていくことが大切である。例えば、国語科のローマ字の学習と合わせて日本語と英語の表現の違いに気付かせたり、社会科の地域探検で校区にあるアルファベットで表記された標識や看板などに着目させたりするなどの工夫が考えられる。他にもUnit9"Who are you?"では、日本の昔話などの読書教材と結び付けながら、英語の絵本について感想を言い合ったり、実際に劇として演じてみたりするなどの取組もできる。英語が身の回りの生活の中で多く使われ、身近な存在であると気付くことで、楽しく文字に親しみ、興味を高めていく。
ポイント4 お互いの育ちが見える授業の実践
Unit8"What’s this?"は、これまでに学んできた英語表現を自分で選び、クイズを出題し合いながら友達とコミュニケーションを図る単元である。実際に友達と関わり合う中では、「正解を教えてほしい時は何て言えばいいのかな」「どんな反応をすればいいんだろう」などの疑問や課題が見えてくる。これらを指導者が全体で取り上げ、どうやったら解決できるかを話し合う。このことにより、「Answer please.と言えばいいんだよ」「Close!(おしい)って言うのもいいね」などの工夫を生み、よりよいコミュニケーション活動につなげていくのである。学習の最後には、感想をカードに書いたり発表し合ったりする振り返りの時間を設定し、「○○することができました」「□□くんのジェスチャーが分かりやすかったです」と、自分自身の変容や成長、友達の良さを実感できるようにしていきたい。
(札幌小学校英語活動研究会事務局 札幌市立大倉山小学校 教諭 大垣康行)
※次回は、小学校外国語活動編②を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-02付)
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