【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.54小学校外国語科編②札幌小学校英語活動研究会(綱渕友也会長)「We can! 2 6年生 指導のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-07付)
◆小学校段階は「聞く」「話す」を中心に
◎ 高学年外国語科の特徴
「聞くこと」「話すこと」に加え、「読むこと」「書くこと」の技能を扱うことが高学年外国語科の特徴の一つである。小学校では初めて英語の「読むこと」「書くこと」を指導することになる。その留意点と6年生用教材「We can! 2」での「読むこと」「書くこと」の扱いについてまとめる。
ポイント1 「読むこと」「書くこと」で「慣れ親しみ」を目指す
外国語科では教材「We can!」の名称にも表れているように、児童が英語を使って他者とコミュニケーションを図ることが「できる!」ようになることが求められる。習った英語をいつでも目的・場面・状況に応じて使えるよう定着を目指す。現行学習指導要領の外国語活動では定着は求めていないので大きな変化である。
しかし、気を付けなければいけないことがある。定着を目指すのはあくまで「聞くこと」「話すこと」に関する技能であり、「読むこと」「書くこと」に関しては興味関心を育てる、すなわち、慣れ親しむ段階でよいことになっている。ただしアルファベットに関しては定着を目指すことになっている。
ポイント2 「読むこと」「書くこと」は「聞くこと」「話すこと」を基にした一連の学習
ではどのようなことを読んだり書いたりするのか。新学習指導要領では、目標は次のようになっている。
「読むこと」
ア 活字体で書かれた文字を識別し、その読み方を発音することができるようにする。
イ 音声で十分慣れ親しんだ簡単な語句や基本的表現の意味が分かるようにする。
「書くこと」
ア 大文字、小文字を活字体で書くことができるようにする。また、語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。
イ 自分のことや身近で簡単な事柄について、例文を参考に、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。
「音声で十分慣れ親しんだ」に注目すると、すなわち読んだり書いたりする語句や表現は、「聞くこと」「話すこと」の活動で十分に慣れ親しんだものとなる。言語習得の過程では、「読むこと」「書くこと」の技能は「聞くこと」「話すこと」の後に習得される。児童が感じる難易度もおのずと「読むこと」「書くこと」の方が高くなると考えられる。
しかし、音声で十分に慣れ親しんだ語句や表現であれば、児童は興味・関心をもちやすく、さらに安心感の中で活動に取り組めると思われる。「読むこと」「書くこと」の学習は「聞くこと」「話すこと」をもとにした一連の学習であることを意識しておきたい。
We can! 2 の各単元では、単元の前半から、さらに後半においても「聞くこと」「話すこと」に関する練習や言語活動が設定され、後半に「読むこと」や「書くこと」が設定されている。あくまで「聞くこと」「話すこと」が中心となっている。
ポイント3 段階を踏んだ指導~「聞くこと」「話すこと」を十分に
We can! 2には、効果的な練習や言語活動ができるようLet’s Listen / Watch and Think / Play / Talk / Read and Write / Read and Watch / Chant / Activity / Sounds & Letters / Story Time などが用意されている。「読むこと」「書くこと」に直接関わるLet’s Read and Write では、児童は次のような英語表現を読んだり書いたりする。I went to the sea. I enjoyed swimming. I ate fresh fish. It was fan. これはUnit 5 My Summer Vacationのものであるが、どの単元においてもだいたい5・6文のまとまりあるものを読んだり書いたりする。
しかし、これを一気に読んだり書いたりすることは、児童にとっては負担感・不安感が強いものになると思われる。それを解消する手立てとしては、先述の「聞くこと」「話すこと」の活動を十分に行うことが挙げられる。
また、このLet’s Read and Writeの活動はほぼ毎時間少しずつ行うこととなっている。毎時間一文を読み、そして、手本をもとにワークシートに書き写す。慣れてきて自分の思いをより反映したくなったら、the seaの部分をthe mountainに変えてもよいことにするなどして、単元を通してまとまりのある一つの文を読んだり書いたりしていく。このような細かな段階を踏んでいくことが「読むこと」「書くこと」の指導では大切になってくる。
ポイント4 目的意識から主体性を
We can!には、これまでのHi, friends!以上に英語の文字や英語表現がふんだんに書かれている。児童は書かれた英語を目にする機会が増え、「読むこと」「書くこと」により興味・関心をもち、あこがれの思いももつのではないだろうか。その思いを大切にしてあげたい。そのためには、「読むこと」「書くこと」に対しても、児童が目的意識をもてることが大切である。先のUnit 5 My Summer Vacationであれば、「夏休みの思い出日記」を書くことが想定されている。そこからさらに児童が日記を書きたいと思う仕掛けを考えられれば、より目的意識は高まり、主体性をもった取組になると思われる。
書いたものは残すことができる。We can! 2の最後のページには、「あたなは、英語を使って、どのようなことができるようになりましたか」との問いがあり、自分のことを記述できるコーナーが用意されている。自分がこれまでの学習で読んだり書いたりしたワークシートをめくりながら、このコーナーをいっぱいにする姿が最後に見られればと願う。
(札幌小学校英語活動研究会研究部 札幌市立あいの里東小学校 教諭 額田さやか)
※次回は、北海道音楽教育連盟①を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-07付)
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