【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.52小学校外国語活動編②札幌小学校英語活動研究会(綱渕友也会長)「Let’s try! 2 4年生 指導のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-05付)

伝えたい52小学外国語活動2
実物投影機で絵を拡大して見せながらの読み聞かせは有効な手段

◆中学年の経験を高学年外国語科へ接続

ポイント1 4年生の外国語活動の特徴をつかむ

 4年生になって初めて学習するLet’s Try!2の「Unit1 Hello, world!」は、世界の様々な言語に出会い、多角的なものの見方ができるような児童になってほしいという願いが込められている。また、4年生の単元の目標すべてに、「相手に配慮しながら」という文言がある。つまり外国語の学習に慣れてきた4年生においては、相手(友達や先生)とのコミュニケーションの際に主体的にコミュニケーションを図ろうとすることとともに、相手意識をより強くもって人と関わることを大切にしているのである。

 例えば、Unit4 What time is it?のActivityでは、気に入っている時刻とその理由を伝える活動が設定されている。ここでは、A:I like 3 p.m. B:Why? A:It’s "Snack Time." I like sweets.というようなやり取りが行われる。その際には、ただ話すだけではなく、相手が聞きたいことは何なのかを考え、相手が理解しやすいように伝えることが大切になってくる。ジェスチャーを交えながら話したり、「I like 3 p.m.」「It’s "Snack Time." I like sweets.」と大事なことを強く言ったりすることが大切なのである。

 学んできた英語表現を使って、相手意識をもって伝え合うコミュニケーション活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を育てることが大切にされている。

ポイント2 聞くこと(絵本の活用)で喜びや達成感を

 本教材の、3・4年生の最後の単元では、絵本が扱われている。3年生では「短い話を聞いて、おおよその内容をつかむ」学習、4年生は「短いまとまりのある話を聞いて、おおよその内容をつかむ」学習となっている。絵本を読み聞かせる際には、3年生では、同じような英語表現が繰り返し出てくるため、子どもたちは興味をもって話の内容を推測しながら物語を読み進めることができる。では、繰り返しが少ない4年生のまとまりのある内容の絵本をどのように、子どもたちの興味を引き付け、読み聞かせることができるかを考えていきたい。

 興味をもつためには話の内容が分かることが前提である。絵本には絵があるため、視覚で理解を促すことができるが、初めて出会う単語やフレーズなどが分からず、興味を削がれてしまうこともある。そこをいかに分かりやすく伝え、興味を持続させるかが大切である。

 そのために次の4つの手立てが有効だと考える。①「難しい単語は初めに意味を伝える」~読み聞かせの前に「この単語の意味は○○だよ」と伝えることで、その言葉が出てきた時も子どもたちは「さっきの言葉だ!」と思い出し、安心して聞き進めることができる。②「表情とジェスチャー、間で感情や動作を表す」~教師が表情豊かにジェスチャーを交えて話すことで、場面や登場人物の様子を思い浮かべさせることにつながる。これは、コミュニケーション場面において、自分の伝えたいことを伝えるために有効な手段であることについても子どもたちに気付かせたい。③「話の内容にあった質問をしながら、興味を引き付ける」~例えばWhat time do you wake up? などと数名の子に問い、やり取りしながら読み進める。子どもたちは友達のことについて自分と比べながら聞くことになり、絵本の世界に引き込まれていく。④「次に何が起こるかを問い、推測させて読み進める」~「このあと、どうなると思うか」と聞くことで、子どもたちは想像を膨らませ、話の展開に興味をもつことにつながる。英語で発問することもできるが、話の内容が難しい場合であれば、日本語で発問する方が効果的である。

 これらの手立ては、ストーリー性のある絵本の読み聞かせの際にも有効な手段であり、絵本を使って分かった喜びや達成感を積み重ねることができる。また、教師が分かりやすく伝える伝え方を見せることも、子どもたちのコミュニケーションの手本ともなる。

ポイント3 話すこと(既習表現を繰り返し使わせる)で自信や楽しさへ

 授業のはじめに帯活動として、既習の表現を繰り返し使う場面を設定する。そうすることで、子どもたちは、学んだ英語表現に十分に慣れ親しむことができる。「Do you like~?」「What ~ do you like?」を学ぶと子どもたちの会話が広がる。3年生でこれらのフレーズを学び、4年生でさらに多くの単語を学ぶため、子どもたちは同じ表現を繰り返し使い、英語を使いこなすことができるようになる。これができるという自信、コミュニケーションを図る楽しさへとつながっていく。また、高学年のSmall Talkへとつながっていく。

ポイント4 高まってほしい願いを自信と希望の姿に

 4年生の外国語活動では、英語を使って自分の思いを伝え合うことが楽しいと思える子どもに育ってほしいと考える。これは、単に英語を「聞くことができる」「話すことができる」という知識・技能の向上だけで生まれる姿ではない。目の前にいる相手の反応を確かめたり感じたりしながら、自分の考えや気持ちを分かりやすく伝える経験を十分に積ませた際に生まれる姿であると思う。これが外国語活動で大切にされる「外国語を使って何ができるようになるか」の一つの姿であると考えている。中学年で「聞くこと」「話すこと」の経験をしっかりと積み上げることで、高学年の外国語の教科への自信と希望をもった姿へとつなげていきたい。

(札幌小学校英語活動研究会 研究部 札幌市立幌西小学校 教諭 大原拓幸)

※次回は、小学校 外国語科編①を

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-05付)

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